第2回内科専門医/第164回(脳神経)/2022
第2回内科専門医試験
2022年度予想
脳静脈洞血栓症のリスク因子として適切でないものはどれか。1つ選べ。
a. 妊娠
b. 出生地
c. 副鼻腔炎
d. 新型コロナウイルスワクチン接種
e. 経口避妊薬の使用
< ここから解答・解説になります >
解答
b
今回は、脳静脈洞血栓症自体の解説は割愛する。
出題の意図
2019 年 12 月に中国武漢で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクが認められて以降、パンデミックを収束させるために複数のワクチンが開発され、世界各国でワクチン接種が進み感染抑止効果が確認されている。
本邦では、mRNAワクチンであるBNT162b2(ファイザー社)とmRNA-1273(モデルナ社)を中心にワクチン接種が進められ、2021年8月よりアデノウイルスベクターワクチンであるChAdOx1 nCov-19(アストラゼネカ社)も接種開始となった。
そんな中、特に海外において、ChAdOx1 nCov-19接種後に、稀な部位の血栓症と血小板減少をきたす副反応が複数報告され、同じアデノウイルスベクターのAD26.COV2.S(Johnson &Johnson社)でも同じ病態の副反応が報告された。
アデノウイルスベクターワクチン(特にアストラゼネカ社)接種による副反応の一つとして、血小板減少症を伴う血栓症(TTS)が認知され、それらの多くが脳静脈洞血栓症であった。病態が解明されてきており、それを受けて本問題が作成されたものと思われる。
血小板減少症を伴う血栓症(TTS)のまとめ
現時点でのTTS診断基準
診断基準5つで問題作成しやすいため、項目くらいは頭に入れておく。
補足
新型コロナウイルスワクチン関連問題として、へパリン起因性血栓性血小板減少症(HIT)の出題も増えており、第1、2回内科専門医試験でともに出題されている。今回もおさえておきたい。
また、mRNAワクチン(ファイザー製:BNT162b2、モデルナ製:mRNA-1273)後の心筋炎・心外膜炎についても一応抑えておく。ファイザー製は100万人接種中1.1人、モデルナ製は100万人接種中2.6人であり、新型コロナウイルス感染に伴う心筋炎(本邦では感染者10万人あたり男性104.8人、女性60.7人)の頻度のほうが圧倒的に多いと覚える。
参考文献
"Cerebral venous thrombosis after vaccination against COVID-19 in the UK: a multicentre cohort study."(Perry R., Tamborska A. et al., Lancet. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)01608-1)
Perry RJ, et al. Cerebral venous thrombosis after vaccination against COVID-19 in the UK: a multicentre cohort study. Lancet. 2021 Aug 6. Online ahead of print.
新型コロナワクチンの接種について〔第21回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料;2021年5月21日〕
COVID-19 ワクチン接種後の血小板減少症を伴う脳静脈血栓症〔臨床神経学,2019年8月〕