ビジネスデザインの輪郭 ― 総合電機メーカーのケース
デザイン側から経営への進出、経営側からデザインへの進出があり生まれたビジネスデザインですが、どの立場から見るかによって様々な見方があるかと思います。両方の視座を交えた混沌としたビジネスデザインの様相を少しだけ整理してみました。
1. ビジネスデザインが伝わらない
総合電機メーカー等のビジネスデザイナーとして新しい事業を企画・設計・具体化する仕事をしてしていると、自分がやっていることは確実に会社と社会に貢献していると思う反面、上長・同僚へうまく伝わらないせいでできること・やりたいことが100%伝わらないという悩みがあるのではないでしょうか。自分のできること・やりたいことと、依頼・指示されるタスクとのミスマッチが起こり、残念な気持ちになることもあると思います。
ほかにもビジネスデザインを発信している組織や個人の方を複数お見かけしたので、ビジネスデザインの定義とか世の中のビジネスデザインを集めてみようとつぶやきシリーズにしてすこしつぶやいたのですがイマイチはっきりできませんでした。そこで総合電機メーカーにおけるビジネスデザインを整理して書いてみたら、こる文脈でのビジネスデザインが見えてくるかなと思いたちました。
2. 事業企画と比べてみる
ビジネスデザインの定義として冒頭に書いた「事業を企画・設計・具体化する」という仕事をサラリと書くだけだと、事業企画の仕事と言えるようにも思います。ですが、ちょっとこだわりというか会社の特性上の必要性と個人的な経歴の側面からビジネスデザインと表現しています。
(1) 会社の特性による説明
まず会社の特性的な面から説明すると、多くの総合電機メーカーでは事業企画等の仕事をやっている方々は技術畑の方々です。理系の大学・大学院出身者や、技術部門の経験者ですね。このため良くも悪くも事業企画の観点が技術ドリブン・プロダクトアウトになりがちで、その一方では経営視点・ユーザの視点・マーケットインの視点が不足しがちです。
そこでユーザー視点、経営視点、広く受け入れられるビジュアルコミュニケーションでバランスを取る役割が求められるようになってきています。こういう役割を担う事業企画担当を従来の役割と区別して言うためにビジネスデザイナーという言い方をするほうが都合がいいのです。
(2) 個人の経歴による説明
また個人的な経歴の側面としては、入社前は学部・大学院で人間科学を学び、とくに心理学、社会学、人間工学の分野に力を入れて勉強していました。その後、デザイン部門でデザインリサーチとサービスデザインを長く経験してきました。そのうちにデザインの領域の広がりとともに経営学の知識が求められるようになり、MBAを取得しました。こういうバックグラウンドで、会社に求められる役割を果たす人としてデザイナーという表現がいちばんできること・やりたいことを表現しているように思われます。
デザイナーと言うと多くの人が想像するビジュアルデザインの専門家と誤解されて苦しい思いをすることもあります。しかしデザインがより広義なものになってきているということを説明していくことも、デザイン部門出身者の仕事かな言う思いがあります。そういうわけで、多少の面倒を受け入れてデザイナーと発信しています。
3. 私なりのビジネスデザインを一文で表す
こうして考えると私がやっているビジネスデザインは「技術ドリブンの事業開発に経営視点と人視点を導入し、視覚コミュニケーションスキルでアイデア創出・合意形成の練度を上げるお仕事」ということになりそうです。社内でも異論はありそうですし、ましてや世の中のビジネスデザイナーの皆さんに統一の見解があるわけではないですが、自分なりの定義はできた気がしています。とても柔らかく曖昧ではありますが、そこがまたいいとも感じています。
事業企画をされている方・これからされる方に「こんな仕事の仕方があるんだ」と知ってもらえたり、ビジネスデザインを掲げてお仕事される方に「自分とはここが違う」と比較してキャリアやスキルを考える材料にしてもらえると大変うれしく思います。
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補足
私の役割は経済産業省が出している「高度デザイン人材育成ガイドライン」にあるビジネスデザイナーはかなり近いような気もします。ただこのガイドラインではスキル・役割の濃淡はかなり所属組織と個人に委ねられているので、私の記事を合わせてみていただくと理解が深まるように思います。