VALIS二次小説 理想が欲しくて 深脊界市編Main Story -027(Case of FEI)

【注意】

今回は一部、本編完結後に投稿予定の短編集のネタバレが含まれています。読了の際は、予めご了承ください。

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「普通」というものが解らなかった。

昔から「自分は自分」として生きてきたし、何より他の人間がどう考え、どう判断しているのか理解出来なかった。                だからこそ、物心ついて間もない頃から常に他人を理解するにはどうすれば良いのか、そもそも自分と他人の違いは何なのか。そればかりを考えていた。よく母親から、「お前はADHDだ」「相当変わってる」と言われていたのも理由の1つだと思う。

「自分と周りは違う」。                                      「普通」というものがいまいち理解出来ない俺にとって、その事実は長い間大きな苦痛だった。

――俺は自分が思った通りに生きてるだけなのに――

次第に心を壊していった俺は、昼夜問わず連日現実逃避の妄想に日々を浪費していた。


「普通」なんてものに縛られなければ。

誰もが「自分だけの当たり前」を大切に出来れば。

世界でたった1人の俺を受け入れてくれる、そんな居場所があれば。

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そして、『こちら妄想側』に来た。

驚きはした。でも、それ以上に嬉しかったんだ。                   この世界に来たとき、俺は“自分を偽る能力”を手に入れた。              「この能力があれば、どんな自分にも成れる。自分が憧れた『誰からも認められる人間』に成れる」そう思うと、久しく感じていなかった胸の高鳴りに心が踊った。

それからしばらく経ったある日、“彼女達”と出会った。              「VALIS」というサーカス団の専属護衛としてスカウトされた俺は、個性豊かな6人の少女達と過ごしているうちに、こう思うようになった。


もしかしたら、ここが俺の居場所なのかもしれない。






自由人のネフィと一緒に、ララにイタズラするのが楽しかった。

VALISの練習終わりに、ニナと深脊界市を冒険するのは面白かった。

チノが日頃の感謝としてくれた、機械式のオルゴールは毎日必ず聴いている。

ララの練習風景はとても見ごたえがあって、いつ見ても飽きない。

ミューが作ってくれる料理はどれも美味しくて、いつも食べすぎてしまう。

ララを困らせているヴィッテを眺めていると、つい甘やかしてしまう。





いつしか俺にとって、VALISは掛け替えのない場所になっていた。            だからこそ、深脊界市に迷いこんだ存流あるの歓迎会で皆が毒殺されかけた時には、過去一激怒した。                                         それ程までに、皆が大切だった。















それなのに。














――あなたが普通ではないから、だから距離を置くんですよ――

























嗚呼、そうか。













やっぱり、俺は邪魔なんだな。

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