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FULL CONFESSION(全告白)
第1回 『相棒の闇』事件総集編
私の note の記事に対して、メッセージとチップ300円をくれた読者の方がいた。それを私のメール通知で知ったのだが、去年の10月を最後に開いていなかった自分の note アカウントを開いてみたら、過去記事は見られるものの、編集ができなくなっていた。なんだかさっぱりわからない。
チップをくれた方へのお礼返信も、そのボタンを押した瞬間に、私が note未入会扱いとなるページに切り替わってしまい、どうにもならない。ネットで解決方法を検索しても、該当するパターンが見つからない。
要するに、昨年10月までの私の記事(17本)は、現在でもネットのどこかに存在して閲覧もできるようなのだが、新たな記事を投稿しようとすると、そのアカウント自体が消えるのだ。
本年、還暦となる、昭和のフィルム世代の映画屋には、まったくのお手上げ状態なので、これまでとは別に、新たな note アカウント(それがこのアカウント)で記事を更新していくことにした。
根本的な解決方法を note のサポートメールに質問中だが、旧アカウントが回復する保証はないから、まずは、私の記事にメッセージとチップをくれた方には、この記事でお礼を申し上げます。ありがとうございました(しかし、その300円はどうなるのだろうか)。
そして、その読者の方が続報を気にされていた私の note での連載記事は『相棒の闇』と題した告発記事である。
それは、現在もシーズン23が放送中の人気テレビドラマ『相棒』の前シーズン「22」で、主要スタッフを務めたことがある私が、その制作舞台裏で起きていた不法行為の事実を告発したものだ。
以前の記事が全部消えたため、ここで新たに作ったnote 新アカウントに、旧版の原稿を転載し、さらに、本件のその後についても述べることにした。
まずは、全8回の連載記事「相棒の闇」全文を以下に紹介してから、最新記事を発信する。全4万9千字(400字詰め原稿用紙にして120枚以上)の大長編ブログだから、一気読みは疲れると思うよ(笑)。
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2023/10/18
『相棒』の闇 ①
はじめにーなぜ私は告発するのか?
本日、2023年10月18日(水)21時から、テレビ朝日で『相棒 season 22』というテレビドラマが放送開始となった。
水谷豊主演の、国民的人気を誇る長寿ドラマだ。今年で22年目になるという。水谷豊氏の高齢もあって、今作がシリーズの最終章になるとの噂も出ている。
さて私は、今回の新シリーズ「season 22」の第1話から4話まで、主要スタッフのひとりとして関わっていた。
このドラマは、業界でいう「2クール」という半年間の放送になるので、撮影も来年2月まで続くことになる。だが私は、今回の新シリーズの撮影開始から、わずか2カ月で自分から降板した。
理由は、本作ドラマ制作の現場となっている「東映東京撮影所」の裏側に「相棒の闇」とでも言うべき、不法労働契約問題があることを知ったからだ。私には、ずるいことをやっている企業の仕事でカネをもらう趣味はない。
それに不法労働契約というと、そう大した法令違反ではないと思われるかもしれない。ドラマに限らず映画やテレビの仕事では、長時間にわたる撮影で休日もないことなどは珍しくはなく、仰々しく「闇」などと書くなよというかもしれないが、私が本稿で明らかにする「相棒の闇」は、それほど単純な問題ではない。
本稿の主旨を先に述べると、ドラマ『相棒』の制作現場となっている東映東京撮影所にスタッフを派遣している「株式会社アーム」という、謎の人材派遣会社による、労働基準法違反、派遣労働者法違反、若いスタッフに違法な誓約書を書かせて社員にするという強要罪についての問題を告発し、同社と長年の癒着関係にある東映グループの体質改善を訴えることにある。
第一、『相棒』は警察官が活躍する話だ。水谷豊氏が演じる主人公・杉下右京が犯罪を暴いて、犯人に説教する勧善懲悪のストーリーで高視聴率を誇っている。そのドラマが、長年にわたって刑法にも違反する不法行為のもとで制作されていたとなれば、ファンと社会を裏切る、いや、主演俳優・水谷豊氏をも裏切る大罪というべきだろう。
ここで明かしておくが、私はすでに、信頼できる東映執行部社員を通じて、東映法務部および東映法律顧問(MTI総合法律事務所/六本木ヒルズ森タワー)とも面談のうえ、本件「相棒の闇」問題を共有している(もっとも東映がコーポレート・ガバナンスに基づいて、本件問題の解決に向けて誠実に対応するかどうかは今後の東映次第だが)。
つまり本稿は、ドラマ『相棒』についての、事実無根の誹謗中傷ではなく、東映本社もテレビ朝日も、おそらくは承知していない、東映東京撮影所の裏に隠れている不法行為を告発する、一種の公益通報である。
その端緒が、たまたま私が参加した『相棒』新シリーズであったことから「相棒の闇」と表題したが、本稿は『相棒』に限らない「株式会社東映テレビ・プロダクション(以下、東映TVP)」のドラマ制作すべてにかかわる、労働基準法違反、人権侵害被害についての報告である。
無論、この問題は『相棒』の提供スポンサーとして名を連ねる、後述の優良企業にも飛び火することも危惧される、極めて重大な事態である。
新たな試み
始まりは本年(2023年)6月だった。
今年後半に予定していた私の映画が、脚本の改稿や主演俳優のスケジュール調整で来春になったところで、業界の知人を通じて、東映TVPで人手を探しているとの話をもらった。
それで大泉学園(東京都練馬区)にある東映東京撮影所に行って話を聞くことになった。私は、38年前の19歳のとき(昭和59年)に、この撮影所から映画人としてのスタートを切った。
ウィキペディアでの私の来歴に記載されているが、私の祖父・薮下泰司(日本初の長編カラーアニメ映画『白蛇伝』監督)が東映動画(現・東映アニメーション)の創立メンバーで監督兼取締役製作部長という役職でもあったから、この撮影所は私には特別な場所でもある(昔は実写映画の撮影所の向かいに東映動画があった)。
話を聞いてみると、東映TVPが「人手を探している」とは、助監督や制作部として働く若手の人材を急募しているということだった。
助監督という仕事は一般人でも想像できると思うが、制作部というパートがどんな仕事をするのか、普通の人はご存じないだろう。制作部とは、たとえばロケ場所を探して撮影許可を得たり、ロケ弁や宿泊先を手配したり、スケジュールを組み立てるチーフ助監督と一緒に、複雑なパズルのような撮影予定を作って、キャスト・スタッフ全員に配ったりする、身の回りのお世話係といって良い。
