VALIS二次小説 理想が欲しくて 深脊界市編Main Story -019(Case of FEI)
深夜に繰り広げた正体不明の組織“S”との戦闘から3週間、より一層情報収集に力を入れているが依然として収穫は全くのゼロ。 そもそもこの街は規模に反して人口が少なすぎるのだ。聞き込みなんて、初日の時点で住人全員に訊き終えた。そこから更に調査しようにも流石に無理がある。
このままではマズイ。VALISや存流のこともそうだが、情報の無い敵対組織なんてそれだけで1つの巨大な不安要素の塊だ。こちらは一方的に精神をすり減らし、相手は悠々と作戦を進められる。 圧倒的不利。そう言うしかない。
“彼女達”が訪ねて来たのは、そんな時だった。
「どうもーっ!こんっばんっはーっ!!深脊界市復興公社から来ました、公社隊所属のTypePでーっす!」 「同じく、公社隊所属のTypeAです」
× × ×
「それで、吾輩達にどんなご用件でしょうか?」 「単刀直入に言うと、VALISの皆さんに深脊界市の広報大使として活動して頂きたいのです」 「VALISの皆さんの実力については住人の皆さんから聞いてるから、是非協力してくれないかな?」
訪ねて来たのは、例の復興公社に所属する隊員達のようだ。 話を聞くところによると、どうやら深脊界市復興の為に住人の数をもっと増やしたいらしく、効率良く移住してもらえるようにVALISの力を借りたいそうだ。
VALISにとってはショウをする度により多くの観客を虜にでき、復興公社にとっては深脊界市全体が活気付くことでより早く街の復興を終えられる。正にWin-Winな取り引きだ。
とはいえ――
(いやふざけんじゃねぇよ!殺す気か!)
あまりにもタイミングが悪すぎる。何故こんなクソ忙しい時にそんな話を持ってくるのだろうか?せめて“S”の正体を掴んでからにしてくれないか?
こちとら変な症状出るわ“S”について考えなきゃいけないわ普段の仕事もあるわでやること多いんだよ!それに加えて街の広告もやって欲しいだあ?やること変わんなくてもより警戒しなきゃなんねぇだろうがよ!そんなの精神的疲労でお陀仏になるわ!VALISに護衛は俺しかいないこと解ってんのか!
しかし、現実は残酷である。
「確かに良い提案です。わかりました。その話、引き受けましょう。皆さんもそれで良いですね?」
思わずソートにギョっとした目を向ける。何言ってんだこのバカネズミは。
「賛成~!」 「それめちゃくちゃ楽しそう!」 「ヴィッテは歌えるならなんでもいいよ~」 「確かに、これは良い機会かも。ララ達のスキルがもっと向上する........!!!」 「私達を応援してくれる人達が増える........これはやるしか無いわね!」 「ふむ。これほど良い話は他に無い。受けて損は無いだろう」
お 前 等 も か よ。 何にも良くない。俺にとっては損しか無い。この仕事に楽しめる要素なんて微塵も無い。俺の負担を考えろ。
そもそも君ら、俺のお蔭で安全にショウが出来てるって理解してる?君らには言って無いだけで2回も狙われてるからね?それ両方とも防いだの俺だからね?君らは知らないだろうけど、警備用の生物造るのって大変だからね?しかもそれを維持するのにどれだけのリソース割いてるか解る?
「あっ、そうだ!折角なら存流ちゃんも一緒にやろうよ!」
おいコラネフィ何言ってんだ。
「(私.......ですか?)」 「うそ!まさか、あなたも凄い人なの!?」 (あっこれヤバい)
存流は歌うのが好きだ。それはこの3週間でよく分かった。そんな人間がこんな甘い蜜のような話を振られて「NO」と言えるだろうか?それこそNOだ。
「(私も........歌って良いなら、歌ってみたいです.........!!!)」
..............もう諦めるか。 結局何をどう思おうが、最後まで仕事を全うしなきゃいけないことに変わりはない。そもそも俺に拒否権は無いのだ。 それなら、まずは手始めにアレをやってみるとするか。
こうして、VALISは大きな仕事を得ると共にフェイは未だ正体の掴めない“S”に対抗するべく、とある作戦の決行を決意した。