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1306_ひとり遊び

夢中になって、ひとり遊びをしている子どもは何も手に入れてないのに、すごく幸せだ。自分の目の前のことだけしか見えていないのに、間違いなく多幸感と充足感のなかにある。いや、目の前のことしか見えていないからこそ、幸せなのであるに違いない。

夢中になって、クレヨンで床いっぱいに盛大に自分の大好きな動物だったりロボットだったりを描いてみて、親から怒られることはあるかもしれないが、他の子どもとその絵の上手さを競ったり比べたりはしないだろう。床いっぱいに描けたその絵を見ながら、満足そうな笑顔を浮かべるに違いない。

その子は他の子どもに嫉妬もしないし、自分のものと比べて落ち込んだなんかしない。そんなことをしているのは、少し成長して歳を取って、周りの目を気にするようになる思春期に手が届くくらいの年齢だ。

そうなると、必死になって自分にはない何かを手に入れたり、自分ではない何者かになろうとしたりする。かって自分の足元に描かれた床いっぱいの絵なんかに目もくれずに。

子どもと同じことを大人がしてみようとしても、途端に引け目を感じたり、躊躇したりする。子どもじゃないんだからと言い訳したりして。それもこれも、これまで自分が得てきたものやこれが自分だと信じていたものが妨げになっているに違いない。

でも本当に必要なことはそれだけなのに。床いっぱいにクレモンでお気に入りの絵を描くっていう、シンプルにただそれだけなのに。大人になると、できなくなる不思議。

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