VALIS二次小説 理想が欲しくて 深脊界市編Main Story -034(Case of FEI)
フェイを『殺害』し終えたアーロンは、輸送隊の護衛を応援に来た部隊に任せ、ヘリで自身の拠点に帰投していた。
(フェイ。元VALIS専属護衛で、身体操作系“能力”偽造生命を有する...........確かに危険だった)
公社隊から依頼を請けていたアーロンは、フェイの大まかなプロフィールを知らされていた。
(だが、いくら“能力”が強力であっても奴自身は戦い慣れていなかった。あの程度なら護衛は務まらない。クライアントは何故、わざわざあの男を護衛を抜擢した?)
確かに偽造生命は強力だ。しかし、『“能力”の強さ』と『本人の強さ』は別物だ。アーロンから見たフェイは、『“能力”に甘えてるだけの素人』でしかなかった。あれでは“能力”が使えなくなった時に戦えない。 だから解らない。どうしてあんな腰抜けを護衛として雇ったのか。実力不足に呆れてクビにしたとしても、少し時間を掛けすぎたように思える。あの程度ならもって1ヶ月だろう。だが実際には、数ヶ月も雇ったままだった。一体何故............
考えても無駄だろう。そもそも自分は一介の雇われでしかない。殺害対象は仕留めたし、どの道もう知る必要は無い。そう思っていたその時、突如としてヘリ全体に大きな衝撃が走った。
「ッ!どうした!一体何があった!?」 「分かりません!レーダーには何も映っていませんでしたが、突然機体トラブルが発生した模様です!............!大変です!制御が効きません!このヘリは墜落します!」 「なに!?」 「メーデーメーデー!ホーネットから本部へ!高度を維持出来ない、制御不能!繰り返す!ホーネットから本部へ!高度を維持出来ない、制御不能!蜜蜂は眠る!蜜蜂は眠る!」
原因不明の機体トラブルによってアーロンを乗せたヘリは、ぐるんぐるんと不安定に回転しながら墜落した。
「.........ッ!...........痛ぇ」
全身を襲う激痛に、アーロンは目を覚ました。どうやら目を覚ましたのは自分だけらしく、パイロットの2人は気絶しているようだ。ヘリが墜落した時は流石に死んだと思ったが、奇跡的にも死者は出ていないらしい。 とにかく状況を把握しよう。そう思って、ヘリから這い出たその瞬間―――
「よぉ。思ったより復帰が早かったな」
背筋が凍った。 何故だ、何故ここに居る。何故生きている。人体の急所に至近距離から散弾を何発も撃ち込んだはずだ。どう考えても生きているはずが無い。 あり得ない現象に思考が止まるアーロンを他所に、死んだはずの男は独り言を零す。
「にしても、流石に墜落はやり過ぎたかな?あーでも、単に制御奪うだけだと警戒されたままだったか。じゃあ正解だな」 「な.........ぜだ」 「あ?」 「何故..........お前は生きている。俺がこの手で殺したはずだ」 「バーカ、死体くらい確認しとけよ間抜け。あれくらいで死んだら護衛なんぞ務まる訳ねぇだろうが」
変身対象、不死存在。 自身、または対象を一時的に不死身にする。公社隊を撃破すると決めたその時から発動していたのだ。
「.............はは。そりゃあ無ぇだろ」 「せめて頭にもう2発はぶち込んでおくべきだったな」 「...........化け物が」
その後アーロンを撃破したフェイは、新たな目的地を目指し飛び立った。