VALIS二次小説 理想が欲しくて 深脊界市編MainStory -016(Case of FEI)

精神感応テレパシー少女こと存流あるの人探しを手伝うことにした俺は、情報共有の為に相手の特徴を訊くことにした。

「それで、その人はどんな見た目をしてるんだ?」                 「(黒い服を着ている、私より背の高い茶髪の女の子です)」

黒い服に茶髪か............この街は人口密度が低いから、どんな人間がいるのか大体把握している。だが、今までそんな女の子は見たことがない。

「俺は見たことないなあ..........他の人達なら知ってるかも。取り敢えず聞き込みするか」                             「(え、この街って他にも人がいるんですか?)」                 「まあ一応は。本当に少ないし、この街に来たばかりなら知らなくても仕方ないよ。それじゃあ、比較的人の多い場所に行くか。案内するからついてきて」

そうして暫く聞き込みをするも、やはりと言うべきか情報は全く得られなかった。

「やっぱり厳しいか...........規模に反して人が少なすぎるんだよなあこの街は」      「(このまま見つからないんでしょうか.........?)」              「力になれなくてごめん。頑張って探してるんだけど.........って言うのは言い訳だよな」                             「(いえ、手伝って頂けるだけでも嬉しいです。私の方こそ、愚痴を言ってしまってすみません)」                        「いいよいいよ。こんなに探してるのに見つからなかったら、不安になって当然だよ..........あ」

探し人の手掛かりが見つからず、不安の声を零す存流あるを宥めたところで、あることに気がつく。

「そう言えば、存流あるは今日この街に来たんだよな?」             「(はい。そうです)」                                「寝る場所とかある?」                          「(.............ありません)」                        「やっぱりか..........」

深脊界市に来たばかりの存流あるに家とか宿があるのかと思ったが、予想通り知り合いを探すことに夢中でそこまで考えてなかったようだ。.............まあ、そもそも深脊界市に宿なんて無いのだが。

「うーん........深脊界市に宿とかホテルなんて無いしなあ。家を買うにしても金が無いし、あったとしてもどのみち暫くはホームレスだし。うち来る?」            「(え?)」                            「俺サーカス団の護衛やってるんだけど、皆テントの自室に寝泊まりしてるんだよ。まだ空き部屋もあるし、そこ使えば大丈夫だと思う」                   「(..............良いんですか?)」                     「たぶんね。勿論、許可取らないと駄目だろうけど」

そう言って携帯を取り出し、団長ソートに訊いてみる。
すると、予想通り空き部屋を使うなら大丈夫と許可が取れた為、今頃暇してるか練習に打ち込んでいるだろうメンバー達にも伝えるように言って、通話を切る。

「大丈夫だってさ。――それじゃあ行こうか。もう時間も遅いしね」

そう言って腕時計を見せると、[18:24]と表示されている画面を見て驚く。

「(もうこんなに時間が経ってたんですか!?)」                「この街って、ずっと夜みたいな景色だからびっくりするよな。俺もまだ慣れてない..........さて、そろそろ行こうか。早くしないと夜中になるぞ」

そうして、未だに呆然とする存流あるを連れて、サーカステントへと帰った。

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