VALIS二次小説 理想が欲しくて 深脊界市編MainStory -013(Case of FEI)
移動式サーカステント。その客席には、大勢の観客が座っており、新たな来訪者達が行うショウを今か今かと待ちわびていた。
舞台袖でそわそわとしているVALISの生命活動をモニタリングしながら、テント周辺に展開した目を使って警備をする。
時間が経ち、ショウが始まる。深脊界市で行う初めてのショウに、VALISのメンバーは適度に緊張しながらも、次々に演目をこなしていく。ショウも中盤に差し掛かった頃、異変が起こる。
(おーと、このタイミングで来るか。余所者は排除ってか?上等だ、返り討ちにしてやる)
フェイがテント周辺に展開していた目の幾つかに、怪しい集団が写ったのだ。
この集団は全員が武装しており、身元を隠す為か仮面やマスクで顔を覆っていた。 その上、客席に直結している非常口から侵入しようとしている時点でもはや完全にアウトだ。
俺達が使うこのサーカステントには、その構造上所謂「管理室」と呼ばれる場所は存在しない。 その為、警報装置の類いも無いのが奴らを油断させたのだろう。――俺というトラップに気付くことも無く。
(“タイガー”、奴らの相手をしろ気絶以外は許さん。戦意の有無は関係ない――全員叩き潰せ)
テント周辺の“目”の幾つかに映る、武装した集団に向かって一匹の虎が牙を剥く。
活動補助、虎。
活動補助とは、偽造生命によって造り出された生物達の総称だ。 偽造生命は能力者が他の生物に変身するのが主な発動方法だが、「それが生物なら何でもアリ」という謳い文句の通り、一つの命を創り出すことも可能なのだ。
これこそ、ソートがフェイをVALISの専属護衛として雇った“最大の理由”。フェイ自身の戦闘力もさることながら、武装集団や大規模な敵対組織に対する人数差を一人でカバー出来る存在。
ただ護衛をするだけなら、わざわざフェイが出張る必要はない。警備用の生物達を造り、全てを任せれば良い。最悪、分身体を向かわせれば問題無い。フェイがVALISの傍にいるのは、警備用の生物達では力不足になった場合の保険であり、“最後の砦”としてなのだ。