意外と知らない人が多い、電子書籍の現状
みなさん、こんにちは。
私は出版社・現代書林企画部のHです。よろしくお願いします。
スマートフォンやタブレット端末の普及、雑誌販売におけるサブスクサービスの導入などによって、日本人の読書形態も変化しつつあります。
皆様のまわりでも「Amazonのkindleで著作を出版した」とか、「紙の雑誌は買わずに、サブスクで読んでいる」という方もいらっしゃると思います。
それでは、電子書籍は「どのような本が、どのような読者に読まれているのでしょうか?」
●売れている電子書籍のほとんどがマンガ
出版科学研究所の調査によると、2021年の電子書籍の売上は4,662億円(前年比18.6%増)で、出版市場全体の27.8%の市場規模を占めています。
また電子書籍の売上の内訳は、マンガ4,114億円(前年比20.3%増)、書籍449億円(同12.0%増)、雑誌99億円(同10.1%減)です。
電子書籍市場において、マンガの占有率は88.2%にも上り、「売れている電子書籍のほとんどがマンガ」といっても過言ではない状況です。
●電子書籍は無料のものが読まれている
スマホ情報サイト「Appliv TOPICS」の調査では、興味深い結果が出ています。
これは15歳以上の男女1,320人に対して行われたアンケートです。
利用している電子書籍サービスを見ていくと、「kindle」「LINEマンガ」「楽天kobo」「ビッコマ」「めちゃコミック」「少年ジャンプ+」「マンガBANG!」「ebookjapan」「コミックシーモア」「comico」「まんが王国」……etcとマンガアプリがズラッと並びます。
加えて、1か月で電子書籍に使う金額は0円が39.8%。1,000円未満が30.0%。大半が電子書籍にお金を使っていないのです。
●電子書籍の読者層は30代以下
次に、電子書籍の読者層について見ていきましょう。
楽天グループが20代~60代の男女10,050人に行ったアンケートによると、「20代~30代は紙と電子の両方を利用する」が全体の半数以上を占めています。
40代以上になると、「紙の本のみ」が「両方を利用する」を超え、60代では70.7%が「紙の本のみ」と回答するなど、年代で利用傾向に違いが出ています。
紙の本や雑誌で育った世代とそうでない世代で、差が出ているのでしょう。
●実用書、ビジネス書では紙の本が優位!?
電子書籍の市場は長い目で見れば、紙の本に取って代わる存在です。
ただ今後10年ぐらいのスパンで考えれば、実用書、ビジネス書の分野では、紙の本の優位は続くと思います。
5年ほど前から、弊社にも「電子書籍での展開はどうか?」という問い合わせが増えてきています。
電子書籍はコスト面で紙の本より割安ですが、読書形態や読者層を考慮すると、ビジネスのブランディングやマーケティングの手段としては、現状では紙の本の出版のほうがメリットが大きいと考えます。
現代書林企画部 H