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ビジネスデザイナーが書いたMBA論文の参考文献 ― プロダクトマネジメントに関する研究

私はMBAの修士論文で国内IT大手各社がどうしたら海外IT各社に負けない事業を作れるかを事業創造のメカニズムに注目して分析しました。本編はそのままご紹介できないのですが、参考文献をシェアするだけでも参考にしていただけるのではないかと思い、分類してリストアップしました。


1. 想定読者と文献分類

本記事は以下のような読者の方を想定しています。

(1) 事業企画・経営企画・商品企画などを担当している方々
(2) MBAを受験される方・これから経営学の論文を書かれる学生の皆さま

「(1) 事業企画・経営企画・商品企画などを担当している方々」におかれては、論文や書籍などにまとめられた新事業開発の理論や事例を一覧できるものになっています。実務に関連する分野の参考文献に触れる事で、業務遂行上のヒントになるかと思います。
「(2) MBAを受験される方・これから経営学の論文を書かれる学生の皆さま」におかれては、ホワイトペーパーや企業動向などをどういう種類の情報ソースに当たればいいのかを概観できるものになっています。経営学の領域では先行研究は論文や学術書籍にあたるのは他分野と同様ですが、最新の事例をデスクリサーチする際には企業の発信なども活用するところが特徴なので、この手の文献の探し方のヒントにできると思います。

修士論文の文献リストはルールに従ってアルファベット順、50音順になっているのですが、こちらにまとめるにあたってはどういう狙いで集めた文献かを主眼にソートし直しました。結果として以下の4分野にまとまりました。

[文献A] イノベーション論
[文献B] プロダクト/サービス企画開発方法
[文献C] 国内外IT市場の動向
[文献D] 国内外IT各社の事業開発

これ以降では分類に従って概要と文献リストを記載していきます。

2. [文献A] イノベーション論

最初はイノベーション論にまつわる文献です。これらは新しい事業を作るときの課題と解決アプローチを著名な研究から概観する目的で参照した文献です。「The innovator's dilemma」(Christensen, 1997)、「Lead and disrupt」(O’Reilly III & Tushman, 2016)で既存の経営資源や方針が新規事業を妨げること、それを避けるためには新規事業に十分な資源を割く意思決定と実行が欠かせないことを示しました。また企業の発展経路が毒にも薬にもなる点を「Path dependence」(David, 2001)を根拠に示しました。

  1. Christensen, C. M. (1997) The innovator's dilemma: when new technologies cause great firms to fail. Harvard Business Review Press. (玉田俊平太 (監修), 伊豆原弓 (翻訳)(2001)『イノベーションのジレンマ増補改訂版』翔泳社).

  2. O’Reilly III, C. A., & Tushman, M. L. (2016) Lead and disrupt: How to solve the innovator's dilemma. Stanford University Press. (入山章栄(監訳・解説)・冨山和彦(解説)・渡部典子(翻訳)(2019)『両利きの経営-「二兎を追う」戦略が未来を切り開く』東洋経済新聞社).

  3. David, P. A. (2001). Path dependence, its critics and the quest for ‘historical economics’. Evolution and path dependence in economic ideas: Past and present, 15, p.40.

3. [文献B] プロダクト/サービス企画開発方法

続いては「プロダクト/サービス企画開発方法」です。社内に新しい視点を加えてプロダクトやサービスを開発する実践的なアプローチを「The Product Management Triangle」(Schmidt, 2014)のプロダクトマネジメントトライアングルを用いて俯瞰した後に、ある意味でこれを現場に実装する活動の例として「A framework for process improvement in software product management」(Bekkers, van de Weerd ほか, 2010)、「Design sprint」(Banfield & Wax,2015)を概説しました。プロダクトマネジメントの効果を定量的に示した「The impacts of software product management」(Ebert, 2007)を根拠に、プロダクトやサービスを企画開発する体系的な取り組みそのものの価値と、それを研究する私の修士論文が提供しようとする価値や位置づけを示しました。

  1. Bekkers, W., van de Weerd, I., Spruit, M., & Brinkkemper, S. (2010) A framework for process improvement in software product management. In European Conference on Software Process Improvement, pp.1-12.

  2. Banfield, R., Lombardo, C. T., & Wax, T. (2015) Design sprint: A practical guidebook for building great digital products. O'Reilly Media, Inc. (安藤幸央・佐藤伸哉(監修)・牧野聡(翻訳) (2016) 『デザインスプリント ―プロダクトを成功に導く短期集中実践ガイド』オライリー・ジャパン).

  3. Ebert, C. (2007). The impacts of software product management. Journal of systems and software, 80(6), pp.850-861.

  4. Schmidt, D. (2014). The Product Management Triangle. Product Logic. https://productlogic.org/2014/06/22/the-product-management-triangle/ (2021年12月10日確認).

4. [文献C] 国内外IT市場の動向

3分野目は「国内外IT市場の動向」です。なるべくマクロデ視点・定量データから市場のトレンドを紐解くための資料になっています。この領域では情報処理推進機構、総務省のホワイトペーパーがとても役に立ちました。またSPEEDAのデータや自主レポートもとても参考になりました。情報処理推進機構の文献からはIT人材の動向を、総務省の文献からは金額を含む市場動向を抽出することができました。これらの動向と、企業のアクションを示すレポートとしてシステム開発プロセスの観点から「共通フレーム2013の概説」(室田, 2013)、経営資源管理の観点から「技術マネジメントとマーケティング」 (谷地, 2010)を参照しました。

  1. 情報処理推進機構 (2017)「IT人材白書2017」『情報処理推進機構』https://www.ipa.go.jp/files/000059086.pdf (2021年12月10日確認).

