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895_Sampha「Lahai」

そういえば、最初は大好きな音楽のことを書こうと思って、noteをはじめたので、(最近は本当にただの雑記か日記になりつつあるが)、たまにはお気に入りの音楽のことに触れようと思う。

Samphaの2ndアルバムの「Lahai」が本日10月20日に、発売された。サブスクだから正確には配信開始、リリースか。もちろん今もApple musicで聴きながら、これを書いている。

僕も、これは待ちに待っていた。仕事をしていて卓上カレンダーに今日に◯つけているのを見て、今日はそうだ、Samphaのアルバムが出るんだったと思い出した。そして、昼休みにワクワクしながら早速聴いてみる。

なにしろ前作のデビューアルバム「Process」から、6年ぶりなのだ。6年あったら、思い出いっぱいの小学校時代が終わってしまう。新人アーティストがデビューアルバムから6年も間を空けたら、普通は世間から忘れられるかもって、不安にならないだろうか?と思うくらいだけど、そんな心配する必要もない、完全に取り越し苦労だったようだ。

たぶん、これだけ期間が空いたのも、これまでSampha自体もじっくりと腰を据えて活動してきた証左なのかもしれない。新作を首を長くして待っていた自分とすれば、「もうちょっとこまめに曲出してくれても」って感じだけど。だが、いち音楽ファンなんてそんなものだ。

むしろ、好きなアーティストが曲を出してくれるってこと自体を純粋に喜ばなければならない。我が世の春だった時のNumber Girl もスーパーカーもあっけなく解散(再解散)して、終いにはrei harakamiもnujabesも最近は教授も、漏れなく天国に行ってしまって、永遠に彼らの新曲を僕は聴く事ができない。だが、今はAphex Twinだってちゃんとサブスクで曲を出してくれるんだ。ただただ待っていればいいのだから、感謝しなければならない。

でも。もしかすると、今後は「(生きていれば、出ていたであろう)〇〇の新曲を聞かせてくれ」とAIにオーダーするという未来もあるのかもしれない。それはそれでいかにも〇〇らしいツボを押さえた気の利いた曲をAIが聴かせてくれるのだろうけど、申し訳ないが、それでは過去の憧憬の中に生きているのと同じだ。決してAIに自慰の手伝いをしてもらいたいわけじゃなくて、僕たちはアーティストと共にこの混沌とした「今」を生きているのだから、彼らの「今」の曲が聴きたいんだと思うのだ。

だがそう、話を戻すと、今は目の前のSamphaだ。先行したニュー・シングル「Spirit 2.0 」もなんのアレも前兆だとかもなく、突如としてリリースされて、もちろんとても良かったので、ついにアルバム来るか、と大きく期待していたのだ。案の定、一聴して安定してとても良い感じなので、満足している。これから聴き込もうと思っているけど、完全にサブスク時代になって、ああなんかこういう感覚も久しぶりだなあと思ってしまった。

まさに「スピリット」のように実体のなく、透明でフワフワとした浮遊感と、新たな時代を迎えてまっさらな状態になった新鮮さと祝祭感で構成された14曲41分。曲が短い分、すぐに1周してリピートしてしまって、それが終わりない永劫回帰のようだ。

余談だが、同じく日本のyayhelの春頃に出た新作「Cult」も、自分としては待ちに待っていた彼らの新作だったのだけれど、なんとなく少し思っていたのと違ってしまっていた。しばらく会っていなかった元カノのファッションとか口癖が変わってしまっていたようなそんなよそよそしさがあった。

コロナを経て、確実にアーティストの創作の方向性に影響が出ていたには違いない。一体、どんな心境の変化があったかは知れない。だけど、アーティストの作品は彼らの「生きた証」そのものだ。いくらでも変わりうるし、変わらない事だって同じくらいある。それは全く、僕らの生き方と同じように。

6年前に前作「Process」収録の「Blood on me」という曲のPVを、仕事でクタクタになってタクシー帰りのズタボロの心境で深夜のMTVで見た。その時、なんとも言えないフワッとしているけど足元からゾワっとくる感覚を覚えて、強烈に印象に残って。まるで「魂の違和感」のような生きることへの居心地の悪さ、不穏さと不気味さと神秘性みたいなものが同居していることに畏怖のようなものを感じた。

これはすごいなと思ってアルバムを買って、(当時はiTunes storeでダウンロードしたんだった)、昼休みに休憩室で瞑想しながら聴いていた。このアルバムでは、全体として大きな悲しみや喪失感とそこからの回復を謳っているようなそんな気がしていた。

Samphaは魂の捉え方、精神性などについて深淵な心象風景を抱いているようだ。過去にこの曲をテーマにインスパイアしたショートショートをひとつ書いたので、興味のある人はそちらも読んでほしい。

たまにはこういうのもいいかな。

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