VALIS二次小説 理想が欲しくて 深脊界市編Main Story -011(Case of FEI)
これまでの活動拠点を去り、俺達が新たに向かったのは『深脊界』。 移動式サーカステントを出た俺達は、新たな活動拠点を見て同時に息を洩らした。
「すごい.......!!!」 「もの凄く綺麗........」 「ここが......深脊界市..........!!!」 「?」
ふと何かに違和感を覚え、愛用の腕時計を確認する。 デジタル表記で表示される現在時刻を見ると、[13:29]とあった。
(そうか、時間帯に反して『暗すぎる』んだ)
現在時刻は13:29。しかし、今見えてる景色は夜中のそれだ。ネオン街ような景観でわかりづらいが、時間と景色が一致していない。
単に前の世界と時間がずれているだけかもしれないが、もしかするとこの世界はずっと夜かもしれない。
「よし。それじゃあ..........ッ!?」
個人的にも興味があり、皆に今日の行動を伝えようとして、不意に頭ごと意識を激しく揺さぶられた。
視界と脳内は真っ白に塗り潰され、脳がガタガタと震えるような感覚がある。 全身の皮膚が細かく振動しているような気がする。まるで何かを弾こうとしているようだ。
体感にして数秒ほど、ようやくそれらの症状が治まり、視界や全身の感覚が元に戻る。 少しだけ息が荒くなっていたが、それ以外は特に変わったところは無い。
「フェイ...........大丈夫?」
気がつくと、目の前にニナの顔があった。どうやら俺を心配してたらしい。 周りを見渡すと、他のメンバーも同じようだった。
「あ、ああ.........俺は大丈夫」 「本当に?息も荒いし、それに............」
「体が透けてたよ?」
「...............え?」
俺の体が...........透けてた?何を言ってるんだ?
体が透けること自体は理解できる。例えば、タコやカメレオン等が持つ「保護色」を偽造して周囲に溶け込んだり、光子を操作できるように体を造り変えれば透明化できる。
だがそれらは、当然俺の能力を使えばの話であり、数秒間まともに思考することすら出来なかったのだから能力なんて使えない。 ましてや襲撃を受けた訳でもないなら、わざわざそんな逃げるような真似をする理由がない。
つまり、俺の能力行使が原因ではない。 なら、一体何が............
「............まあいい。とにかく俺は大丈夫だ。それよりも、今日はこの世界を見て回ろう。折角しばらく滞在するんだし、いろいろ知っておいて不便はないだろ」
そう言うと、皆はあまり納得していないような微妙な顔をしつつも、各自行動を開始した。
――もしも、あの感覚が俺の能力によるものじゃないとしたら。
あれが、ただの幻覚じゃないとしたら。
この街には、一体何がある?