トラブルを回避しながら円滑な現場を推進する、むしろ他のどのパートよりも重要な役割を担っていて、プロデューサーというのは、制作部での下積みを経ていなければ務まらない。
さて、私は2020年3月から脳梗塞患者で、診断名「右半身感覚障害」という、不治の後遺症となった。
見た目は普通だが右半身の全部が麻痺した状態のままなので、肉体労働の助監督や制作部としては、ほとんど役に立たない。普通なら「まあ、頼める仕事はないですね」と終了になるところだ。
だが、今作シリーズの『相棒』では、もの凄くおもしろい試みをやろうとしていたライン・プロデューサーがいた。仮に「山崎」としておこう。ライン・プロデューサーというのは、現場となる撮影所で現場の動きをチェックする、いわば、プロデューサー直属の部下だ。
この山崎が、私に提案したものは「テキスト・アートディレクター」という仕事だった。
ドラマの劇中に出てくる架空の新聞記事やニュース番組、架空の社名、警察の捜査資料から、殺人事件の死体解剖書など、あらゆる文字情報(テキスト)を管轄し、執筆もするという、ドラマ全体を演出する作品の監督と連携する、新しいパートとして、山崎が着想したものだ。
「テキスト・アートディレクター」という造語は、「文字情報の創造性を監督する」という意味で、私の20年来の友人で、米国人女性映画監督・大神田リキのアイディアから命名された。ちなみに、彼女も昔『相棒』のスタッフとして働いたことがある。
こうして『相棒』ライン・プロデューサ―山崎と私は「テキスト・アートディレクター」を略称・TADと呼んで、現場に定着させようと計画した。
ともあれ、『相棒』新シリーズの4話までは、私と東映の契約で、番組最後のクレジットタイトルに「テキスト・アートディレクター 高橋玄」と表記された。
この新たな試みについて、山崎は「これは働き方改革の一環として発想したんです」と私に語った。このことは、後に大きな意味を持つことになる。
映像制作業界のどの現場でも、劇中に出てくる新聞記事や架空の捜査資料などの原稿は、すべて助監督が書いている。助監督は、撮影が終わってヘロヘロになって自宅に帰っても、次の撮影のためにこうした原稿を書かなければならない。それでも翌日に撮影があれば、下っ端として一番早く集合場所に行かなきゃならない。寝不足だ。
事実、助監督たちが休みの日には、遊びに行く気力も体力もなく、ひたすら寝ているのが普通である。撮影所で働くスタッフほど映画を観ていない理由のひとつでもある。自分の時間がないのだ。こうなるとクリエイティヴではなく、単なる作業でしかない。
こうした矛盾と、末端スタッフたちの残業の負荷を削減する目的から、山崎は「テキスト・アートディレクター」という試みを考えたのである。
私が、自分の専門外であるテレビドラマ『相棒』の仕事を受けたのは、業界初となる、この新たな試みを提案されたことが最大の理由だ。私は、映画企業に雇われるテレビドラマ監督と違って、自社で映画を作っているから、無理して東映に雇ってくれと懇願する立場にはない(私の監督作は、ぜひとも、U-NEXTやAmazon等の配信でご覧ください=ここは宣伝)。
不法労働契約を強要
ところが、この『相棒』の撮影準備中に、私は驚きの事実を知ることになった。
それは、東映東京撮影所内にある人材派遣会社・株式会社アーム(以下「アーム」)が、不法労働契約によって新入社員を縛りつけ、『相棒』で働かせていることだった。アームは、一般の人材派遣会社とは異なり、東映撮影所専門にスタッフを派遣する小規模な法人だが、実態は100%違法な人材派遣業者だ。
この事実は『相棒』今作シリーズのスタッフとの話から判明した。雑談の中で「君は最終的に監督を目指しているのか?」と聞いた私に、歳若いアーム社員スタッフは「自分はフリーランスになりたいんです」という。
それなら会社(アーム)を辞めればいいだけだろうと言うと、その社員は「こういう契約になっていて、いま辞めたら違約金を払わされるので」というではないか。この若き社員は、労働基準法にまったくの無知であったばかりか、そもそも「辞めるならカネを払え」などという社員契約が、社会で通用するはずがないことさえ知らないようだ。
「それが本当なら、100%のブラック企業だ。その契約書は持っているか?」と私が尋ねると、若いスタッフは、アームが作成した不法労働契約の「誓約書」を撮った写真を私に送ってくれた。それがこれだ。
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これは新入社員契約をしたスタッフが、機転を利かせて、署名する前に撮影しておいたものだ。なにか不審さを感じたのかもしれない。案の定、アームは労働契約書も、この誓約書の写しも一切の書面を交付しなかった。
これが人気ドラマ『相棒』で働く一部のスタッフが置かれた状況であることを、改めて考えて頂きたい。
制作の東映やテレビ朝日、日産自動車やキューピーなど、同番組を提供している国際的なスポンサー企業は、この問題を「大したことではない」と言えるのだろうか?
特に上掲「誓約書」の「6」「8」「9」は、労働基準法第16条が定める「賠償予定の禁止」(労働契約の不履行による違約金や損害賠償額を労使間で定めてはならない)に明らかに反している上、刑事訴訟法上の強要罪となる疑いも極めて強い内容だ。
アームはこうした悪質な誓約を、まだ右も左も判らないながらも東映撮影所で大志を抱く若者たちに強要し、心理的に「逃げられないように」拘束していたのである。勿論、このような契約は元から無効だから、何人(なんびと)も従う義務がない。
なぜアームがそのようなことをするか?それは人材派遣によって、東映TVPから派遣手数料を得られるからであり、派遣したスタッフがすぐに辞めては、アームに対する東映の評価が低くなるからだろうと推認できる。
現役映画監督の私にも平然と不法契約
ちなみに、私は東映TVPの山崎から仕事の提案と説明を受けて賛同し、『相棒』の主要スタッフを引き受けることになったわけだが、私の雇用元はアームである。
前述した「東映撮影所で人手を探している」との話を私に持って来た業界の知人も「人材派遣会社」であるアームの人間だったのである。
つまり、私は人材派遣会社であるアームと契約し、私が派遣される仕事場が東映TVP制作の『相棒』ということになる。
この場合、私の報酬金額は派遣元であるアームと私が交渉して決める。そのうえで仕事の指揮命令は、派遣先の東映TVPが行う。
これは労働者派遣業法に定められている法令で、本件の場合、人材派遣会社であるアームは、報酬(労働賃金)や契約期間などの労働条件を記載した「就業条件明示書」を私に交付する義務がある。社員契約の場合は「労働条件通知書」となる。
ところが、アームからは就業条件明示書はおろか、仕事が始まる1週間前になっても報酬の金額さえ提示されなかった。
東映グループは、こんなデタラメな人材派遣会社でスタッフを調達しているのか?
