増え続けるタクシー会社の倒産と廃業
昨年ごろからタクシー会社の倒産や廃業が増えてきました。
最近でも、秋田県の秋田中央タクシー、長崎県の島原タクシー、愛知県名古屋市の毎日タクシーなどが倒産や廃業となりました。
これらの会社は、地域で大手や中堅と言われるタクシー会社で、地域の足の衰退は大きな問題となっています。
今回は、その理由や原因について、現役タクシードライバーの視点から書いていきたいと思います。
元々利幅の少ないタクシー業ですが、昨今の燃料費高騰や車両価格の高騰に加え、人件費の高騰も大きな要因です。
しかし、一番の理由は皆さんご存じのように「新型コロナ」です。
2020年頃から続くコロナショック。
飲食店には様々な補助が出されていましたが、飲食店と一蓮托生のタクシー業界にはほとんど補助がありませんでした。
それに対処するためにタクシー会社は夜間の運行を大幅に縮小したり、従業員を休ませるなどして経費削減を図りました。
しかし、経費削減出来るのは微々たるもの。
タクシーを動かさなくても、車両の保険代はかかりますし、点検や車検も受けなければなりません。
タクシーは、三か月毎の点検と一年毎に車検が必要です。
一切車を動かさなくてもそれらの整備は必要なわけで、売り上げが無いのに経費だけが積み増されるという期間が続きました。
また、乗務員は休業や時短勤務を余儀なくされ、一定程度の国の休業補償(雇用調整助成金等)によってカバーされた部分はありましたが、長引くにつれて退職する人が増えました。
長引くコロナ禍にあっても、ところどころ需要が戻る時期もありましたが、その時に乗務員が減っていて売り上げを十分に上げられずに苦しんだタクシー会社がほとんどだったと思います。
そして2023年5月にコロナが5類となっても、乗務員が減少していて車両を十分に稼働させることが出来ず、かつ需要もコロナ前ほどには戻っていないこともあり、体力が底をついたタクシー会社の倒産や廃業という事態になっています。
この先も、タクシー会社の倒産や廃業は続くことは間違いありません。
コロナ前でも7割のタクシー会社の経営が赤字かギリギリ黒字と言われていましたので、体力の残っていない会社は沢山あります。
「コロナ後」に賭けていた会社もたくさんありますが、結局売り上げを持ってくる乗務員が確保出来なければ、それも夢物語。
全国各地でタクシー運賃の値上げが行われ、多少猶予が出来たところもあるかと思いますが、根本の解決が出来ていない現状です。
さらに、この春からは「ライドシェア」が部分的にではありますが解禁されます。
これがどのように作用していくかは不確かな部分ですが、タクシー会社の売上という部分だけで見れば、プラスに働くことは無いでしょう。
現役タクシードライバーの立場から言わせてもらえば、ライドシェアを解禁する以前に、タクシードライバーの確保に力を入れていただきたいと、国には申し上げたいです。
私の会社でも、車両は沢山余っています。
動かすドライバーが居ないのです。
動かすドライバーが居れば、地域のお客様の需要にはコロナ前と同じようにお応え出来ますし、そうなれば会社の経営状態も戻っていきます。
タクシーは「公共交通」です。
それぞれの地域で、観光にしろ、地域住民の足にしろ、飲食店のお客様の足にしろ、公共の立場で運行しています。
お客様の少ない時間帯でも、稼働タクシーが「ゼロ」にならないように、損得抜きにやるのは公共交通だからです。
深夜に病院に行かなければいけない人のため、早朝に始発の電車に乗らなければいけない人のため、お身体の不自由な方や高齢者の方のため、ドアツードアのタクシーが担っていることは沢山あります。
需要が多い時間帯にライドシェアを導入する事には、個人的には反対しません。
しかし、タクシーが不要になることは絶対にありません。
今は、タクシー業界にとって未曽有の危機だと思います。
私企業という視点ではなく、公共交通の維持という大きな視点で、行政からの支援が今は必要だと思っています。