漫画の賞って
先日youtubeである動画を見ていて思ったこと…
その動画はあるユーチューバーが怪しいと思った企業に実際に行って撮影した物だったのだけれど…
https://www.youtube.com/watch?v=SMH8pjML8Lo
この動画が公開に至った経緯が特殊で、
まずそのユーチューバーが、怪しい、詐欺的なものではないかと感じた企業「A」について独自に紹介した動画があったらしいのだが、
その動画について当該企業からユーチューバーに、
「法的措置に出るぞ」と弁護士の名で手紙が来て、
訴えられたくなかったら
①動画の削除
②社に出向いて会社監修のもと改めて紹介する動画を取り直すこと
というなかなかエキセントリックな条件を提示。
そこでユーチューバーは先の動画を削除し、
今回私が観た動画の撮影の為、企業「A」へ行ったのだった。
確かに「怪しい」と動画を出したチャンネルで
「怪しくないよ、誤解だよ」という動画を出せば、
先の動画を見た人に一番ちゃんと届くだろうし、
件のユーチューバーはかなり多くの登録者数を有しているので
良く言ってもらえれば宣伝効果もありそうである。
しかもタダで。なかなか考えたな。
またユーチューバー側もこんな謎経緯で撮られた動画、
しかも「怪しいのでは」と言っていた企業に
実際に潜入し内部を公開できるとあれば
再生数も伸びるであろう。
WIN-WINで素晴らしい。
で、その企業がどんなことをやっているのかというと、
なんかイラストクリエイターの養成?や
マーケティング等についての講習等を行っているみたい。
へえ。
あくまで個人的な感想だが、動画を見た感じ、
もちろん実態はわからないんだけど、
何百万稼ぎました、みたいな受講生のインタビューとかが
正直ちょっと胡散臭く感じた。
まあそれはいいんだけど、
個人的に気になったのは、
社の代表?が実際の講習の場で話している
講師について説明するシーンだ。
「彼は元漫画家で、あの『クレヨンしんちゃん』の双葉社の賞や、『ちばてつや賞』などの受賞歴がある」みたいな。
漫画好きなら知ってる人も多いと思うのだけど、
『ちばてつや賞』は基本的にはアマチュアが応募する「新人賞」だ。
詳しくは知らないが双葉社の賞というのも新人賞だろう。
なんか重箱の隅をつつくようだけれど、
業界では新人賞を取っただけの人は
基本的に「漫画家」とは呼ばないと思う。
これは誇大広告…というのか、優良誤認というのか…。
実は私は以前にも似たような表現が使われているのを見たことがある。
これは詐欺とか胡散臭いものではなかったのだが、
「作者は講談社主催『四季賞』を受賞しており、
漫画家としての実力も十分」的な。
『四季賞』も新人賞だ。
他にも『手塚賞』とか『赤塚賞』とか、巨匠の名を冠した新人賞は有名であるし、多くの出版社や、各漫画雑誌ごとにも新人賞は設けられている。
そう考えると漫画の「○○賞」は結構膨大にあるな。
これを知らない人なら「漫画の賞を取るってことは高名なプロなのかな」と誤認させることができるのかもしれないし、意外とそういう手法が使われることってあるのかも、と思った。
もちろん『講談社漫画賞』とか『小学館漫画賞』とか、
実際にプロの作品から選ばれる賞もある。
この辺が漫画に触れない人からするとややこしいんだろうな…。
まあそもそもプロってどこから論もあるし。
私は少し前にあしたのジョーを読んでから、
少しずつではあるけどちば先生の漫画を読んでいるが、
(ブログも見てる。
ちば先生のブログにイイねするためだけにアメブロのアカウントも作ったのだ)
エッセイの中でちば先生はいつも新人賞の審査をしている。
ちばてつや賞は1980年に創設された、
日本で最も歴史のある漫画賞で、年二回の開催がある。
だからちば先生は、
最近のエッセイでも、昔の半自伝漫画でも、自分の連載をしながら
いつも無い時間を捻出していくつもの新人の漫画を読んで審査している。
そもそも新人賞の審査というのは基本的に作家に直接的なメリットは無い。(たぶん)
ただ新人発掘のため、漫画界、漫画文化の発展のため、
高名な作家たちが自分の制作の時間を削って、
素人の漫画を読んでるんだと思う。
とくにちば先生は新人の漫画をよく読みこんでくださることで有名だ。
過去には授賞式のパーティがあって、受賞者に漫画の良かったところや悪かったところを直に話してくださるという話も聞いたことがある。
きっと件の動画に出ていた講師が、
ちばてつや賞を受賞したことは本当なのだろう。
実際その企業がどのような実態を持つのかはわからない。
が、もし、あくまで仮にだけど、
詐欺的な、グレーな、何か良からぬことがあるのだとしたら、
それにちば先生の名前が使われているのは見たくない。
勝手にエラソーなことを言うと、
ちば先生があなたの才能と頑張りに対してくれた賞を
そんな形で使わないでほしい。
与しないでほしいな、と思った。
まぁ、世知辛い世の中だけどさ。
賞といえば、
ちばてつや先生が漫画家として初めて
文化勲章を受章したというニュースは記憶に新しい。
私はその時、過去の受賞者をざっと調べてみた。
特に覚えているのは、初代受賞者のひとりが横山大観だったこと。
ちば先生は「(漫画が)文化として認められて、手塚先生が一番喜んでいると思う」と話されていた。
ちば先生の作品たちや、長きにわたる新人賞などの
漫画文化への多大な貢献のみならず、
これまでに偉大な先人たちや現代の作家達の積み重ねがあったのだということを感じさせる言葉だと思った。