私は『相棒』が始まる前から、明らかにおかしい東映専門の人材派遣業者・アームを大いに疑っていたので不法行為の証拠を集めることにした。
まずアーム代表の藤田高弘氏に電話をして、その会話を録取。藤田氏は、自らを人材派遣会社だと名乗りながら「報酬の金額を早く決めてくれと東映に言ってるんですが」などと言っている。あり得ない話だ。私が法律を知らないとでも思っているのか、もしかしたら藤田氏自身が法律を知らないまま人材派遣業をやっている可能性さえある、堂々たる不法行為ぶりである。
私は詳しいことは知らないふりをしながら、次に派遣先である東映TVPの山崎を相手に、報酬金額の交渉をすることにした。
なぜか?山崎が「報酬金額などの条件は派遣元のアームさんとの話になりますよ」と言えば、東映に問題はないが、もし山崎が私の報酬条件を切り出したら、東映TVPとアームの共同不法行為が成立するからである。
果たして『相棒』の仕事が始まる3日前になって、派遣先の東映TVP・山崎は私に電話をしてきて、こう言った「高橋さんの報酬ですが月額○○万円でご提示させて頂けないでしょうか?」。
人気テレビドラマ『相棒』を制作している、東映TVPもブラック企業であることが判明した瞬間だった。
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2023/10/20
『相棒』の闇 ②
黒幕は誰だ?
前回①の続きである。
東映TVPのライン・プロデューサ―山崎が、私に報酬金額を提示したことによって、同社もブラック企業だと判明したことに間違いはない。派遣先業者なのに、派遣労働者の私とギャラの交渉を始めちゃってるんだから、言い訳はできない。
弁明の余地があるとしたら、東映TVPと山崎自身も、労働者派遣業法の知識がなく、昭和の時代から「なんとなくそれでやってきた」という、惰性の営業をやっていて、これが法令違反だとは知らなかったということだろうが、東証一部上場企業の東映グループ会社として通用する釈明ではない。
しかし私自身は、東映TVP社長や山崎に、故意はないように思える。
特に、東京大学卒で東映入社したエリート学歴の東映TVP社長・丸山真哉氏は、この6月(2023年)に晴れて就任したホヤホヤの新社長で、彼にとっては本件『相棒22』が社長としての初仕事となったのだ。
丸山社長が、スタッフを前にして「(東映TVP)社長に就任して最初の仕事が『相棒』という大きな作品で、身が引き締まる思いです」と挨拶したその場に私もいた。
仮にも、新社長としての成功を期した最初のドラマで、故意犯(自分の行為が犯罪だと自覚している犯罪)という愚かなことを容認しないだろう。
そうすると誰が、アームと東映撮影所だけで通用している「特殊な労基法」を運用しているのだろうか?
実行犯は「元映画監督」
ここに、東映東京撮影所に常勤している、ひとりの「元映画監督」が登場する。いまのところ、仮に「草刈」としておこう(いまのところね)。
草刈は、私よりも3歳年長で、名だたる映画監督が加盟する「協同組合 日本映画監督協会(理事長・本木克英)」に在籍して委員職にも就いている。私も若い頃は、同協会に所属していて、大島渚監督、深作欣二監督、特に親しかった崔洋一監督らと交流していた。
そんな歴史ある映画監督協会に籍を置く草刈が、東映東京撮影所でどんな仕事をしているかと言うと、東映TVPの「マネージャー」と、問題のアームの「人事部長」を兼任しているのだ。
「マネージャー」というのが具体的に何をやる立場なのか想像できないが、古株のスタッフに聞いた話では、草刈はもの凄く長い間、東映TVPの助監督や、テレビドラマの監督をやっていて、アームを含めた撮影所の人間関係に通じていることから、東映とアーム両社の中間管理職として働いているのだという。
あれ?待てよ。前回①で述べたとおり、草刈が「マネージャー」となっている東映TVPは、アームから人材を派遣される派遣先である。で、同じ「草刈」が「人事部長」をやっているアームはスタッフの派遣元なのだ。
つまり、派遣元と派遣先の担当者、責任者が「草刈」という同一人物だということになる。これは「あり」なのだろうか?
わからないことは役人に聞くに限る。私は、わからないことは、すべて役所に聞く。税金払ってるんだから。
私は東映本社(中央区)を管轄する「中央労働基準監督署」に電話して、「派遣元と派遣先の担当者が同一というのは適法なのか?」と質問した。
担当職員は「え?」と意表を突かれたような声を出して「ちょっと調べます」と時間を取った。結果、職員は「法令上、そのような規定が見当たりません」と回答した。想定されていない、という意味だ。
そりゃあそうだよな。たとえば自分で自分を殺しても殺人罪は構成されないから、殺人罪の条文に「殺す人間と殺される人間が同一の場合」などと書かれていないようなものだ。
「労働者派遣業法」というのは、派遣元と派遣先という個別の企業が、公正に取引するよう定めた法律なのだから、両方を自分でやっている場合を想定した法律条文は存在しないというわけだ。
ところが、東映TVPとアームは、両社でひとりの怪しい元映画監督・草刈を雇って労働者を「売り買い」しているのだ。
この点についても、私は、東映法務部、顧問弁護士と面談した際に、両社の担当者が、同じ「草刈」であることに問題はないのか?との質問書を手交している。東映側では「事実を確認します」という。
この一点だけでも、東映とアームの間には「ただならぬ関係」があるのではないか?と、疑いを抱くにじゅうぶんだが、両社をつないでいる怪しい元映画監督・草刈は、実際、かなり疑わしい人物だった。
実は、私はとっくに東映TVPとアームの業態に疑いをもった7月初週に証拠集めを始めていた。その一環で、用事もないのに電動チャリンコに乗って、私の自宅・新宿から1時間かかる、練馬区大泉学園の東映東京撮影所まで通っては、所内にある草刈のデスクを訪ねていた。
