VALIS二次小説 理想が欲しくて 裏世界編Main Story -006(Case of FEI)
突然フェイの身体が吹き飛ぶ。何度かバウンドしてようやく落ち着いた頃には、フェイは臨戦体勢に入っていた。
(痛ってぇな。..........どこからだ?)
即座に能力を発動し、周囲の生物を探知する。
「ここだよ。ここ」
すると、それに反応するように声が聞こえた。 声のした方へ視線を向けると、そこには金髪の男が“浮かんで”いた。
「おいおいお前か?いきなり喧嘩吹っ掛けて来やがった奴は」 「見てわかんねえか?」 「ナメたことしやがるクソガキには興味ねぇよ」
こちらを見下すように浮かぶ男を睨みながら、目の前の“敵”を潰すための策を講じる。
この男は間違いなく能力者だろう。宙に浮いていることから、重力操作でもしているかもしれない。しかし、それだとさっきの衝撃波が解らない。重力操作なら、吹き飛ばすのではなく“徐々に加速させる”とか“全力で引き寄せる”方が正しい気がする。 だとすれば気流操作か?上昇気流の要領なら、空中に浮かべるのも理解できる。でもアイツの服は揺れてないし...........
「にしても変だなあ。今の威力だと骨の数本は折れてるはずなんだけど?」
さらっと恐ろしいことを言いやがった男は、続けてこう宣言する。
「まあなんでもいいや。今は苛ついてんだ。取り敢えず死ね」
交戦を察して、すぐに能力を発動する。まずは小手調べだ。
PARTS_CAST WINGS
肩甲骨の内側から生えた翼で、迫り来る不可視の衝撃波を直感で叩き落とす。それが終わるや否や、今度は男に向かって全力で飛翔する。
身体強化
能力の応用によって、身体能力を数十倍に引き上げた音速の回し蹴りを容赦なく男の顔面に叩きつける。 ..........が、その直前で見えない壁のようなものに阻まれる。
その結果生じた隙を狙い、男は右ストレートを繰り出す。 すかさず片翼を割り込ませて防ぎ、壁に阻まれていた脚を戻すように見せかけ、フェイント気味に腹に突き刺す。
当然のように見えない壁に阻まれるが、それを利用して一度距離を取る。
「ちっ、気持ち悪ぃ羽だな」 「カッコいいだろ。これでも結構デザインには拘ってんだぜ」
(やっと解った。コイツの能力は念動力だ。蹴りつけた時の感触からしてこれで間違いない)
体勢を立て直したフェイは、相手の能力を暴く。 フェイが相手をする男の能力は念動力。指定した方向へ圧力を発生させ、触れずに物体を動かす能力。
フェイの体が吹き飛んだのは、フェイの全身に強力な圧力をかけたから。空中に浮かんでいたのは、“重力とは逆向きに働く圧力の壁”を発生させ、その上に立っていたから。フェイの蹴りを防いだのも、これらの原理と同じだろう。
(タネが割れたならいくらでも攻略できる。ナメたことしてくれやがった礼だ、しっかり返してやらねぇとなぁ?)
PARTS_CAST TENTACLE
背中から1本の触手を造り、男に巻き付けるとそのまま地面に高速で投げ飛ばし、地面に突き刺さった男に翼のラッシュを叩き込む。
流石にもういいか。 しばらくラッシュを撃ち込むと、ゆっくりと降下して“能力”を解除しながら男へ近づく。どうやら出血まではしてないようだが、あまりの痛みに気を失ったらしい。
いくら人間を吹き飛ばす程の出力を出せたり、音速の蹴りを防げるとは言ってもそれには限界があるはずだ。 なら、その限界を超える威力を反撃どころか防御もできない速度で殴り続ければ良いと思ったが、予想以上に上手くいった。
ポケットから携帯を取り出し、ソートに電話する。
「あー、ソート?ちょっと調べてほしいことと、クソガキ1人どうにかしてほしいんだけど..........」