家庭医ということ。総合診療医ということ。
初めまして。総合診療医(家庭医)のDIOと申します。この度、家庭医・総合診療医ってそもそも何なのか?そして、家庭医とはどういう仕事をしているのか?家庭医になったきっかけって何?というところをお話していきたいと思います。Twitterのfollowもよろしくお願いします!(@generection1)
総合診療医・家庭医って何?
医師の中で比較的臨床の最前線に立っているにも関わらず、あまり専門家として認識されていない科のひとつで、もっと広く医療従事者にそして患者さんに認識していただきたいなと思い、Twitterアカウントを開設しました。(https://twitter.com/generection1 )
家庭医は、生まれたばかりのお子さんからお年寄りまで、まさに『揺り籠から墓場まで』、様々な健康問題を、総合的かつ継続的に診療します。
離島医療・僻地医療と相性がいいことが多いですが、必ずしも離島や僻地だけの存在ではありません。
「ちょっと出来物が出来た。」「子供が朝学校に行かなくなった。」「子供のミルクの量ってこれでいいの?」「妊娠中に薬をもらえなかったから欲しい。」「ちょっとおばあちゃんが怒りっぽくなった。」「主人がタバコを止めてくれない」…etc。
どこの病院に行ったらいいの?そもそも病院に行っていいの??と悩まれることはよくあることと思います。
そんなとき、そばに寄り添える存在。
それが総合診療医(家庭医)です。
身体や心の状態だけではなく、家族のこと、地域のこと、社会のこと。すべてひっくるめて、「ひと」として総合的に判断して時には診断を、時には治療を。そして時には居場所作りをお手伝いします。
みんなが様々なライフステージがある中で、それに寄り添ってパートナーとしてその時々で様々な悩み相談に乗れる存在です。
そもそも日本では専門志向がもてはやされ、(specialist:「ある」病気の専門家)がとても多くなりました。それはそれで医療の発展や、未知の病気の診断・治療・そしてどんな病気もハイレベルに診てもらえるというとても喜ばしい状況ではありますが、一方で、「自分の科の病気以外は良く分からない」という状況になってしまっているのが現状です(尤も、これは医学分野が膨大過ぎる側面もあるので一概に専門志向だけが原因とも言えないですが)。
開業医や診療所の先生も、そのほとんどは病院で何らかの専門を持ってお仕事されてきた先生ですので、自分の専門領域以外の分野はあまり経験がないけれども何とか熟している、ということも多いと思います。
そういった現状を何とかしたい!という思いで、
「気軽に相談できない。」「どこの科に行ったらいいか分からない」ということが起こらないために、総合診療医(家庭医)になりました。
そして、総合診療医(家庭医)という人がいることを広く医療従事者・患者さんに知って欲しいと思っていますし、医学生・研修医の先生には是非、総合診療医(家庭医)という道があること、そのやりがいもまた無限大であることを知って欲しいなと思っています。
家庭医療は行動科学
さて、突然ですが、家庭医療の本質とは行動科学だと思っています。もちろん、内科も小児科も精神科も外科も整形外科も皮膚科も診る、というのも家庭医(総合診療医)の役割だと思いますが、それは結果に付随して起こる事象であって、本質ではありません。行動科学、はじめて聞くひとも、聞いたことあるけど良く分からない!という人もいらっしゃると思います。ですので、行動科学とは何なのかについて少し説明したいと思います。
ちなみに、米国では医師国家試験(USMLE)の重要な分野のひとつ、とされており、Behavioral science(行動科学)は、宗教とかそういうものではなく、れっきとした科学です。USMLEの教科書にも一番初めに書いてある通り、とても大切な分野と言えるでしょう。しかし、何故か日本の医師国家試験にはこの分野はなく、医師になるまでに行動科学を本格的に勉強する機会はほとんどありません。
この行動科学、Weblio辞書で調べてみると、
行動科学
【英】:Behavioral science
第二次世界大戦後のシカゴ大学の科学者が、自然科学と社会科学を統合した見方から行動を捉えようとした際に用いられた名称。人間の個人的・集団的行動の一般法則を客観的な観察や調査によって実証しようとする学問であり、心理学、社会学、人類学を中核として、精神医学、コミュニケーション論、情報理論などの領域を含みながら、学際的に発展してきた。