そこで親近感たっぷりに、昭和の東映撮影所の話で油断させて、ペラペラ話す草刈から、いろいろな情報を引き出していた。諜報活動の基本だ。私は若い頃、興信所調査員として働いた経験もある。だから私は、草刈の来歴やプライバシーについても、一定程度、知っている。
そこで明確にわかったことは、草刈は、東映TVPとアームの両社から給料を得ているということだ。
詳細は伏せるが、還暦をすぎて東映との雇用契約の更改を余儀なくされた草刈は、収入が減ることになった。でも扶養家族もいるから、その不足分をアームの人事部長としての仕事で埋め合わせているのだ。これは草刈自身が私に語ったことだ。要するに、撮影所内での腐れ縁とでもいおうか、アームは、東映定年後の草刈を情実で拾ってあげたのである。
そこまでは理解できる話だ(労基法や派遣業法違反の疑いの事実はべつとして)。
しかし、だからといって草刈が、若いスタッフに違法な誓約書を書かせていい理由になるはずがない。
「元映画監督」でアームの草刈は、いまも、東映や日本映画監督協会という肩書きを看板にして、映像専門学校や大学の就職説明会に出向いては、東映TVPのテレビドラマ制作で働かせるための若い人材を「捕獲」している。就職求人どころか、極めて悪質な違法労働契約で、無知な若者を過重労働の現場に縛りつけるための「人さらい」同然である。私は、アームが就職説明会に参加している複数の学校法人にも、本件問題を公益通報している。
私が本件を告発した理由は2つある。
ひとつは、東映という映画会社が、アームと不法行為を共同実行する東映TVPの問題を自覚して、改善することを訴えるという目的。
もうひとつは、「映画監督」を名乗りながら、映画界を目指す若者を食いものにしている、草刈に対する、映画人としての激しい怒りである。
映画・映像制作業界で働く皆さんへ
繰り返しになるが、労働基準法違反とは、それほど軽い犯罪ではない。同法違反を取り締まる、労働基準監督署の監督官は、警察官と同じく刑事訴訟法上定められた「司法警察職員」で、容疑者を捜査、逮捕、送検する権限がある。労基法違反で最も重たい刑では懲役10年というものまである。
アームの不法労働契約は、これも繰り返しになるが、そもそも法的に契約として無効なので、いかなる場合でも従う義務はない。
本件当事者に限らず、またスタッフ、俳優に限らず、べつの事業分野で働く人たちにも、よく覚えておいて欲しいことだが、日本のすべての国民には「契約の自由」という権利が憲法で保障されている(むろん、民法でも規定されている)。本件のように、違法な条件に応じる義務を強要する契約行為は、それ自体が犯罪なので、とっとと警察に電話すれば良いだけだ。
このことを知らずに「誓約書に署名しちゃったから、途中で辞めたら違約金を払わされるし、給料を払わないとか、いますぐ社宅を出てけ!とか報復されて、路頭に迷っちゃいますう~!」と、怖がっている若いスタッフがいるが、まったく心配する必要はない。
アームがわざわざ「契約書」だとか「誓約書」だとかいう書面に署名させる意味も法的な根拠も、まったくない。ただの「こけおどし」だ。
もしもアームの人間から「辞めたら給料も払わないし、社宅も追い出すぞ?」などと脅かされたら、労基法より簡単な「脅迫罪」で現行犯逮捕できる。
現行犯=脅かされた瞬間に「現行犯逮捕!」と宣言すれば、警察官ではない一般人でも被疑者を逮捕できる。これを私人逮捕という(常人逮捕ともいう)。
「じゃあ、辞めますとアームに言いに行くので、ついて来てくれませんか?」という要望があれば、私はスケジュールの都合がつく限りはボランティアでアームを私人逮捕しに行くので、いつでも下記までご連絡下さい。私は防犯用に手錠も保有していますので(笑)。
メールアドレス takahashigen.1965@gmail.com
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さて、これを起案した人物は「元映画監督」の草刈である疑いが強い。
大学は法学部卒だという草刈は、これら「契約書」や「誓約書」がなんの法的拘束力もない、アームがデタラメを書いた偽造私文書にすぎないことを知っているはずだ(知らなかったら、さらに問題だが)。
というよりも、この「誓約書」は明らかに草刈自身が起案している。私はアーム社長・藤田氏とも会っているけど、申し訳ないが、藤田氏にはこのような書面を書ける素地がない。「カールおじさん」が実写で出てきたような、呑気なオヤジさんだからね。
一方、草刈は、私大法学部で、それらしい法律用語を覚えているはずだから、法律家が一読すれば馬脚をあらわす「なんちゃって契約書」や「それっぽい誓約書」くらいは書けるだろう。
そんなものを若い社員スタッフに書かせることで、あたかもこれらが法的拘束力を発効すると錯誤させる効果があることを承知で署名させているのだとすれば、これほど悪質な自称・映画監督も他にいまい。
アームの労働契約、誓約書を新入社員に強要した実行犯が、草刈であった事実は、当該の被害者スタッフたちが証言している。
以下は、私とスタッフとの、LIENでの一問一答である。「草刈」は本稿での仮名なので、実際の画面では、草刈の実名が書かれている。
私
「アームの契約書には給料や残業代、休日の規定(有休など)が書いてあったか、または説明がありましたか?契約書と誓約書は「草刈氏」が説明して、署名するように言いましたか?」
スタッフ
「紙に書いてあったかはあまり覚えてないですけど、給料は固定給、残業代はなしとは口頭で聞いています。
有休に関しても紙に書いてあったかは覚えてないですけど、そういった休日の規定や有休は存在していないと思います。
契約書、誓約書も「草刈さん」が説明してたと思います」
この証言からは、アームの不法行為については、草刈が主犯であると推認される。
仮に労働基準監督署がアームを捜査、逮捕、送検する場合は、対象事業者は株式会社アーム代表・藤田氏になるが、違法な誓約書を書かせた被疑者は草刈になるから、労基法とはべつに草刈個人を強要罪で刑事告発することもできる。
ちなみに、これら証言のLINE記録も、東映法務部と東映顧問弁護士に提出済みだ。
東映は大丈夫?
