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バイオ・ゴリラ・コップ

ーーとある国では犯罪数と人口が反比例し警察は猫の手も借りたい状態であった。ならば借りよう。しかし猫では無くゴリラの手をーー

ゴリラの圧倒的パワーならばどんな凶悪犯も容易く蹂躙できる。それにゴリラは優しい。正義のヒーローにゴリラはうってつけなのだ。しかしこの画期的な政策を実装するには課題が山積みであった。まず法律等の人間社会のルールを覚えさせなければいけない。他にもゴリラのマッチョボディにピッタリ合う制服のサイズの制作も大事だ。なんとか安定した制服の支給ルートは整った。GORILLAの頭文字をとってGサイズが発表され服だけでなく様々な大きさにS.M.L.Gという表記が瞬く間に広まっていったのだ。だがゴリラを立派な警察官に育てるには中々骨が折れる。あとシンプルにバナナ代が馬鹿にならない。万事休すか…そう思われたが1人の科学者が待ったをかけた。その科学者は…とりあえずはK博士と呼ぼう。彼は凡人には想像も出来ない発想で様々な研究を行っていた。時には道徳的、人道的にタブーを犯し投獄もされたがそれでも決して研究の手を止める事は無かった。そんな彼が出した案は『バイオ・ゴリラ』であった。バイオ・ゴリラを簡単に説明すると人工的に改良されたゴリラである。そこに法律や道徳心をインプットし勿論ゴリラパワーも兼ね揃えた最強の警察官『バイオ・ゴリラ・コップ』が完成したのだ。

バイオ・ゴリラ・コップの活躍は目を見張るものであった。犯罪率は減少し、余裕が出来た人々は愛を深め合い少子化問題も解決。筋肉は全てを解決すると筋トレがブームになり、筋肉フェチは大歓喜。正にいい事尽くめである。しかしバイオ・ゴリラ・コップは辟易していた。人間が持つべきとされる道徳心と実際の社会のルールの矛盾点に疑問を持っていた。そしてある日事件は起きた

1人の銀行強盗を取り押さえ普段通り任務を遂行するバイオ・ゴリラ・コップであったがその強盗は身の上を話し懇願した。妻が妊娠した。しかし金が無く病院に連れて行けないし、十分な栄養も与えれない。このままでは無事産めないかもしれない。その強盗の目は愛する者を守る為に行動した目をしていた。バイオ・ゴリラ・コップはその強盗を見逃したのだ。だがこの行動に市民は声を荒らげた。警察も厳重に今回の件を受け止め、なんとバイオ・ゴリラ・コップの殺処分を決定した。バイオ・ゴリラ・コップは後悔していなかった。最後の面会にバイオ・ゴリラ・コップの産みの親K博士が苦虫を噛み潰したような顔で人間社会の欠陥を吐露した。表面上は綺麗事を述べるが独善的で、明確にされていないライン上でただ貼り付けただけの正義感には反吐がでると。K博士もこの矛盾の被害者だったのだ。K博士とバイオ・ゴリラ・コップはある復讐を思い付いた。それは正にこの歪な現代社会を象徴する、しかし誰も傷付けない小さな復讐だ。これを読んでる諸君もきっと経験した事があると思う。そうワサビチューブやマヨネーズの最初に剥がすあの銀テープ。あれを発明し世界中にバラ蒔いたのだ。もしあの銀テープのトラップに引っ掛かり、キャップを外しテープを剥がす時には思い出して欲しい。                   醜い人間に振り回せれても、最後まで誰も傷付けなかった心優しき悲しい正義のヒーローを



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