
ZiDol新曲maddy muddyをジキルとハイドの線で考察してみる
ZiDolとは私のだいすきな最高おもしろい楽しいかっこいいアイドルグループで、maddy muddyとは6/21に配信された新曲のことなのですが。
6/16のZiDolワンマンライブのアーカイブ配信にて初めてmaddy muddyのパフォーマンスを拝見した時に感じたのが「フランケンシュタインっぽい」「カリガリ博士っぽい」。もうひとつ、「アレっぽいな…アレっぽいけど、喉まで出かけてるのに何っぽいと感じたんだかたどり着けない」と思いながら過ごしていて、数日後maddy muddyを無限リピートしながら仕事している最中に突然降りてきた。
あっ、「ジキルとハイドっぽい」だ!
なんで自分がそう感じたのかはその時点では直感的なものでしかなくて言語化できていなかったのだけど、そこにたどり着いた時にふと「あれ?たしか……」と思い調べてみたら、ハッとしました。
ジキル博士の綴り、Dr Jekyllだ!!!!“J”じゃん!!!!!!
maddy muddy未聴の方のために(未聴なのにこれ読んでる人がいるのかはわかんないけど笑)、歌詞置いときます。
ほとばし流れるアングラの音で踊り出せ
チクタクmaddy J
理不尽蔓延るモノクロの街と共に舞え
チクタクmuddy J
甘くてあざとい果実なって
不気味でとろける蜜となって
儚く消えゆく夢幻なJ
探しだす お前はどこだ
oh LOVE to maddy muddy J
oh like a leap day 濡れた夜 愛に飢え
oh LOVE to maddy muddy J
oh like a leap day 霞む鼓動 狂いそうで
ノルカソルカ 息を止めて
泥にまみれて針を止めて
ポルカソルカ 愛にまぎれて
oh LOVE to maddy muddy J
oh like a leap day
欲望の赴くまま oh rough
(ノルカソルカ 息を止めて
泥にまみれて針を止めて
ポルカソルカ 愛にまぎれて)
ノルカソルカ 息を止めて
泥にまみれて針を止めて
ポルカソルカ 愛にまぎれて
甘くてあざとい華になって
不気味でとろける泡となって
儚く消えゆく無敵なJ
探しだす お前は誰だ
oh LOVE to maddy muddy J
oh like a leap day 濡れた夜 愛に飢え
oh LOVE to maddy muddy J
oh like a leap day 霞む鼓動 狂いそうで
ノルカソルカ 息を止めて
泥にまみれて針を止めて
ポルカソルカ 愛に悶えて
oh LOVE to maddy muddy J
oh like a leap day 欲望の赴くまま
oh love
LOVE toということは“J”は誰か人のイニシャルであることは予想できるので、ジキルの綴りがJekyllというところで私の中で「maddy muddy、ジキルとハイドモチーフ説」が浮上しました。
ジキルとハイドのことを書いてる!ではなくモチーフなのでは?というだけで、そういう線の考察したら楽しいかな~と思っての深読みやこじつけ、突拍子もない部分もありますので、こういう考察もアリかなーくらいでご容赦していただけると嬉しいです!