なお付言しておくと、強要罪(刑法第223条)ならびに、労働基準法違反は「非親告罪」である。ある犯罪の被害者が、告訴や被害を申告しなくても起訴できる犯罪という意味だ。
この反対が、被害者本人の告訴がなければ起訴できない犯罪で、それを「親告罪」という。
本件でいえば、アームの不法行為の被害者であるスタッフは、労基署や警察に被害を申し立てているわけでもなく、刑事告訴もしていない。しかし、本件アームの不法行為はいずれも「非親告罪」のため、被害当事者ではない第三者が刑事告発し、送検することが可能な犯罪である。
仮に、本件被害者スタッフが「自分は、これも修行だと思っているし、残業代や休みがないのも、そういう業界だからしょうがないと納得している。だから自分は被害者だとは思っていない」と言ったとしても、本件は非親告罪なので、当該スタッフの親や友人、第三者である私が、東映TVPやアームを刑事告発することが可能なのだ(手続きは大変だけどね)。
ただ現実には、司法警察権を持つ労働基準監督署も、面倒な捜査は敬遠して、第三者による刑事告発はおろか、被害者自身による刑事告訴でさえ、ほとんど受理しない。とにかく面倒くさいからだ。
一方、東映本社は、本件とはべつの事案による労基法違反で、中央労働基準監督署から「是正勧告」を受けている。
朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASQ4G6QGNQ4GUCVL027.html
この事案の女性は、アームでななく東映の社員だったが『相棒』でも仕事をしていた。是正勧告という「行政指導」だけで済んでいるのは、単純に労基署が面倒くさがっているだけのことである。
本来であれば、3度の是正勧告を受けながら平然と違反を繰り返すような悪性の高い企業は、逮捕者が出ていなければおかしい。だって、この女性の事案以後にも、東映グループである東映TVPは、本稿「相棒の闇」に明らかな、労基法違反を事実上、容認しているのだから。
なぜ、東映グループは、この是正勧告というものを無視できるのか?それは、是正勧告が、なんら法的拘束力がない行政指導にすぎないことを知っているからだ。
何度、立ち入り調査(臨検という)を受け、是正勧告を出されても、東映グループには痛くもかゆくもないのである。
もちろん、是正勧告された対象に関しては「はい、ここは改善しました!」と労基署に報告するのだが、べつの類型事案までをも抜本的に改善することがない。だから、本件アームの問題も放置しているのだ。
特に賃金の面で、労働基準法を守るよりも守らない方が、企業の利益は大きくなると、東映は信じているのかもしれない。
テレビ朝日が、東映の筆頭株主
『相棒』はテレビ朝日で放送されているが、その理由は、テレビ朝日と東映が相互持合筆頭株主だからである。文字通りの「相棒」というわけだ。
『相棒』に留まらず、沢口靖子主演『科捜研の女』、上川隆也主演『遺留捜査』、内藤剛志主演『警視庁・捜査一課長SP』など、東映TVP制作のドラマのほとんどが、テレビ朝日で放送されているのも同じ理由だ。
なので、テレビ朝日は、本件「相棒の闇」問題を、東映株主総会で厳しく追及すべきだろう(それをしなかったら、テレ朝も、不法人材派遣会社を容認している証左にならんか?)。
何度でも言うけど『相棒』は、正義の警察官のストーリーであって、若者を食いモノにする不法事業者の話ではないのだから。
それとも、テレビ朝日も「労基法違反なんて、どうってこともない」とでも考えるのだろうか?
私は若い頃、著名なジャーナリストのお誘いでテレビ朝日で仕事をしたこともあるが、警察相手にも斬り込んでいく気概があった局だと記憶しているんだがなあ。
他方、私が面談した東映法務部も顧問弁護士も、労基署の是正勧告がなんらの有形力を持たないことを承知しているから、実際には私の告発など「言っとけば?」てなもんで、東映グループとしても、了見を入れ替えて問題を改善しようなどとは思わないかもしれない。
だから、私は「相棒の闇」をこのブログで告発したのだ。万一、事実確認の結果「これはヘタに動いたらマズイから、放置しておこう。いざとなっても、せいぜい行政指導止まりで済む」などと、東映グループが、映画の編集のように本件問題を「カット」できないように。
いまのことろ無事でいる東映TVPやアームは、労基署の怠慢によって助かっているようなものだ。
日本の同調圧力
また、ただでさえ同調圧力が強い民族性の日本人社会で、さらに映画撮影所という閉じられた区域(事実、許可がない者は立入禁止)では、草刈のような「洗脳教育係」の存在価値が、むしろ高く評価される。その意味で草刈は、北朝鮮の工作員と同じ性質の任務を担っているともいえるだろう。
「先輩」に不法な誓約を強要されても、それが通過儀礼だと信じてしまう若き映像制作スタッフがいるのは、「ドラマ業界、これが普通だよ」などといった、洗脳教育による「思考停止のメカニズム」が機能するからだ。
だから、私のような内部告発者を敬遠したり、敵視していく傾向が、東映のような旧態依然とした日本の映画業界には、2023年の現代でも色濃く残っている。
そして、こうした悪弊を、まるで日本映画界の精神文化であるかのように語り、たまに後輩スタッフに、安いビールと安い焼肉を振る舞って(決して高いものは奢らない)、親切な先輩ヅラをしている草刈のような「ニセ映画人」こそが、日本映画業界の病巣なのである。
だから、賢明な日本人スタッフの多くが、外資系映像配信業者のオリジナル作品に流出し、歴史ある東映の撮影所では、犯罪行為に手を染める人材派遣業者を黙認しなければスタッフを掴まえられないという、悲惨な状況が常態化しているのだ。
ところが、当の東映TVPは、自分たちのやっていることの何が問題なのかさえ、まるで理解していない。
東映東京撮影所内で、同社のベテラン社員らと雑談していたら、彼らからこんなセリフが飛び出した。
「Netflix(ネットフリックス)や、Amazon(アマゾン・プライム・ビデオ)の作品にスタッフを取られちゃって、本当に人手不足なんですよ。ウチとギャラもそんなに変わらないっていうのに。なんでですかねえ?」
これこそが、"外の世界”をまったく知らない、日本のガラパゴス的映像制作事業者の認識なのである。
本稿では詳述を割愛するが、ギャラが「そんなに変わらない」というのは、単純に、日本映画界の相場観としての、手取り報酬額(助監督ではチーフ月額70万円、セカンド50万、サード30万円(通称7・5・3=しちごさん)のことを言っているだけだ。
労働条件を合わせていえば、少なくともNetflixの現場と、アームから派遣されるスタッフの労働環境は大きく違う。
本件「相棒の闇」被害当事者で、アーム社員のサード助監督は、月額30万円どころか「月給21万円、交通費、残業代なしで、1カ月まるきり休みなし」という労働環境にいる。それ以前に、アームでは就業条件の明示さえないというのに、よくぞ欧米と「変わらない」と言えたものだ。
だから、昭和時代のまま開き直っているかの東映の仕事は、『相棒』に限らず、多くの映像制作スタッフから敬遠されているという事実がある。そのことさえ東映グループは承知していないようだ。
そして、ついには「人が来ねえなら、嘘八百と脅し(たまのメシと酒)で騙して連れて来て働かせりゃいい」とでもいう、かつての東映映画『仁義なき戦い』に出てくるチンピラみたいな男が「人事部長」なる名刺を持って、撮影所の若いスタッフのやる気を搾取し、東映からの派遣手数料収入で食うという、不法業者アームとの「腐れ縁」状況が固定化したのだろうと想像できるのである。
次回は、アームが自分の「相棒」たる東映TVPに対してさえ虚偽報告をしながら、不法営業を続けている証拠を公開する。
アームよ「震えて眠れ」。なお、この表現は「脅迫にあたらない」との最高裁判例がある(笑)。
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2023/10/22
『相棒』の闇 ③ 疑惑の東映テレビプロ
誰が得をするか?
