第2回内科専門医/第199回(救急)/2022

第 2 回内科専門医試験
2022年度予想

全身麻酔の迅速導入気管挿管(rapid sequence intubation;RSI)の際に使用する薬剤として頻度が高いものを3つ選べ。
a. メトヘキシタール
b. ロクロニウム
c. フェンタニル
d. チオペンタール
e. プロポフォール


< ここから解答・解説になります >



解答

b、c、e

試験でのポイント

どこまで深く覚えるべきか悩ましい分野だが、各薬剤の副作用・禁忌は確認しておきたいところ。また、ロクロニウム(エスラックス®︎)には拮抗剤スガマデクス(ブリディオン®︎)が存在し、使用禁忌が無いため使用しやすい薬剤であることも押さえておく。

解説

a d 誤り。これらは血圧低下をきたしやすく、急性中毒(呼吸抑制)をきたすこともあり麻酔深度の調整が難しい。
b 正しい。筋弛緩薬としては、競合性筋弛緩薬であるロクロニウムが最も使用される。ロクロニウムは作用持続時間(20〜30分)をもちながら、作用発現までの時間が短い(約 1〜1.5 分)ため、気管内挿管時に特に有用である。
c 正しい。オピオイド鎮痛薬として、フェンタミル、レミフェンタニルが使用される。特にレミフェンタニルは、構造内にエステル結合を有し、非特異的エステラーゼで速やかに加水分解される超短時間作用型の鎮痛薬である。鎮痛作用は約1分で発現し、約5分で消失するため、呼吸抑制などの副作用リスクから軽減できる
e 正しい。プロポフォールはチオベンタールやチアミラールといったバルビツール酸系よりも作用時間が短く、導入が速やかである。これは、本薬の肝代謝が速やかに行われ、バルビツール酸系のような体内蓄積がほとんど起こらないからである。そのほかRSIにおける静脈麻酔薬(鎮静薬)としては、ミダゾラム、ケタミンが使用される。

補足

迅速導入気管挿管;rapid sequence intubation(RSI)は、輪状甲状軟骨圧迫(いわゆるSellick法)を行いながら麻酔導入薬、速効性の筋弛緩薬を使用することで意識消失と筋弛緩を速やかに起こして気管挿管を容易にするとともに、冑内容物の誤嚥リスクを減らす意図をもつ、即座に気管挿管を行う手技である。誤嚥リスクが高く(胃内容物の充満、疼痛、胃食道逆流など)、挿管困難を示唆する所見がない場合に選択する方法である。一方で、挿管困難が予想されるケースではRSI は行うべきではない。一般的なRSIの流れは下記の表参照。

RSIの際の注意点

✔️ 挿管困難が予想される場合には、RSIは行わない(意識下挿管を行う)。

✔️ 気管挿管完了まで人工呼吸は行わない

RSIの際に使用する鎮静薬・筋弛緩薬

<鎮静剤>

✔︎ ミダゾラム:副作用に低血圧
✔︎ プロポフォール:副作用に低血圧
✔︎ ケタミン:副作用に幻覚、(現在は頭蓋内圧への影響は否定的)

<筋弛緩薬>

✔︎ ロクロニウム(エスラックス®︎):非脱分極性、使用禁忌が無い、拮抗薬(スガマデクス)が存在する。

✔︎ スキサメトニウム:脱分極性、禁忌:悪性高熱症の既往。脱分極性筋弛緩薬の欠点である、高カリウム血症、横紋筋融解症、頭蓋内圧冗進・ 眼圧亢進あり。

<鎮痛剤>

✔︎ フェンタニル:即効性があり血行動態に作用しない、副作用として、鎮静、呼吸抑制、腸管運動低下、嘔気・嘔吐

✔︎ レミフェンタニル(アルチバ®︎):超即効型短時間作用型、副作用はフェンタニルと同じ。→どちらもナロキソンで拮抗

✔︎ オピオイド拮抗性鎮痛薬:ブプレノルフィン(レペタン®︎)、ペンタゾシン(ペンタジン®︎)は、鎮痛に天井効果およびオピオイド麻薬拮抗作用があるためあまり使用されない。

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