『ジキルとハイド』は高校の頃夏休みに英文和訳の課題が出た時以来だったのだけど(そして今思えばあれは課題用に簡単にそして短く書き換えられたものだったわけだけど)、考察するにあたって、単語の使い方の比較とかしたいな~と思って日本語版(佐々木直次郎氏訳版)と原著を並べて同時に読み直してみました。本文に出てくる単語やら表現をヒントに書いたり、メロディーやらワンマンライブ時の演出やらから得た自分のイメージをごちゃまぜで書いていきたい。
あらすじもざっと書いておきますが、青空文庫で無料で見つかる上、短編でさくっと読めますので、お時間ある方は是非そちらで。
あらすじ
舞台は19世紀のロンドン、弁護士のUttersonは顧客であり旧友でもあるJekyll博士から「自分の有事の際には友人にして恩人であるHydeに一切の所有財産が渡るように」と書き記された遺言書を預かる。Hydeという男は醜悪な事件を起こしていることで知られており、そんな男を高名な紳士であるJekyll博士が恩人と言うことに、何か弱点を握られ恐喝でもされているのではと事件性を案じたUttersonは、Hydeのことを調べ追跡することに。
ある日、Jekyll博士の召使が「Jekyll博士が書斎に閉じこもってしまい一週間になる。しかし、書斎の中から聞こえる声や足音が自分の長年仕えてきた主人のものだとは到底思えない。もしやJekyll博士はすでに殺されており、その犯人が博士に成り代わって中にいるのではないか。」と助けを求めてUttersonを訪ねてくる。閉じこもっているその人を訪ねるも当然中に入れてはくれず、とうとうUttersonと召使は斧で鍵を打ち砕き、強行突破をすることに。中に押し入った二人が目にしたのは、部屋の真ん中で割れた薬瓶を片手に横たわり息絶えたHydeの姿だった。
書斎の事務机にはJekyll博士の筆跡でUtterson宛に書かれた封書が置かれている。中に入ったJekyll博士の手記には、「Hydeというのは自分が発明した薬剤によって姿を変えた自分自身であり、度々服薬しては人道に悖る悪行を繰り返すことで自分の中の凶悪な欲望を満たしていた」ということが書かれていた。次第に悪に対する制御ができなくなり、またHydeからJekyllに戻る薬もききめを失い始め、とうとう薬を飲んでもいないのにHydeに変貌してしまうまでになった。書斎にこもり薬剤の再調合を試みるも失敗に終わり、最後にはJekyllの姿に戻れないまま服毒による自死を選んだのだった。
maddy muddy考察
前奏:
チクタクという時計の針から始まり、続いて入ってくる四つ打ちの音は早歩きの足踏みのようで、闇夜に時計台のある街の石畳を早歩きで歩いていく人影が頭に浮かんだ。ジキルとハイドの舞台はロンドンなので、ビッグベンだとしたらしっくりくるかもしれない。
maddy J:
mad/madness/madman/という単語は本文中何度も出てくる。はじめはmadなのはハイドだからmaddy Jというのはおかしい?とも思ったが、読了後に考え直すとハイドはジキルの中の悪の部分だけを切り離してできた存在であって、人格がスイッチするわけではなくあくまで同一人物が姿を薬で変えているだけなわけで、悪事を働いてもジキルとしての名に傷がつかないということにより自制心がきかなくなって自分の欲望に忠実に動いているだけなので、madなのはジキルであるということで間違っていないなと思い直した。
理不尽蔓延るモノクロの街と共に舞え:
モノクロの街と聞いてぱっと思いついたのはどんよりした曇天、煤。ロンドンと言えば天気の悪さが有名だし、作品が書かれた1886年当時、鉄道発祥の国イギリスでは蒸気機関車がそこらじゅうを走って煤だらけだったのではないか。
もしくは心情的にモノトーンで退屈・鬱屈した感じとも取れる。自分の中に湧き上がる欲求を抑圧して過ごしていたジキルの心理的描写かも。
muddy J:
本文中には「泥」という単語は街の描写で一度出てくるのみで、ジキル自身を形容する描写では出てこない。
むしろ、歌詞に出てくるmuddy「泥だらけ」は、もしかすると慣用句「顔に泥を塗る」の方の意味なのかもしれない。ジキルは善人である自分という完璧な理想を追及するあまり自分の中の悪の部分を隠そうとし、ついには薬でハイドという存在として完全に切り離してしまう。彼の中で恥ずべきものだと思っているのは悪事それ自体というよりもむしろ、それによって社会的地位のある紳士として知られるジキルの名に傷がつくことだったのだろう。事実、本文中にも言葉を換えて「体面にかかわる」「恥辱や悔悟にさらされる」ということを病的なほどに気にしているところが描かれている。
甘くてあざとい果実なって不気味でとろける蜜となって:
「果実」「蜜」という単語からは背徳感を伴った欲望に対する愉悦が起想される。アダムとイヴが楽園を追放された原因となった禁忌の果実からくるイメージかも?