本稿、前回までの①②を読んだ映画・映像業界スタッフや、一般の『相棒』ファンの方、また名は明かせないが東映社員の方からも、本稿への賛同、応援メッセージが届いている。
でも私はインフルエンサーではないし、一介の売れない映画屋なので、世間で話題になるような反響を呼ぶわけもない。
では、なぜ私がこの問題を告発するのか?前回までにも理由を述べたが、少し違った角度から説明しておきたい。
私が本稿を公開したことで、映画業界での友人のひとりが「これを告発することで、映画人としての君の、何かの助けになるのか?この業界が黒いことは、みんな知っているじゃないか」とのメッセージをくれた。
だが「みんな知っている」のは、私を含めた業界の内側にいる人間だけだ。彼も映画人だから「今更、こんなことを暴露してなんになる」と思ったのだろう。私は彼に反論とまではいかないが、少し詳しく理由を返信した。すると彼は納得してくれて「それなら案外、東映も協力するんじゃないか?」との追伸を送ってくれた。
映画・映像制作業界のスタッフの給料が安くて、残業代ナシの過重労働が当たり前だというのは、そのとおりだ。もちろん「そのとおり」とは肯定する意味ではない。
日本では、多くの映像制作現場のスタッフが、安い給料なのに残業代もナシ、休みもナシの過重労働を余儀なくされている。だが、そこで働くスタッフは、アームのような違法契約や誓約書を書かされてはいない。
私が強調したいことは、本稿で私が告発したアームのような「半グレ」同然の犯罪行為でスタッフを働かせているケースなどは、「ブラックで当たり前」の日本映画業界歴38年(今年で39年目)の私でさえ、初めて知った悪性の高さだという事実である。
実際、ベテランのスタッフや、名は言えないが誰でも知っている大女優さんも「撮影所の中に、こんなひどい会社があるとは」と、本稿を読んで驚いていた。
ついでに明かすと、かの2大週刊誌も、本件について私を取材している。「文春」と「新潮」である。
どちらも、私の話を聞いた出版業界の人からの紹介で会い、1誌が「出版社として、水谷豊氏と商流上の関係があるから、この件は水谷氏自身の問題ではないが『相棒』は扱いにくい」との編集長判断で、記事化は見送られることになった。担当記者は非常に乗り気だったこともあって、わざわざ謝罪の電話までくれた。記者も会社の人間である以上、こういうことはよくある話だ。
もう1誌はスタンバイ状態だったのだが、私が無断で先に公開したので、掲載はそのまま見送りとなったはずだ。担当記者は怒ったかもしれない。
これには理由があって、同誌編集部の会議で、本稿に登場する違法人材派遣会社・アームの社員からの「記事化の許諾を待ちましょう」という結果になったからだ。
だが、私が本稿①②で写真を公開した、アームの不法行為の証拠である「誓約書」を私に提供してくれたスタッフは、すでに私の連絡に応答しない状況になっていた。
もしかしたら、本稿での告発を知ったアームの人事部長で元映画監督・草刈や東映TVPから、監視されているかもしれないし、最悪の場合はさらに脅迫されているかもしれないと考えるのは、アームの凶悪さからしても飛躍ではなかろう。
だから週刊誌には悪かったが、私としては、早い方が良いとの自己責任で『相棒22』放送開始当日に、本稿記事を公開したのである。
本稿は、連絡が途絶えている東映撮影所スタッフたちにも送信しているから、アームの不法行為を私に証言したことで、なんらかの報復をされたときの防御方法を、この記事を通じて、当該の被害スタッフらに伝達する目的もあった。
だから、この告発は「誰が得をするか?」などという程度の低い問題ではない。
音信不通となった本件スタッフたちにしても、私が暴走していると思っているかもしれないが、自分から「アームを辞めたい」と私に相談したからには、本稿告発の行方を見守っている可能性もある。
もしも、そのスタッフらが「余計なことを」と私を恨むなら、「どうぞ、そのまま不当な奴隷労働を続けてアームの資金源になってやれよ」と言いたい。
少なくとも私は、『相棒』を自らの申し出で降板し、本来なら半年先まで続いた高額な月額報酬(具体的な数字は最終回で明かす)をも捨てているので、得するどころか大損したにきまっている。
違法のオンパレード
前置きが長くなったが、今回の本題に入る。
繰り返すが、アーム(というか人事部長・草刈)がスタッフに書かせた「誓約書」は明らかに違法私文書で、社員に対してこれを合意させたことは労基法ならびに強要罪ほか、刑法に反する不法行為である疑いが極めて強い。
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特に8項、9項は、労基法16条・賠償予定の禁止に違反する
具体的にどの法令に違反しているかを一覧にすれば以下のようになる。
労働基準法16条 賠償予定の禁止
労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額の予定をする契約を締結することを禁止する。
※アームは「誓約書」8項、9項で「入社後1年未満で退社することになった場合は、貴社(アーム)が育成費用で被った損失金を払い、貸室賃貸借書に基づき違約金を払うことを約束いたします」などと記載している。明白な法令違反だ。こんな契約をさせる会社は、もはやカタギではない。
刑法223条 強要罪
不法労働契約に合意する誓約書に署名させた強要罪
※捜査によっては脅迫罪もあり得る
さらに
労働者派遣法違反
同法第31条の2 待遇に関する事項の説明 違反
同法第33条 派遣労働者に係る雇用制限の禁止 違反
同法第34条 就業条件の明示 違反
同法第34条の2 労働者派遣に関する料金の額の明示 違反
ならびに
労働基準法違反
同法第32条 法規労働時間 違反
同法第37条 時間外、休日及び深夜の割増賃金 違反
同法第39条 年次有給休暇付与義務 違反
もちろん、私は法律家ではないし労基署職員でもないので、詳細な部分については法律構成が違ってくる余地もある。
しかし、これだけの違法条文が並んだ「社員契約の誓約書」など、見たこともない。これが、人気ドラマ『相棒』に主要スタッフを送り込んでいる人材派遣会社アームが恒常的に行っている不法行為の実態だ。
どちらがウソをついている?
