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深海に棲みたいなあ。
ダイオウグソクムシ的な図体をして、日々のっそりと生きていたい。昼も夜も時間も天気の変化もない。
天敵もいなければ、家族も友人も同僚も上司もいない。音ひとつしない静謐な闇の中で、上から落ちてきた食糧のようなものをモゾモゾと動いて食べる。
大体おんなじようなことをしている同類がいたとしても、そもそも暗くてよく見えないから特に距離感だとか気にしなくていいし。
たまに出くわしてしまっても、自分と相手との違いも気にしなくて良い。そもそも自分以外の存在に興味を抱く必要もない。深海にSNSや Twitterがあってたとしても、呟くことがまずない。
いや、それは少し言い過ぎか。「今日はちょっと水温高めかな」「さっき、リュウグウノツカイとすれ違った。マジ綺麗」くらいかな?深海で呟くことを探すことの方が大変なんじゃないか?
たぶん、何のために生きているとか、自分の人生に何の意味があるのかとか、考えなくて良いに違いない。なんてったって、深海だから。私、ダイオウグソクムシ的な存在だから。深海でものを考えることは無意味。