儚く消えゆく夢幻なJ:
ハイドとしての人格が主導権を握り始め、不安定で消えていきそうになるジキルとしての人格を指している?
探しだす お前はどこだ:
「探しだす」ということは、Utterson目線の歌詞なのかも。
あとここ、歌詞が公式発表される前「J」と「探し」がリンキングして「チェイス」って言ってるのかと思ってて、追跡してるから「お前はどこだ」なんだな~って解釈してた。いや、やっぱり聞こえません?もしかしてそういう意図?
oh LOVE to maddy muddy J:
loveという単語は本文中には自己愛や生に対しての愛・執着というような意味合いでしか出てこない。UttersonとJekyllの間の愛情というのは出てくることはあるけど、affectionという単語で記されている。ただはじめにも書いた通り、ジキルとハイドのことを書いてるというよりはジキルとハイドモチーフなのかな?ってだけなので、ジキルが自分の欲望を抑えきれなくなって狂ってしまったことになぞらえて、自分が愛しい人に対してcrazy for youになってることを伝える歌詞なのかもなと。
oh like a leap day:
leap dayは閏日のこと。たまにしかやって来ないイレギュラーな、でも定期的に必ず現れる存在ってことかな?って思ったけど、leap dayで念のため調べたら「閏日とは、太陽暦では季節と暦のずれとを、太陰暦では朔望月とのずれを補正する暦日のことである。」って出てきた。
「ずれを補正するための存在」か〜。ジキルが完全なる善人という理想を追い求めるばかりに自分の中に存在するちょっとした悪の部分を受け入れられなくて、隠そう隠そうと抑圧する間にその部分が増幅してしまい、とうとうその理想と現実の溝が取り返しのつかないくらい深いものになった時にそれを埋めるために生み出されたのがハイドという意味では、ずれを調整するための存在だったと言えるのかも。
濡れた夜 愛に飢え/霞む鼓動 狂いそうで:
ここもLOVE to maddy muddy Jパートと同じ見解です。
ノルカソルカ:
語源は矢作りに由来するものだと思ってたのだけど、
諸説あるようで、調べているとインドネシア語のnereka(地獄)とsurga(天国)から来ているという説が出てきた。
インドネシア語のnerekaは字面からもわかるようにサンスクリット語नरकから転訛した語で、つまり日本語の奈落とも同語源なので、あり得なくはない面白い説だな~と思いました。
ジキルとハイドの本文中でも「地獄」「天使」「悪魔」「サタン」というような宗教的思想が根底にありそうな表現はよく出てくるので、なんか繋がってきて面白いね。たぶんkentoさんそこまで考えてないけど。え、あり得るのか?あり得るのかも、作詞いつも天才的だし。
ポルカソルカ:
ポルカはボヘミア地方の民族舞踊を起源とする軽快なステップの舞踏・舞曲のことで、語源はチェコ語で半分を意味するpůlkaから来た説が有力らしい。
「半分」かぁ~。自分の中の善と悪を二分化しようとしたジキルの半身ハイド、って意味で深読みできるかも。
欲望の赴くまま oh rough:
roughという単語の意味「乱暴な、粗暴な、粗野な」も相まって、やはり欲望の赴くままハイドとして悪事を享受するジキルのことのように聞こえる。
間奏:
出ない・出ない・出ないでおなじみ全被りダンスやワニでの応援が見どころな間奏パート。大好きです。笑
私の中で「ジキルとハイドっぽいかも」と感じた一番の部分がここなんですけど、なんだか音楽の盛り上がり方や変化が「何かが恐ろしい存在に変貌していく」様を表現しているような気がしませんか?
で、間奏の入りにガラスか何かがパリーン!て割れる音入ってるんですよね。この割れる音、「お前はどこだ」の後のサビ入り、間奏の入り、「お前は誰だ」の後のサビ入りと全体通して3回出てくるんですが、めちゃくちゃ目立つし印象的で意味深じゃない?
