VVALIS二次小説 理想が欲しくて 深脊界市編Main Story -017(Case of FEI)
俺は偶然出会った少女、存流の人探しを手伝った後、泊まる場所の無い彼女を連れてサーカステントに戻った。
「「「「「「おかえり!」」」」」」 「おう。みんな揃ってるんだな。...........ソートは?」 「ソートは用事があるんだって」
サーカステントに着くと玄関ではソートを除いた6人全員が待っており、俺達の姿を認めると大きな声で出迎えてくれた。 姿の見えないソートについて尋ねると、ヴィッテがそう教えてくれた。
「その子がソートの言ってた居候ちゃん?」 「うん。全員自己紹介は“店”についてからな」
そう。今日は元々、深脊界市散策した時に見つけた中華料理店に行く予定だった。偶々存流が居候することになったので、折角ならそこで歓迎会をしようと思い付いたのだ。
それから暫く歩くと、目的の中華料理店に着いた。 店に入って数分、注文した料理が届いたところで何故か任されていた乾杯の音頭を取る。
「それじゃあ料理も届いたし―――祝、存流居候歓迎会始めます!」「「「「「「「「乾杯/(乾杯!!!)!!!」」」」」」」」
× × ×
夜の帳が下りた時間、午後23:14。一部を除いてあらゆる生命が寝静まった頃、2つの人影が暗い街中を過る。1つは何かから逃げるように。もう1つは――獲物を狩るように。
逃げる人影が息を切らしながら路地裏へと駆け込む。暗闇から迫る“悪魔”から生き延びる為に、さらなる暗闇に足を進める。 迷路のように複雑な道を進み、ようやく足を止める。空になった肺が、新たな空気を求めて大きく活動する。
“悪魔”から逃げていたのは、存流の歓迎会をする為にフェイ達が利用した中華料理店の店長――沐宸だった。
沐宸が逃げていたのには理由があった。その理由は、とある集団を毒殺する予定だったがそれに失敗し、報復に来た人物から逃亡していたからだ。
だがそれも終わり。ようやく撒いたと思い、安堵したところで―――背後からの足音に凍り付いた。
「よぉクソ野郎。つまんねぇ鬼ごっこはもう終いか?」
嘘だ、と思った。あいつはのんびりとゆっくり歩いていたのに対して、こっちは全力で走っていたんだ。普通なら見失っているはずだ、追い付ける訳がない。 しかし、そんな沐宸の考えを嘲笑うように、カツン..........カツン..........とわざとらしく足音を鳴らしながら“悪魔”が近づいてくる。
「オイオイ、人殺そうとした奴が鬼ごっこ始めたと思ったら、何勝手にバテてやがんだよ」
壊れたロボットのようにガタガタと体が動く。見たくないにも関わらず、何故か無意識に“悪魔”の方へと視線が向く。
「そんなにビビんなよ、そもそもオマエが悪ぃんだろうがよ。こっちは楽しく飯食って終わりにしようとしてたってのに、ナメた真似して折角の気分台無しにしやがって。俺が居なきゃ今頃全員お陀仏だぞ」
その“悪魔”―――フェイはドス黒い殺気を隠そうともせず、月明かりを背に愚かな罪人を嗤うように呟く。
「で?この落とし前はどうつけてくれるんだ?まさか、泣いて謝れば済むと思ってんじゃ..........ねぇだろうなァ!!!」
強く握りこんだ拳を、全力で真横の壁に叩きつける。
身体強化
ドンッッッッッッ!!!!!と轟音が鳴り、素手で開けられた穴に驚いた沐宸は腰を抜かす。 その場にへたりこんだ沐宸を見下すように、悪魔は更なる脅しをかける。
「さぁて、それじゃあ愉しい尋問タイムといこうか。拒否権はねぇよ。ちゃんと答えてくれるなら怪我はしねぇから。な?」 「す、済まなかった!家族が人質にされたんだ!命令に従わないと、こ、殺すって!」 「まだ何も言ってねぇだろうが勝手に喋んな」
ようやく口を開けたと思ったら、容赦なく顎を蹴り上げられ舌を噛みきる。 口を押さえて蹲る沐宸を無視しながら、フェイは声を低くして尋問を開始する。
「1つ目、誰からの指示だ」 「い、言えない!言ったら殺される!」 「拒否権はねぇつったろうが。テメェには『吐く』以外の選択肢はねぇよ。もう1度訊くぞ、誰からの指示だ」
自身の頭を踏みつけ、より一層低くなった声で命令するフェイに心を粉々にされた沐宸は、とうとう黒幕の名を口にする。
――それは、フェイにとって聞き覚えのある名前だった。
「“S”だ!それ以外は知らない!ほんとだ!」