8月23日、私は『相棒』からの降板を告げるために、東映TVPライン・プロデューサ―の山崎と、最後の晩餐ならぬ最後の面談を、東映東京撮影所・本館2階の会議室で行った。
そこで私は、問題のアーム「誓約書」について、山崎に質問をした。私はすでに証拠の写真を保有していたが、山崎がなんと答えるかを確認する目的からだ。
私は談笑を演じながら「アームは1年で辞めたら違約金を払えなんていう誓約書を書かせるらしいじゃないか」というと、山崎は、失笑しながらこう答えた。
山崎
「ああ、それは2年前までのことで、いまはないです。改善してます。以前に誓約書を書かせた社員たちには、アームから「違約金とかの契約条項は無効だからね」と口頭で通知して改善したと、アームから聞いてます」
※2023年11月22日 追記
この会話の音声データの反訳(文字起こし)は「相棒の闇」⑧東映、宝塚式「なかった」戦略で開き直る? で公開している。
何度もいうが、そもそも「契約条項」だの「改善」などという話ではなく、アームの既遂犯罪のことを言っているのだが、山崎には、アームの不法行為の重大さがまったく理解できていないようだった。
山崎の話は、あくまでも「アームから改善したと聞いている」ということだった。
そこで私は、2年前(2021年)以後にアームに入社した社員スタッフに確認をした。そのときのLINEの記録が以下である。
私
「おはようございます。先日のアームの誓約書の件ですが、藤田社長か「草刈氏」に「あの誓約書(1年以内に辞めたら違約金等)は無効になったからね」と通知されましたか?今年になってから。」
スタッフ
「いや、自分は聞いてないですね」
このLINEでのやりとりは、私と山崎との最後の面談から2日後のものだが、相手は「誓約書」が廃止されたはずの、2021年以降にアーム社員となった人物だ。存在しない違法「誓約書」に署名できるはずがない。
つまり、山崎が私にウソをついたか、アームが山崎に虚偽報告をしていたかのどちらかになる。
疑惑の東映TVP
では、アームが「誓約書は廃止しました」と東映TVPに嘘をついていたのか?
本稿①で述べたように、私は東映TVPを信じたい気持ちの方が強い。しかし、過去の山崎のメールには、疑惑を持たざるを得ない部分があった。
本稿①冒頭に述べたとおり、私は就労2カ月目の8月末で『相棒』を降板したが、実は最初の7月末で降板する意向を山崎に告げていた。
それは、すでに仕事を始めていた私自身に対して、アームからも東映TVPからも、なんらの契約書面が送られてこなかったからだ。
ただ、この業界では、制作実務が先行して、報酬交渉や契約手続きがあとになるということは珍しくない(それが当業界の根本的な問題なのだが、ハリウッドでもよくある話だ)。
特に撮影所での制作は、誰かの紹介で初めて入れる種類の仕事だから、人間関係ありきとなる。東映での仕事が初めてのスタッフでも「まあ、報酬はこんな額になるんだろうな」という、業界での相場観(前回②参照)をあらかじめ共有しているから、余程のことでもない限り「口約束」で済ませている業界ではある。
法律実務においても、「契約」とは、契約書という紙切れがなければ成立しないわけではない。「口約束」も法律上、契約と認められるケースは普通にある。
しかし、今回の『相棒』は私にとって初めての東映TVPとの仕事だったし、第一、派遣元はアームのはずが報酬額を提示せず、派遣先の東映TVPが私と金額交渉をして決定しているのだから、最初からおかしい。
それで私は「契約書がないのは、どういう理由か?」というメールを山崎に送り、返答がなければ7月末で降りる旨を告げていたのである。
この私の意向に対する、山崎の返信が以下だ。
山崎(メール抜粋)
「いまのところ、口頭のみで進めてしまっているのが現実です。
契約手続きの整備されていない状況については、弊社の喫緊の課題として、確立する作業を開始しているところです。
今回の不備に関してはどうかご容赦いただきたく、伏してお詫び申しあげます。
どうか、今後ともお力添えのほど、よろしくお願い申し上げます」
このときは、私はまだ問題の「誓約書」を知らなかったので、山崎の誠意を認めて、とりあえず、簡単な条件を相互確認したメールだけで、それ以上は言及しなかった。
すでにスタートしていた『相棒』で、ライン・プロデューサ―の山崎が忙殺されているだろうことも容易に想像できたので、事後対応で良しとしたのである。
だが、いまになって読み返してみると、山崎のこのメールには、不可解な点がある。
「弊社の喫緊の課題として、確立する作業を開始しているところです」
えーと?東映TVPでの「喫緊」が、どれくらいの緊急性のことを意味するのか、私には想像もつかないが、2年前にアームの違法「誓約書」を廃止したというからには、そうするしかないマズイ事態があったはずで、それが労働契約に関する問題であったことは想像できる。
それなら、東映TVPとしての、派遣労働者に対する労働契約の整備状況や、その実施についても見直され、スタッフの労働契約問題は、とっくに改善されていて当然ではないだろうか?労働契約問題は、アーム側だけに義務がある話ではないのだから。
本稿②に既述のとおり、東映は『相棒』も担当したことがある元東映社員女性からも、2年前に、セクハラと過重労働による残業代未払い問題を告発されて、マスメディアに書かれている。
それが、いまになっても、「契約書はないのか?」と私に聞かれてから「弊社の喫緊の課題として、契約手続きを確立する作業を始めたところ」などと答えているのだから、「喫緊」どころか、東映TVPは「契約手続きの整備」などやる気もなく、すべての契約を「口頭」でやっていると開き直っているのと同じではないか。
水谷豊氏との出演契約も、社外から入っている撮影などの技術会社との契約も「口約束」なのか?そんなはずはないだろう。企業として、きちんとした契約書は「相手を選んで」締結しているはずだ。
要するに、アームの人材に関してだけ、契約書が存在していないのではないか?
その理由は、アームと東映TVPの法律上の立場や、責任の所在を曖昧にしておきたいという、両社の思惑だろう。すべては慢性的に不足しているスタッフを掴まえるためだ。
どう考えても東映TVPが、アームの不法行為を知らないはずがない。山崎は「あの誓約書は、2年前になくなったと聞いています」などといったが「聞いた」だけでどうするんだ?なぜ、明確に「廃止されました」と言えない?