私の中では薬瓶が割れる音なんじゃないか?という仮説に落ち着きました。特に間奏部分は、服薬⇒薬瓶が割れる⇒ジキルからハイドに変貌していく部分、という表現なのかな?と。
服薬してジキルからハイドに、ハイドからジキルに変わる時は、ものすごく苦しいということがわかる記述があり、本文中にそう書かれてるわけではないけれど、おそらく片手に薬瓶を持ってぐっと飲み干して、苦しんでる間に手に持っていた瓶は滑り落ちて割れるんだろうと思うので。
甘くてあざとい華になって:
果実が華(花)に成長している……欲望が増幅していることの比喩?
不気味でとろける泡になって:
人魚姫のように消えていくイメージ?
もしくは、本文中にmelt(とける)という単語は5回出てくるのだけど、下記の通り服薬により姿が変わる過程についての部分でも出てくるので、顔が融けて変わっていく様子とも取れる。
彼はメートル・グラスを口にあてると、ぐっと一息に呑み下した。すると叫び声をたてて、ひょろひょろとよろめき、テーブルを掴まえてしっかとしがみついたまま、血走った眼でじっと見つめ、口を開けて喘いだ。見ているうちに変化が起こったように私は思った。――彼は膨れるように見え、――彼の顔は急に黒くなり、目鼻立ちが融けて変ったように思われ、――そして次の瞬間には、私は跳び立って壁に凭れかかり、その怪物から自分の身を護ろうと腕を上げ、心は恐怖で一ぱいになった。
儚く消えゆく無敵なJ:
一回目では「夢幻」だったのがここでは「無敵」に変わってる。悪の部分が増していって制御できなくなり、躊躇や良心など欲望を止めるものがなくなっていく様を「無敵」と表現しているのかな。
探しだす お前は誰だ:
ここ!一回目は「お前はどこだ」だったのが「お前は誰だ」になってるの。知らない人の居場所を突き止めようとするなんてことはないはずなわけで、意味深だよねえ!捜査して追跡して、とうとう見つけたぞ!と追い詰めたのに、自分が探していたと思っていた人物とは別人だった、または全く知らない面を目の当たりにして「お前は誰なんだ、自分の探していたのは誰だったのか」ということかな?
照明:
それから、ワンマンライブでの照明の色、赤⇒紫(青+赤)⇒緑という流れのところが多いんだけど、調合過程の薬剤の色の移り変わりとも重なるな~、と思いました。
あの赤色のチンキを数滴、分量をはかって入れ、それに一包みの散薬を加えた。最初は赤味を帯びた色であったこの混合物は、結晶塩が溶けるにつれて、色が鮮やかになり、ぶつぶつと音を立てて泡立ち、少量の水蒸気を発散しだした。と同時に、その沸騰が止んで、その化合物は暗紫色にかわり、それがまた前よりは少しずつ薄い緑色に色があせていった。
ジャケット:
もう一点、ジャケットの写真が懐中時計なのも意味がありそうだな、と思っていたので、ジキルとハイドにも出てくるだろうかとワクワクしてたのだけど、本文中に出てきたのはたった一度だけ、あらすじでも書いたUttersonとジキルの召使が、ハイドの閉じこもった書斎に押し入るシーンの直前。
Uttersonは自分の懐中時計を確認して、召使に「さあ、行こう」と言うのよね。
で、強行突破し、ハイドが死んでいるのを発見して、三つあるうちの一つ目の封書を読んだUttersonが召使に向かってこう言うんですよ。
今は十時だ。僕は家へ帰って落着いてこの記録を読まなければならん。しかし十二時前には戻ってくる。それから警察へ届けることにしよう。
……ん、十時?
十時ってたしか……
あーーーっ!!ジャケットでも、”J”の手が、時計の針として、十時を指してる!!!
これ、気付いた時めっちゃ脳汁出ました。(九時指してるようにも見えるけど、というご意見は受け付けておりません。笑)
ふう!MVが出る前に深読み考察書き上げられてよかったー!自己満足ですが楽しかったです。
だだだーっと箇条書き気味に書いてしまったので読みにくい文章ですみません。
皆様のたのしいmaddy muddyライフの一助になりましたらば幸いです!