VALIS二次小説 理想が欲しくて 裏世界編プロローグ&Main Story - 001(Case of VALIS)
プロローグ
移動式サーカステント。その舞台袖に、紺色で統一した衣服を纏った一人の少年が佇んでいた。
(うーわ、あれすっげぇな。どうなってんだ?)
どんな原理か、宙に浮かんでは消えるハートマークやコメント群をぼうっと眺めながら、心底どうでもよさそうに思う。
突如として鳴り響いた、客の獣の咆哮のような歓声に少しだけ顔をしかめながら、会場のボルテージを引き上げたサーカス団のメンバーである6人の少女達に目を移す。
(本当に楽しそうだなぁ..........あんなに楽しそうなら、少しだけ羨ましいな)
そんな思いで少女達を見つめる少年は、――凍てつく程に感情が死にきった、言葉にできない表情をしていた。
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Main Story - 001(Case of VALIS)
話は1週間前に遡る。
「皆さん、少し良いですか?」
ショウを1週間後に控えていたVALISのメンバー。練習終わりに楽屋でのんびりと過ごしている時、団長であるソートがVALISに声をかけた。
「なにー?面白くないことなら後にしてー」
ソファーに仰向けになり、携帯をいじっていたネフィがどうでもよさそうに返事をする。
「皆さんに連絡があるのです」 「連絡?」
いつもとは違い、真剣な声で答えるソートにメガネかけて本を読んでいたチノが聞き返す。
「ええ。とても大事な連絡です」
その言葉を聞き、わちゃわちゃと騒いでいたララとヴィッテがピタッと動きを止める。次いで、ララがソートに尋ねる。
「大事な連絡?ショウは来週だけど、何かあったの?」 「そのショウですが、今回から新たに仲間が増えることになりました」 「仲間?メンバーが増えるの?」 「いえ、皆さんの人数は増えません。皆さんに専属の護衛が付くのです」
あまりに焦らすソートに、急かすようにチノが問いかける。
「専属の護衛?それで、その人は?」 「それが..........」
× × ×
(彼........なのよね)
熱狂的なショウを終えたララが、とある少年を見る。
フェイ。 そう名乗った少年は、現在壁に背を預け目を閉じて腕を組ながら俯いている。 一見すれば、ただ居眠りをしているように見えるが、どうやら何かを『感知』しているらしい。
(それが何かは教えてくれなかったけど)
あの日、ソートが『大事な連絡』としてフェイを連れてきてから1週間。彼は、「こっちに気をとられて大事なショウの邪魔になりたくない」と言って、自身が持つ“力”の詳細を話さなかった。
それ自体は良い。こちらに気を遣ってくれたのだと思うし、実際余計なことを考えずに練習できた。 だがショウが終わった今、こちらも集中するものはない。この後の慰労会を兼ねた食事会で聞こう。