第1回内科専門医/第208問(内分泌)/2021

第1回内科専門医試験
2021年度予想

骨形成促進、骨吸収抑制の両方の作用を持つ骨粗鬆症治療薬を1つ選べ。
a. 活性型ビタミンD3製剤
b. ビスホスホネート薬
c. 抗RANKL抗体(デノスマブ)
d. 抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)
e. 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)


< ここからは解答・解説になります >



解答

d

解説:骨粗鬆症の診断とガイドラインの変遷

骨粗鬆症とは、全身の骨脆弱性をもたらす疾患であり、その多くは閉経等の性腺機能低下症と加齢によりもたらされる。過去25年の間に、骨粗鬆症の考え方は、骨量と骨構造の問題から骨脆弱性の問題へと変化し、疾患としての問題から骨折リスクの問題へと質的な変遷を遂げた。それに対応して、診断基準が改定され、ガイドラインの内容がアップデートされてきた。過去問を解くうえで、まずはこのような背景を理解しておくと良い。
現行の診断基準は2012年改訂版である(下表)。現在の骨粗鬆症診断の主な目的は、高齢者の骨折予防のための高リスク群を描出することであり、そのために重要なポイントは、既存脆弱性骨折の有無の評価である。胸腰椎と大腿骨近位部は、その後の骨折リスクを最も良く反映する骨折部位であるため、骨密度のいかんによらず骨折が確認されれば骨粗鬆症と診断される。それ以外の部位の既存脆弱性骨折については、骨密度が正常と判定されなければ骨粗鬆症と診断される。既存脆弱性骨折を認めない場合は、骨密度の低下に基づいて診断される。従って、胸腰椎や大腿骨近位部の既存骨折が存在しない場合で、特に自立歩行が可能な患者においては、積極的に骨密度を測定することが推奨される。

骨粗鬆症の薬物療法

骨粗鬆症の予防と治療の目的は、骨折を予防し骨格の健康を保って、生活機能とQOLを維持することである。そのためには、種々の骨粗鬆症治療薬から個々の症例において、症例背景や作用機序を考慮して薬物選択をすべきであり、骨密度増加・骨折予防効果のエビデンスのみならず、アドヒアランス、副作用、薬価も念頭においた治療方針を立てる必要があり、長期的な視点に立ち、個々の患者に適した薬物を選択することが重要である。

骨吸収抑制剤
ビスホスホネート(BP)製剤
カルシトニン製剤
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
抗RANKL抗体(デノスマブ)

骨形成促進剤
副甲状腺ホルモン (テリパラチド)
抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ);骨吸収抑制作用もあり

上記には分類されない
活性型ビタミンD3
ビタミンK2

骨折リスクに応じた治療方針

1)脆弱性骨折の無い症例(骨老化を抑制する時間的余裕がある
脆弱性骨折の無い比較的早期の閉経後骨粗鬆症では、SERMの処方を考慮する。男性および高齢女性では、最も多くの骨折予防に関するエビデンスを有するビスホスホネートが第一選択薬になる。ビタミンDは、血清25(OH)ビタミンD値が低い症例等でカルシウム代謝及び骨密度増加効果が期待できるので有用である。

2)脆弱性骨折のある症例(とりあえず骨密度を上げたい
椎骨・大腿骨頸部における骨折予防のエビデンスがあるビスホスホネート、あるいはデノスマブを使用する。症例により、どちらの薬剤がアドヒアランスの観点から好ましいか(月1回の特殊な内服か半年に1回の注射製剤か)を考慮して薬剤選択をするべきである。特に、皮質骨の骨密度増加を期待する症例や骨びらんに対する修復効果も示唆されている関節リウマチ症例ではデノスマブが有用である。
ただし、どちらも最長 5 年で切り替え

3)骨折リスクのより高い症例(急ぎで骨を若返らせたい
椎体の著明な骨密度低値や高齢で複数の圧迫骨折がある症例、他の骨粗鬆症治療薬投与で効果が乏しい症例等のハイリスク症例に対しては、骨形成促進薬であるテリパラチドあるいはロモソズマブを使用する。
→ただし、テリパラチドは最長 2 年、ロモソズマブは最長 1 年で切り替え

関連問題

参考文献

骨粗鬆症〔日内会誌 110:738~745,2021〕

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