VALIS二次小説 理想が欲しくて 深脊界市編Main Story -032(Case of FEI)

TypePHENOMENON。現象の名を冠する、公社隊の実力者。

プルノとして戦闘したことがあるだけでなく、自動再成オートヒールを見られた以上、こちらが使える手札はかなり少ない。加えてあらゆる現象を操作出来るなら、ほぼ確実に苦戦を強いられることになる。

それでも勝たなくちゃいけない。俺の居場所を取り戻す為に。

実を言うと、これまでの偽造生命フェイカーは何一つ本領を発揮出来ていない。   何故なら、1週間前までVALIS(そして深脊界市に迷い込んだ存流ある)の護衛として様々な生物を造り出しては、手の届かない範囲の護衛部隊として使役していたからだ。

一口に生物と言っても、1種類だけではなく大小様々な種族の生物を造り出しており、その数は3桁にも及ぶ。                  加えて、脳内で各個体と通信したり、時には視覚と聴覚を共有して連携をとることもある。                           さらに言えば、護衛を生物に任せるのではなく、最悪の場合フェイが自ら他の生物に変身して戦う必要もある。当然これらを可能にする為に、脳を補強しなくてはならない。そうでもしなければ、あまりの負荷に脳が耐えきれず、フェイは死んでしまう。

稼働率にして、32%。それが今までフェイが出せる限界だった。             しかし、公社隊を撃破するまでVALISの護衛が出来ず、過去に造り出した生物達も偽造生命フェイカーのリソースを必要としなくなった今、生物への変身に制限は無くなった。

MODEL_CASE DRAGON

地底の支配人にして財宝の番人。言わずと名の知れた伝説の生物。竜王ドラゴン。         本来のスペックを発揮出来るようになった偽造生命フェイカーによるその全長は、脅威の50メートルである。

「GYAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!」            「ッッ!?...............え、ちょま................これは流石にデカ過ぎない?」

轟かせた咆哮は大気を揺らし、迸った衝撃波が周囲の建物に亀裂を走らせる。                                  想定外の巨体と迫力に、TypePは完全に呑まれてしまう。

しかし、TypePとてフェイ『抹消』の指示を受けている身。ビビって逃げる訳にはいかないと、様々な現象を展開する。              対するフェイもまた、TypePを撃破する戦略を練り上げる。

(俺の目的はあくまで公社隊を退けることであって、決してメンバーを殺すことではない。向こうは俺を殺すつもりだとしても、俺は必ず手加減する必要がある。                              幸い伝説の生物なだけあって、ドラゴンの鱗は耐熱性に優れた超硬度な未知の物質で作られている、空飛ぶ戦車のような強度を持つ。並大抵の攻撃は意味を為さない。試しに絶対的な防御力の上からゴリ押してみるか)

一度大きく羽ばたいて距離を取ると、姿勢を低くし翼と一体化した腕を使って突進する。余談だが、この時羽ばたいた際の突風によってTypePが展開していた現象が全て吹き飛ばされ、TypePが驚愕していた。

TypePは迫り来るドラゴンフェイ空間移動テレポートによって回避すると、光子を束ねた極太のレーザーを照射する。                         しかし、そんな攻撃を全く意に介さないといった様子のドラゴンフェイは再び飛び上がると、今度は上空へ一直線に飛翔し、一度大きく旋回し隕石のようにTypeP目掛けて頭から落下する。

急な速度に反応しきれなかったTypePは辛うじて直撃は免れるも、ドラゴンフェイが地面に衝突した際の衝撃波に吹き飛ばされる。

小さな身体がノーバウンドで数十メートルも吹き飛び、ビルの外壁に突き刺さってようやく止まる。                       ピクリとも動かないその姿は一見死んだように見えるが、ドラゴンが持つ野性的な察知能力によって気絶していることがわかる。どうやらあのタイツにも似た服装は、超高性能な対衝撃素材で創られた防護服として機能するらしい。

ともかく、これ以上戦う必要は無い。援軍が来る前に、すぐにここを離れよう。まだ作戦は始まったばかりだ。

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