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開発と設計の役割と責任|トヨタ流開発ノウハウ 第31回


◆それぞれの役割と責任


皆さんは、開発と設計のそれぞれの役割と責任や移行のタイミングなどに悩んでいることはありませんでしょうか?

実はこの2つの機能組織部門の境目を設定するのは、非常に難しく、いつまで経っても開発部門から設計部門に業務が移管できない、また、設計部門がいつまで経っても案件に着手できないなどの問題が発生しているのではないでしょうか。

製造業であれば、必ずこの問題が発生していて、開発者、設計者が業務の進め方や連携について、悩んでいるのです。

この問題を解決するためには、各企業にて移管における明確な基準を設定することが必要ですし、その基準も製品群やユニットによって異なるでしょう。
また、その基準や移管業務の全体をコントロールする≒マネジメントする必要もあります。
 
それでは、まずは開発部門と設計部門の役割と責任から考えていきましょう。

◆開発部門と設計部門の役割と責任


このように、開発部門(先行開発と呼ぶ場合もあります)は、要素技術を製品へ落とし込み、目標とする機能や性能を確実に実現していきます。
ただし、この場合に注意しなければならないのは、開発部門は、市場で使われる全ての条件下で機能や性能の実現を確認できるわけではありません。

全ての条件下での成立を検討すると開発のリードタイムはどんどん伸びていきますし、開発部門の設計者の多くは、詳細な使用環境などを調査できているわけではありません。

この部分がポイントです。

開発部門が目標とする機能や性能を成立させている条件がどこまでとするのかを設定しておかなければなりません。
ここの条件だしを明確にせず、開発をスタートしてしまうと、いざ設計部門(量産設計部門と呼ぶ場合もあります)に移管しようとすると、大きな反発が発生してしまうでしょう。

設計部門は、リードタイムを効力するとできるだけリスクが少ない状態で、移管されたいわけです。
そのため、少しでもリスクがあると、「このような状態では量産が成立しない!」と声をあげてしまうわけです。

そのような状態だと、いつまで経っても設計内容を移管することができず、開発の担当者は、手離れが非常に悪くなり、量産設計部分まで検討をしなければならなくなります。
開発スタートのタイミングで、どのような条件で目標とする機能や性能が成立すれば、設計部門に移管していいかを明確に決めなければなりません。

◆設計部門の役割と責任


設計部門は、設計開発業務の中で言うと、最後の砦です。
開発部門では1つの試作品で、目標とする機能や性能の実現を検討しますが、設計部門では量産される全ての製品で、目標とする機能や性能を実現しなければなりません。

そのため、部品のバラツキも見極めなければなりませんし、使用環境違いでの製品におかれる状況も正しく調査した上で、お客様に満足してもらえる製品を設計しなければならないのです。
このようなさまざまな条件などの考慮し、設計をしていかなければならないので、開発から製品を移管されるタイミングで、どのようなリスクがあるかをしっかりと明確にしておかなければならないのです。

よって、設計部門が製品を移管されるタイミングで、注意しなければならないのは、量産でのリスクが全て洗い出されており、対策の方向性が決まっているかです。

◆開発から設計への製品移管基準内容

先ほど述べた内容を少し整理していきたいと思います。

このような内容を開発部門と設計部門で設定し、スムーズに製品開発が移管できるようにしておきましょう。
 
皆さん、いかがでしょうか?

要素技術を製品へ組み込み、新しい製品を市場へ創出すること(まさにイノベーション)も重要ですし、製品を量産化し、誰でもどのような環境下で使用しても、満足したアウトプットが出せる製品を創出することも重要です。

どちらの部門が強い、弱いはありません!!

同等の立場で、それぞれの役割と責任が異なるだけで、市場にイノベーションを起こした製品を創出するという大きなベクトルは同じなのです。

その目的を見失わないようお互いの部門がうまく連携していけるよう仕組みを構築していきましょう。


講師プロフィール

 株式会社A&Mコンサルト
代表取締役社長 | 中山 聡史

2003年、関西大学 機械システム工学科卒、トヨタ自動車においてエンジン設計、開発、品質管理、環境対応業務等に従事。ほぼ全てのエンジンシステムに関わり、海外でのエンジン走行テストも経験。
2011年、株式会社A&Mコンサルトに入社。製造業を中心に自動車メーカーの問題解決の考え方を指導。
2015年、同社取締役に就任
2024年4月、代表取締役社長に就任

主なコンサルティングテーマ
設計業務改善/生産管理・製造仕組改善/品質改善/売上拡大活動/財務・資金繰り

主なセミナーテーマ
トヨタ流改善研修/トヨタ流未然防止活動研修/開発リードタイム短縮の為の設計、製造改善など
※2024年6月現在の情報です

近著


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