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イベントレポート:Antibody Engineering & Therapeutics Asia 2024【前編】

今回のnote記事では、昨年10月に京都で開催された Antibody Engineering & Therapeutics Asia 2024 カンファレンスにおける Genedata AG 久野 瑞枝(薬学博士)による口頭発表「Faster Time to Market through Digital Innovation in Biologics Research and Development 」の内容を前編・後編に分け、その【前編】をお届けします。

本学会では、世界的に有名なパイオニアによるプレゼンテーションをはじめ、250名以上の主要な研究者・科学者・業界の専門家が一同に会し、抗体エンジニアリングの最新の進歩とその治療応用について活発な議論が行われました。


1. 実験データをAI/MLに再利用するには

今日、多くの人が創薬における次世代ラボを思い描くとき、最先端のラボ技術や、実験で収集された大量のデータからAI/MLプロジェクトを行うことを想定しています。最先端のラボの自動化やハイスループットシステムは、AI/MLのために解析されるデータを揃えるための前準備という捉え方をする人が多いです。しかし、それはプロジェクトのごく一部分を見ているに過ぎません。機器から適切なデータを生成することと、そのデータから学習することの間には重要なプロセスがあります。

まず、実験や最先端のラボオートメーションから出力されたデータは様々なファイル形式で存在します。この状態からデータ学習に至るためには、これらのデータを解析、整理、クリーンアップ、構造化し、より大きなワークフローに接続していく必要があります。これはそう簡単なことではありません。しかし、近年この分野では大きな進歩と革新が起こっています。そしてAIはここでも役立っているのです。

Genedataは、データの生成とデータからの学習の間の領域で、解析ソリューションと有意義なデータアーキテクチャを作成し、プロセスの自動化、AIの実行、研究開発の加速を促します。私たちは、後から必要な情報を付け足すのではなく、最初から正しくデータを取得することが最善であると考えています。

このシステムは、バイオ医薬品の創薬における重要な課題を解決する手段として、主要なトップ25のバイオファーマ企業で使用されています。

では、彼らの抱える課題は何かを見てみましょう。

2. バイオファーマ企業のデータ課題

バイオファーマ企業における創薬では、モダリティとそれに関連するプロセスが絶えず変化しています。それらは複雑で、反復的で、多段階に及びます。従って、多様なモダリティを登録し、これらのプロセスをデジタル化してモデル化するには、高度なデジタルツールが必要になります。

今日、多くの企業がハイスループットシステム、ロボットの導入、バーコードの使用など、プロセスの自動化も行っています。この場合にも、通信、データ交換、さらには自動化ワークフローの駆動が可能なソフトウェア・システムが必要となります。データ量は近年、探索領域において急速に増加しており、データの取得、処理、分析、管理には新しいアプローチが必要です。更には、企業は世界中に多くの拠点を持つことが多く、異なる拠点間のデータにリアルタイムでアクセスし、分析できる必要があります。

また、さらなる課題もあります。新薬のフォーマットでは、例えばバイオ医薬品における抗体の可変領域、ADCと低分子、そしてその他のコンポーネントを共有することがよくあります。しかし、モダリティが異なるとデータの管理システムが異なることが多く、利活用できる情報が埋もれたままになっているのが現状です。データの整理はGenedataが解決してきた問題であり、データ再利用や検索を容易にできるようにサポートします。

では、いくつかの例を見てみよう。

ある大手バイオファーマ企業では、低分子や抗体の探索など多くのモダリティで研究を行っており、最近立ち上げたグループは細胞治療、RNAや核酸医薬品、ADCに特化しています。

抗体探索グループは、多くの標的に対する結合剤を見つけます。その一方で、細胞療法は固形癌のような特定の適応症をターゲットにすることが証明されています。Genedataは、細胞治療グループは抗体探索グループが登録した結合剤のデータにアクセスし、例えばCARのような新しい分子をデザインすることを可能にします。

別の例を挙げましょう。前述の結合剤は、RNAまたは遺伝子治療の部位特異的送達用の脂質ナノ粒子の修飾にも利用できます。このように、情報をマッシュアップしてブレンドし、グループ間で使用することで、より迅速なイノベーションを促進することができます。

最後に、特異的ながん標的を局在化させる抗体と強力な低分子薬剤を結合させる抗体薬物複合体(ADC)を紹介しましょう。バイオファーマ企業の中のADCのグループは、しばしば他のグループと同じELNや在庫システムを使用していません。そこでGenedataが包括的なデータモデルを提供することで、組織内の異なる専門分野のエキスパート同士が容易に協働できるようにします。

バイオファーマ企業は、それぞれのケースに固有の関連情報を追跡しながら、各コンポーネントがどのように組み合わされ、どのように機能するかといった知識と経験を持っています。Genedataは過去27年間に渡り、この業界と共にデータモデルを構築してきたという実績があります。

3. Genedata Biologics ができること

さて、ここからはGenedataが提供するソリューションの一つ、Genedata Biologics®を紹介させていただきます。

Genedata Biologicsの特徴は、何よりもまず、バイオ医薬品のモダリティ全般をカバーし、全ての分子を一意に識別する強力な登録システムであるということです。このシステムは、個々のIDを割り当てるだけでなく、各分子がユニークになるように複数の識別子を付随させられます。そうすることで、研究者たちは、例えば同じVRや特定のドメインで作られた全ての分子をデータベースから簡単に検索したり、スクリーニングからエンジニアリング、生産に至るVRの系譜を追跡したりすることができます。また、化学修飾の異なる2つの同一の抗体や、異なるコンジュゲーション技術を用いた「同一の」ADCを区別することもできます。

これは極めて高度な登録システムです。このシステムは明晰な頭脳で、DNA、RNA、タンパク質の配列とその修飾を理解し、これらの配列に注釈を付け、自動的な一意性チェック、データQCチェック、バリデーションを行うことができます。最後に、分子設計ツールと統合されているので、新規に設計された分子を作成し、追跡することもできます。

Genedata Biologicsは、あらゆるフォーマットでの分子設計をサポートするため、配列をコピーペーストする必要がなく、ファージディスプレイやAIベースのモデリングから生成されたかどうかに関わらず、全ての分子コンポーネントを追跡することができます。

では、例として、タンデムScFv分子(商業的にはBiTesとしても知られている)の作成において、どのようにこれが達成されるかを見てみましょう。

Molecule Workspaceは、科学者が分子の構成ブロックを選択し、コンビナトリアル方式でレゴのように分子を大量に構築できるだけでなく、新しく設計された分子とその構成要素をすべて追跡するため、それらがどこから来たのか、同じドメインを使用したバリエーションがいくつあるのかを常に明確にすることができます。さらに、それらの分子のベクター作成をin silicoで行う際には、その自動作成をサポートします。また、システム内のすべてのベクターを自動的に追跡し、1つの分子の作成中に複数のベクターが使用された場合は、ベクターの組み合わせも追跡します。このレベルのシステムインテリジェンスになると、Genedata Biologicsを導入することで多くの時間を節約します。加えて、これはIP出願のための配列を追跡する優れた方法でもあります。


今回は【前編】をお届けました。【後編】では、Genedata Biologicsによる意思決定のサポートや、データ共有とその先の利活用について、より深堀りしていきます。

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