国際保健医療の分野に関連が深いのは「応用行動科学(applied behavioral science)」であろう。人間の対人行動に関する諸理論(対人関係、対人的コミュニケーション、対人的影響過程、集団内行動、リーダーシップ、グループ・ダイナミックス、組織行動など)を応用して、現場で起こっている人間関係的側面の諸問題に働きかけていくものである。アプローチとしてはアクションリサーチのサイクルが用いられる。アクションリサーチの父とされるK.Lewinは、人間関係の改善のための手法としてワークショップ形式で行われるトレーニング(training)を重視した。K.Lewinのこの発想は、彼の弟子たちによって設立された米国NTL Institute for Applied Behavioral Scienceにて、人間関係トレーニング(Human Relations Training、正式名称:ラボラトリー方式の体験学習)として、また、民主的でヒューマニスティックな組織づくりをめざした組織開発(Organization Development)として発展した。(中村和彦)
参考URL:NTL Instituteホームページ http://www.ntl.org/
という記載が参照できます。
つまり、『心理学、社会学、人類学などから、「人間の対人行動に関する諸理論(対人関係、コミュニケーション、リーダーシップなど)を上手く取り、人間関係をより良くする、というのを理論立てて行おうとする学問』とここでは捉えることにします。
「そんなの知らなくても何とかなる。」「別に勉強しなくても困ることはない」
そういう声が聞こえて来そうですね。
しかし、実際、日本では、患者さんも、「あの先生は怖いからちょっと相談しにくいな…」とか、「タバコやめろ!と言われたけど絶対にやめない!なんだあの言い方は!(怒)」とか、逆に医療者も、「あの患者さんは言うことを聞いてくれなくて困る」とか「何時間も話ししてもどうしても分かってくれない」とかいろいろな問題があると思います。医療者同士でも、「あの先生は怖いから相談しにくい」とか、「あの後輩はいつも言うことを聞いてくれない」とか、様々な問題があると思います。これは、ただ単に優しいだけでも、「あの先生は何も言わないからタバコ止めなくてもいいや。」とか、「どうせ失敗しても怒られないから(何も言われないから)いいや。」みたいな問題が起こることがあるので、必ずしも”優しい”ということが問題解決になるとも限りません。
もちろん、医療業界に限らずこういった問題はあると思いますが、命に直結することもある医療業界だからこそ、こういった問題を避けて円滑に物事を進めるということはより重要な問題となるのではないでしょうか。
こういう時、行動科学を勉強していると、「あぁ、そういう理由でタバコを止めた方が良いのですね!」とか、「あの先生にちょっと相談してみよう!」とか、物事を円滑に、より良い方向に導くことが出来る可能性が高くなります。
行動科学の重要性を分かって頂けましたでしょうか?
個別の行動科学の事象については別記事で解説しておりますので、ご参照いただければ幸いですm(__)m
家庭医を目指したきっかけ
「街のお医者さん」。それが医学生になるまでの私の、一般的な医師像でした。風邪をひいても、体が痛くなっても、いつも同じ診療所で同じ先生に診てもらう。子供の時からそのように過ごしてきた自分にとってはそういう医師を志すのが自明でした。
そして、医学生となり医学を学べば学ぶほど、色々な主訴に対応して診察できる科は、多くの人の役に立てる科は、という視点から何科の医師になりたいのかを考えるようになり、初めは、高齢化社会の今の世の中でより役に立てそうな整形外科医が一番地域の役に立てるか思い、整形外科医を志して病院実習に臨みました。
しかし、実際にポリクリで整形外科を実習した際、楽しみにしていた科の手術をあまり楽しめていない自分に気づいて、「あれ?僕は手術がしたくて整形外科志望になったわけじゃないな…」と気づいたのです。しかし、一方で多くの整形外科の先生たちが手術にやりがいを感じていらっしゃることも。あぁ、僕がやりたかったのは整形外科の外来とか、関節注射、リハビリ指導とかであって、手術ではなかったのだな、と認識するようになりました。
そこで、もともと興味のあった総合診療の道(これが一番多くの患者さんのお役に立てるかと思い)を志し、この道を歩むことに決めました。しかし、総合診療医のneedsは(特に地方だと)比較的高いわりに、まだ総合診療医の数は少ない、というところに一抹の不安はありました。
しかし、こうして皆さんに総合診療の魅力や遣り甲斐も伝えられるようになり、今はこの道を選んでほんとによかったな、と思っています。
一方で、将来、総合診療を志す学生・研修医が僕と同じような不安を抱かないようにしたいと思っています。
そこで、総合診療医・家庭医一般の質問に乗りたいと考え、広く門戸を募集したいと思っていたところなのですが、想定よりも多くの質問をDMで頂くこととなり…ここから先は有料にさせて頂きたいと思います。各家庭医療理論(特に行動科学理論)をどうするかも現在検討中です。個別の医療相談は医師法違反に当たりますのでこちらの判断でお答えしかねることもありますのでご容赦ください。
ここから先は
¥ 2,000
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?