  2. 情報処理推進機構 (2019)「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」『情報処理推進機構』https://www.ipa.go.jp/ikc/reports/20190412.html (2021年12月10日確認).

  3. 情報処理推進機構 (2020)「IT人材白書2020」『情報処理推進機構』https://www.ipa.go.jp/jinzai/jigyou/about.html (2021年12月10日確認).

  4. 総務省 (2015)「平成27年版 情報通信白書」『総務省』https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/pdf/27honpen.pdf (2021年12月10日確認).

  5. 総務省 (2019)「令和元年版 情報通信白書」『総務省』https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r01.html (2021年12月10日確認).

  6. 室田隆 (2013)「共通フレーム2013の概説」『情報処理推進機構』https://www.ipa.go.jp/files/000027415.pdf (2021年12月10日確認).

  7. 谷地弘安 (2010)「技術マネジメントとマーケティング」 『横浜経営研究』31(2), pp.43-54.

  8. ユーザベース (n.d.)「経済情報プラットフォームSPEEDA」 https://jp.ub-speeda.com/ (2021年12月14日確認).

  9. 労働政策研究・研修機構 (2019)「データブック国際労働比較2019」『労働政策研究・研修機構』https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2019/index.html (2021年12月10日確認).

5. [文献D] 国内外IT各社の事業開発

最後は「国内外IT各社の事業開発」です。ここではIT各社の事業開発の活動上の工夫を各社の発信している企業論文やニュースリリースなどを集めました。国内の事例としてNTTデータ、沖電気、
日本電気、日立製作所の事例にあたりました。海外の事例はシーメンスになっています。事業の実現にはシステム開発が欠かせない領域なので、経営的なレポートはもとよりシステム開発方法論も参照しながらどのような長所・短所があるのかを分析しました。

  1. NTTデータ (n.d.)「TERASOLUNA 開発手順・フレームワーク・開発支援ツールを一体化」『NTTデータ』 https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/terasoluna/ (2021年12月10日確認).

  2. NECソリューションイノベータ (2021)「アジャイル開発 ~顧客を巻き込みチーム一丸となってプロジェクトを推進する~ (前編)」『NECソリューションイノベータ』 https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/column/01_agile.html (2021年12月10日確認).

  3. Zsolt (2020) RITE Method: Comprehensive guide for Rapid Iterative Testing and Evaluation. PingPong, https://www.hellopingpong.com/blog/rite (2021年12月10日確認).

  4. アイティメディア営業企画, MONOist編集部 (2020)「自らの経験・知見を活かした“ものづくりサービスカンパニー”へ」『MONOist』https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2007/13/news007.html (2021年12月10日確認).

  5. 安藤正芳 (2018)「アジャイル開発で成果出す、浮かび上がった3つの現実解」『日経クロステック』 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00298/052100002/ (2021年12月10日確認).

  6. 大石利行 (2004)「顧客の永続的な成長と繁栄に貢献するITソリューション」『東芝レビュー』Vol.59 No.6(2004), pp.2-6.

  7. 鈴木慶太 (2021)「アジャイルの全社展開を急ぐ変革リーダー、レガシーと『経路依存性』を課題視」『日経クロステック』https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01815/101800003/ (2021年12月10日確認).

  8. 沖電気 (2001)「社史『進取の精神 沖電気120年のあゆみ』」『沖電気』 https://www.oki.com/jp/profile/history/120y.html (2021年12月10日確認).

  9. 長沢伸也・木野龍太郎(2001)「自動車企業におけるプロダクト・マネジャーの役割と知識に関する実証研究―日産自動車の事例―」『立命館経営学』40(3), pp.1-22.

  10. 日本電気 (2021a)「SystemDirector Enterprise」『NEC』https://jpn.nec.com/SystemDirectorEnterprise/index.html (2021年12月10日確認).

  11. 日本電気 (2021b)「パートナー様との共創に向けて」『NEC』https://jpn.nec.com/hci/partner/index.html (2021年12月10日確認).

  12. 日立製作所 (2021)「Lumadaとは」『日立』 https://www.hitachi.co.jp/products/it/lumada/about/index.html (2021年12月10日確認).

  13. 深尾幸生 (2020)「シーメンスの7~9月、純利益33%増 デジタル化事業堅調」『日本経済新聞』2020年11月12日号 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66150330S0A111C2916M00/ (2021年12月10日確認).

  14. 三浦康・青山和之・佃軍治・井上博巳 (1999)「インテグレーション指向のシステム開発方法論」『日立評論』 Vol.81 No.8(1999-8), pp.45-48.

6. まとめ

ここまで[文献A] イノベーション論、[文献B] プロダクト/サービス企画開発方法、[文献C] 国内外IT市場の動向、[文献D] 国内外IT各社の事例の4分野にわたって、私の修士論文の参考文献とそれを使って示したことをまとめてきました。修士論文はもちろんこれで終わりではありません。ここまでは主に先行研究で、このあと独自のインタビューとその分析を交えて、どのように事業創造の課題を克服したら良いかの提言までまとめています。

このあたりまで含めた私の修士論文の本編を共有していないのでややわかりにくい点があるかもしれませんが「こういうことを調べたい・言いたいときにはこういう情報ソースに触れればいいんだ」というのがある程度示せたように思います。関連するお仕事をされているみなさま、MBA受験生・学生のみなさまのお役に立てたらうれしいです。

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参考文献
本文内に示したため割愛

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