VALIS二次小説 理想が欲しくて 深脊界市編Main Story -015(Case of FEI)

謎の機械人形オートマタ集団を撃破して以降、俺は今まで以上にVALISの警備を強くし、唯一手に入れた“S”という手掛かりをもとに、相手の正体と狙いを調査していた。

勿論、普段はVALISの傍にいることに変わりはない。だが、“能力”で造り出した生物達では集められる情報に限りがある。              その為、最近ではサーカステントを留守にして丸1日調査に費やすことが多くなった。

メンバーのバイタルは昼夜問わず常に監視しているし、何かあれば状況に応じて予め用意してある全警備部隊が出動するようにしてあるが、それでも心配だ。                               自分で判断したことだが、やはり調査は生物達に任せた方が良いだろうか?         ...........いや。このまま進めよう。深脊界市に来てから起きた謎の症状は、未だに治まらない。この症状の回復についても、何か手掛かりが得られるかもしれない。もう少しだけやってみよう。

今後の方針について考えていると、一人の少女が視界に映った。

深脊界市は、SF系世紀末作品のように至るところにロボットが街中を闊歩しているが、人間が全くのゼロという訳ではない。

しかし、あくまでも「ゼロではない」というだけで、その人口密度はかなり低い。                               この街はそこら中に何らかのビルや建物が乱立していて、その景色はさながら都心そのものだが、あまりにも人間が少ない為、本来なら賑わっているであろう交差点を歩いても人とすれ違うことは滅多にない。

だからこそ、何の変哲もないことでも気になってしまう。

視線の先にいるのは、紫色の服を着た少女。              短い黒髪に見えない何処かに想いを馳せるような幼い表情は、その小さな身長も相まって「物静かな少女」或いは、俗に言う「不思議ちゃん」といったイメージが浮かぶ。

(ずっと回りを見渡しているな。誰か探しているのか?)

見慣れない街に迷い込んだ子供のようにキョロキョロと視線を動かす少女に声をかけようかと迷っていると、少女もこちらに気付きトテトテと駆け寄って来た。

「(すみません。ここってどこですか?)」                  (!?)

なんだ今の.........もしかして、精神感応テレパシーか?

精神感応テレパシー。                              声帯を振動させることによる発声ではなく、念じることによって相手の心に直接言葉を伝える能力。まさか実際に体験出来るとは............

「(あの........?)」                                        「あ、ああ.........えっと.........此処は深脊界市って街だよ」               「(深脊界市..........)」                         「そう。人口密度は低いし変なロボがいるけど、良い街だと思う」

やっべ、びっくりしてて反応遅れたわ。地味に怪しまれたのが恥ずい。

閑話休題それはいいとして

少女の質問に答えると、知らないものを見るような瞳で閑散とした街中を見渡す。

「それで、誰か探してたりする?良ければ手伝うけど」                「(良いんですか?)」                        「うん。もしかしたら、俺が知りたいことも分かるかもしれないし」          「(何か調べてるんですか?)」                   「色々とね」

調査のついでに、精神感応テレパシーの少女に人探しの協力を申し出る。彼女に協力することで何か見落としに気付いたり、新たな手掛かりが見つかるかもしれない。その過程で彼女の探し人が見つかれば一石二鳥だ。

「(ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えさせてもらいます)」         「うん。そうだ、自己紹介しないとな。俺はフェイ、君の名前は?」          「(存流あるです。よろしくお願いします)」

それが、俺と精神感応テレパシー少女――存流との邂逅だった。

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