VALIS二次小説 理想が欲しくて 深脊界市編Main Story -026(Case of FEI)
「なんで...........なんでお前が................」
あり得ない。あり得てはならない。どうして彼女がここに居る。何故なんだ。
「プルノさん、ここから先は吾輩が相手をします。警備に戻って頂いて構いません」 「《りょーかいでぇーすっ!!》」
そんなやり取りを聞いても、フェイの頭には疑問ばかりが浮かんでいた。
「なんで..........なんでお前がここに居るんだ.............ソート!」
そう。そこに居たのは、サーカス団VALISの団長―――ソート。
確かに、今朝から姿が見えなかった。
だが、それは一足先に会場に向かっているからだと思っていた。
第一、ここは“S”の拠点じゃなかったのか?
「―――言っておきますが」
その時、ソートが語り始める。
「そもそもの話、吾輩は彼ら“S”のリーダーです」 「.....................どういうことだよ」 「“S”........深脊界市復興公社隊は、吾輩がVALISの為に組織しました」 「だから何言って―――――」 「あなたという異物を排除する為に」 「............................は?」
異物.......?俺が.........?どういうことだ?しかも排除するってなんだ?そもそも何言ってんだ?
「どうやら自覚が無いようで。そういうことならば説明致しますが、 ―――――――『こちら側』にとって、あなたは招かれざる人間なんですよ」
意味が解らない。コイツはさっきから何を言ってる?綠な説明も無しに、いきなり馬鹿なことを言い始められるとイライラする。嗚呼でも.............
なんとなく、コイツの口を黙らせないといけない気がする。
「『こちら側』に来るには、絶対に達成しなければ《.》|いけない2つの条件があります。 1つは『才能を有する』こと。もう1つは、『何かしらの絶望や挫折を経験している』こと。 稀に才能だけで『こちら側』に来る人物もいますが、原則としてこの2つの条件を達成しなければ、『こちら側』に来ることは出来ません。―――――唯一の例外を除いて」 「例外?」 「『こちら側に棲む存在と契約した場合』です」
契約。その言葉に少しだけ心当たりがあった。VALISはソートと契約して『こちら側』に来たと聞いている。まさかそれのことか?
「VALISは2つの条件を達成していますし、吾輩と契約しています。存流さんは偶然にも才能だけで来たようですが................あなたは違います」 「.........」 「あなただけなんです。あなただけがこれらの条件を達成していないにも関わらず、何故か『こちら側』に来てしまっているんです。端的に言うと、あなたは邪魔なんですよ」 「..............」 「あなたのような異物が居ると、VALISが進むべき軌道に支障が出る可能性があります。それだけは、なんとしても避けなければいけません」 「....................」 「その為に、吾輩は彼らを組織したのです。これ以上、VALISにあなたからの悪影響を受けさせないようにする為に」
そこで、ソートがポケットから折り畳まれた1枚の紙を取り出し、こちらに放り投げる。その紙を広げると、「解雇通知」と書かれていた。
「あなた消し去る為に公社隊を動かしましたが、これ以上は見ていられません」
やめてくれ............
「あなたはVALISにとってもはや不要。金輪際、VALISに―――我々に近づかないでください」
...................................
「..............なんでだよ」 「.........」 「..............なんでだよ。俺が何したってんだよ。お前らに害でも与えたか?お前らが嫌がることでもしたか?お前らの人生を壊すようなことでもしたか?」 「.........」 「違えだろ。俺はお前らに何もしてねえだろ。俺はお前に言われた通りに、VALISを護ろうとしただろ。その為だけに、今まで頑張ってきたじゃねえか。なぁ、何か言えよ」 「..........」 「............何か言えっつってんだろ!黙ってねぇで答えろよ!」 「..........あなたが」 「あ?」 「あなたが..........あなたが普通ではないからですよ」
なんだと............. コイツ、今何つった?
「あなたが普通ではないから、だから距離を置くんですよ」 「............そうやって」 「?」
MODEL_CASE――――
「またそうやって............俺を壊すのか!」
――――BERSERKER
予備動作無く、ソートに向かって音速を超える速度で飛翔する。歯が砕けんばかりに力強く食いしばるその様は、腹を空かせた手負いの猛獣のようだった。
大きく開いた右手でソートの首を握り潰そうとするも、ソートに触れるその寸前――――まるで速度はそのままに進行方向だけ反対にされたかのように吹き飛ばされ、背後にあった壁に巨大なクレーターを作った。
「がッ............ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ぁ」 「無駄です。吾輩が求めた“力”は『人間を操る』もの。所詮偽物にしか成れないあなたに勝ち目はありません」 「............ぁ..............ぁぁ」
為す術無く、触れることすら出来ずにたったの一撃で叩き潰されたフェイを一瞥すると、ソートは背を向けて歩き始める。
「ではさようなら。彼女達にはこちらから伝えておきます。――――二度と会わないことを願っています」 「ざ.........けんな...........待てよ........」
息も絶え絶え何処かへと去っていくソートに手を伸ばしながら、自分がこれまでしてきたことに疑問を抱いていた。