712
なんとなく言葉で表現できないけれど、これってもしかして自分にしか理解できないじゃないか(と思い込んでいる)ような、個人的な感覚はないだろうか。
ちょっとおかしな人だと思われないよう、あえて周りには伝えていないだけで、皆が何かひとつくらいはそういう感覚を持っているに違いないと私は見ている。
たぶん子どもの頃はそんなのばかりだった気がするのだが、世間の大多数の人間は違うらしい。あるいは、忘れているだけか。子どもに戻ったら、絶対に思い出すのに。それはもう、不可能だけど。
ふとした瞬間や、なにか特定の事象をトリガーにして、「これっていつものあれなんじゃないかな」っていうのがある。もし、そういうのがあったら、それは是非自分の中でその感覚を無理に押さえ込んで消さないで持っておくべきなんだと思う。
私の場合でいえば、突発的に冷たくて凍える寂しい山の上にポツンと一人取り残されてしまったような寂寥感に近いような感覚を時たま覚えることがある。もちろん、理由は不明。誰かといようが、一人でいようが、家や学校にいようが、仕事をしていようが、タイミングなどは特に関係ない。
だから、「どうせこんな楽しい時間を過ごしても、いつかは山の上でわたし一人でいなきゃいけないんだからな」と思うような、難儀な性格になってしまった。
前世で、山で一人取り残されて親に捨てられたか、はたまた自分の子供に姥捨山に捨てられたか。なんて理不尽な感覚なんだろうと思うけど、ここまでくると、もう変に諦めがついている。「結局、最終的には私はお山に行くんだもん」と。
酒飲んで酔っ払って、当時同じ大学のサークルの単なる飲み仲間だった今の私の夫に、そういう誰にも理解されないような感覚的あるよねって言ったら、夫も「実は俺も…」とのたまう。
「なんか、何回もおんなじ人生繰り返してるっていうか、これって何回目だ?って思う感覚ってのがあって。デジャヴとか、既視感っていうビジョンとみたいに、ハッキリしてんじゃなくて、俺またおんなじこと繰り返してないか、これ?っていうモヤモヤ感っていうか…。うまく伝えられない」
なんとなく、夫の言わんとすることを汲み取った私は、共感ではないけれど、どうやら私たちは似たもの同士なんだろうということになった。そのままの流れで、付き合って就職後まもなく同棲して結婚した。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?