VALIS二次小説 理想が欲しくて 深脊界市編Main Story -040(Case of FEI)&エピローグ

お前は変わってるって言われた。
よく解らなかった。

みんなと一緒が良いなって思った。
頑張ってみた。

嫌われたくないなって思った。
自分だけで考えてみた。

嫌な気持ちになった。
気にするなと言われた。

嫌いなやつが出来た。
対処法を身に付けた。

『普通』に疑問を持った。
考えすぎと言われた。

『常識』がおかしいと思った。
間違ってると怒られた。

親に嘘を言われるようになった。
少しずつ嫌いになった。

認めて貰いたくて凄く頑張った。
意味が無かった。

信じて欲しくていろんな言葉で説明した。
何も伝わらなかった。

何も信じれなくなった。
お前が悪いと言われた。

新しい環境に浮かれまくった。
すぐに後悔した。

教師との相性が最悪だった。
理不尽に怒られ続けた。

お願いだから休ませてくれと泣き叫んだ。
ふざけるなと怒鳴られた。

リスカをしようとした。
怖くなった。

何回も自殺を試した。
出来なかった。

助けてくれと何度も懇願し続けた。
見向きもされなかった。

次からはちゃんと頑張ると言い続けた。
付き合いきれないと突き放された。

何もかもがどうでもよくなった。
とにかく楽になりたかった。

どうすれば良かったのかと考えた。
そもそも生まれるべきしゃなかった。

ちょっとだけ現実逃避に走ってみた。
あまり思い付かなかった。

ある日現実から脱け出せた。
凄く驚いた。

毎日が楽しくなった。
夢みたいだった。

このままずっと続けば良いなって思った。
みんなと一緒が良いなって思った。

これで最後にしようって決めた。










最後もやっぱり、叶わなかった。









Main Story -040(Case of FEI)

「………..ぁああああア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

叫ぶと同時に、“能力”を全解放する。イメージという容器を与えられずに溢れ出した“能力チカラ”は、無数の“現象暴力”となって雪崩のようにソートに向かって押し寄せる。
対するソートは、杖を一振することで『理想』の塊であるエネルギーをぶつけて対抗する。

2人の攻撃は数瞬拮抗し、やがて相殺されたところでフェイは冷静さを僅かに取り戻した。

「..........…なあ、なんで俺を殺そうとするんだよ。そんなに俺が邪魔だってんなら、『自分達には近づかないでくれ』とか言えば良いだけじゃねえか。わざわざ殺す必要は無いだろ」
「それでは駄目なのです。あなたが居るだけで、消して少なくない影響が出てしまう。.......…それに、このまま放っていたとしても、あなたはどのみち此処から消える運命です。それなら、取り返しのつかない事態になってしまう前にあなたを排除する方が賢明です」
「何言ってんだ......…?生身の人間が消える訳ねえだろ。いくら此処が深脊界市だとしても、そんなふざけたことある訳ねえ」
「生身?まさかあなた、気付いていないんですか?―――...............

................…は?
意味がわからない。此処にいる俺が死んでいるはずが無い。霊能者でもない限り、死んだ人間なんか見えないだろ。なんでお前らは今まで見えていたんだ?

「正確に言えば、此処......…深脊界市に居るあなたは魂だけの存在なんですよ。あなたはその魂に、偽造生命フェイカーという“能力”を纏っているだけです」
「――――――――あ」

そう、だった。
そう言えば、そんなことをしていた。


変身対象モデルケース人 間ヒューマン
深脊界市に、否、裏世界に足を踏み入れたその時から既に、一つの“能力”を使っていた吐いていた

1冊目の1頁目、その1行目の1文字目から間違っていた。
身勝手な理由で裏世界に足を踏み入れたその時から、フェイという『存在してはいけない人物』が割り込んだその瞬間から。あの日あの瞬間から、何よりも大切なものを踏みにじっていた。

予定調和の物語を、本来描くはずだった軌道を。
とても大切な、彼女達の歴史を壊していた。

「吾輩達はあなたが纏う偽りの肉体とその源である“能力”そのものを殺して、残った魂を現実世界に居る『本当のあなた』に送り還します。全てはあなたを救う為に。深脊界市を復興させる為に。―――彼女達VALISの居場所を、護る為に」

フェイは敵対心を消し去った。
何故なら、自らの存在は決して望まれるものではないと―――誇り高く美しい生き方をする彼女達とは、絶対に相容れない存在だと気付いたから。

現実世界でも、こちらでも。何処に行こうが必ず他人の人生の邪魔をしてしまうと、ようやく認めることが出来たから。

だから、自分の最期を受け入れることにした。

崩れ落ちたフェイに、ソートが静かに、悲しそうに歩み寄る。

「...........さあ、終わりにしましょう」
「...........ああ、終わりにしよう」

ソートの背後に『理想』のエネルギーが収束する。
まるで罪人を断罪するように。
まるで友人に永遠の別れを告げるように。
ソートは杖を振るった。


VALISと存流、そして飛び入り参加を果たした明透による現実世界に向けた『深脊界市PRライブ』が佳境に入る中、会場から遠く離れたビルの屋上で、

フェイは

死ん

.........…

...................…

....................................…







濁ったような雲が空を覆う、お世辞にも良い天気とは言えない昼の時間。とっくに両親が出掛けた家に、1人で留守番をしながら寝ていた青年は楽しかったような、辛かったような、悲しかったような想いに少しだけ戸惑いながら、もう二度と会うことの許されない“彼女達”に向けて呟いた。

おはようさよなら









エピローグ

理想は死んだ。かの世界の歌姫達は思い出を喪い、『正史』の軌道を行く。
在るべき現実絶望に戻った青年は今日もまた、届かないものを見つめながら生きていく。
―――いつか来る死を待って。

総てから否定されて。

誰にも理解されないまま。

自分を壊し殺し続ける。

そうすることしか、出来ないから。

それ以外を、知らないから。










理想はもう、死んだのだから。

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