また、なぜ派遣先事業者の東映TVPが、私の報酬を決めて、その銀行振込だけはアームがやっているのか?という、不可解な役割分担についても、結局、アーム社長・藤田氏も、山崎も明確に答えなかった。
さらに疑惑の、元映画監督・草刈の呆れた言い訳
ただ、おもしろいことに、アーム「人事部長」で元映画監督・草刈だけは、私の質問に明確に答えていた。
私
「どうして、派遣先の山崎が私のギャラを交渉するんですか?私の派遣元はアームでしょう?」
草刈
「藤田(アーム社長)は、映画とか業界事情がなにもわからない人間だから、山崎に決めさせた方が早いから。それで決まった金額が、東映TVPからアームに払われて、アームが手数料と税金を引いて、振込しますので」
何をいっているんだ、こいつは?と、私は内心で唖然としながら、草刈の説明を聞いていた。
百歩譲って、そのやり方が適法だとしても(完全に違法だが)、それならそれで「アームが派遣した労働者の報酬は、派遣先の東映TVP山崎が決定し、その金額に応じた派遣手数料を加算した金額を、東映TVPがアームに支払い、アームが手数料と税を差し引いて労働者に振込入金する」とした、労働契約書を私に渡せばよかろう。
だが、書面の交付は一切ない。実質的には、東映TVPとアームによる共同不法行為となる疑いが強い現状のままなのだ。
続いて私は、草刈に「東映撮影所の事情や業界のことなら、先輩(草刈)が一番詳しいんだから、先輩がスタッフのギャラ交渉をやったらいいのに」といった。実際にも、それが派遣元であるアームの義務だ。
ところが、草刈はとんでもないことを口走った。
草刈
「そこまで、おれがやったら、身体が辛いから」
「この野郎、何か隠してやがるな」と、私が最初に確信したのが、これら草刈による「明確だがデタラメ」な説明を聞いたときだったのである。
なにも隠していないなら、法学部卒で仮にも人材派遣会社の「人事部長」だという草刈は、基礎的な労働関連法さえ知らないということになる。
だが、いくら草刈が無知だとしても、あの「誓約書」が違法だということくらいは承知のはずだ。だから、書面の写しを社員に渡さない(まあ、渡しても渡さなくても無効だが)。
では、そもそも「映画・ドラマ制作のことを何も知らない」社長が経営する不法人材派遣業者・株式会社アームとは、いったい、どういう会社なのだろうか?
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2023/10/26
『相棒』の闇 ④
アーム社長の本業は、練馬の不動産屋
本稿は、国民的人気ドラマ『相棒 season 22』(テレビ朝日放送)の裏に隠された闇を、1~4話までスタッフだった制作当事者の私が告発する第4回である。
昨日は、初回拡大スペシャル「無敵の人」後編となる第2話が放送されたが、そのストーリーは、巨大な警察権力の陰謀に立ち向かう主人公・杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)の、警察官でありながら反権力という孤高の闘いを描く内容だ。
私はあんなにカッコよくないが、映画界の末席に身を置きながら、映画界の巨大権力でもある東映グループ内部の腐敗を告発するという意味では、私もまた「無敵の人」なのである。その撮影準備を私がやっていたという皮肉な事実は、なにやら天の采配めいている。
さて、前稿までに述べた、『相棒』をはじめとする、東映TVP制作のテレビドラマ作品にスタッフを投入している不法人材派遣会社・株式会社アームとは、結局、何者なんだ?という話をしよう。
結論を先にいえば、東映専門の不法人材派遣業者アーム社長・藤田高弘氏の本業は「練馬の不動産屋」である。
藤田氏は、人材派遣会社アームの本社事務所を、東映東京撮影所内に置きながら、練馬区で営む「株式会社Room」という、町の不動産屋の社長を兼任している。親も不動産屋で、藤田氏は2代目というわけだ。
藤田家が経営する不動産屋は、東映撮影所近隣の賃貸物件を、多くのスタッフらに仲介していた縁もあり、昔からアームとの関係があった。
スタッフたちは、「早朝から未明まで」休みなく働くことになるので、自ずと職住近接が望ましくなる。
東映では通勤の交通費が出ない。若いスタッフは賃金も安いから、撮影所から遠いところに住むだけで、交通費が生活を圧迫する。そして、なによりも睡眠時間を確保するため、撮影所に近いエリアに住む人たちが少なくない。こうして、スタッフを束ねるアームと、その住居を手配する藤田氏の、互いの利害が一致する関係性が、いつのまにか構築されていった。
やがて、アームの先代社長が亡くなったことから、藤田氏が経営を引き受けるかたちで現在に至った。だから、藤田氏はアームの創業者ではない、映画・テレビドラマ業界に無知な、異業種の商売人なのである。
本稿①で述べたように、私は、1984年(昭和59年)=19歳のときに初めて東映東京撮影所の門をくぐったのだが、その時代からアームという会社は撮影所内に存在していた。労働者派遣事業法が施行される前の時代だ。私自身、当時のアームに登録するかたちで、東映撮影所で映画の助監督をしたことがある。
※劇場版『仮面ライダー 世界に駆ける』が、私の名前が助監督として映画のクレジット・タイトルに記載された最初の作品である。
仮面ライダー世界に駆ける - Wikipediaja.wikipedia.org
いま思い起こせば、当初からアームは「ブラック」だったのかもしれない。くだらんダジャレで恐縮だが、まさに「仮面ライダーBLACK」の時代だしな。
元アーム社員から届いた匿名投書
東映撮影所との長いつきあいのうち、町の小さな不動産屋が、東映撮影所への人材派遣を担うようになったというわけだが、要するに、アームでは不法に新入社員を引き入れて東映から派遣手数料を取ると同時に、当のスタッフからは東映東京撮影所に至近のアパートを「社宅」として貸す一石二鳥の商売をしているのだ。
そんな不動産業者・藤田氏だから、映画事業や撮影所については、まったく無知で、実際に映画界やテレビドラマ制作業界での人間関係も、皆無といってもいいほどである。
そこに東映定年後の自らの減収を埋め合わせるべく、アームに入り込んだのが「人事部長」草刈だ。
前稿までに述べたが、草刈は、アームによる不法行為の主犯といって間違いないだろう。だって、不動産業しか知らない藤田社長が、東映を舞台にした「絵」を描けるはずがないからだ。
なにしろ、アームは事実上、東映から降りて来る人件費=スタッフの報酬を、振り込むだけの業務をしている会社だ。社長の藤田氏以下、3名ほどのベテラン社員も、撮影所に長くいるものの映画業界人ではなく、あくまでも事務方の職員だ。
だから、スタッフの人選や、業界未経験の新入社員の教育係として、草刈は「人事部長」なる名刺を持つようになったのである。
ところが、草刈はその肩書きに見合った仕事もしていないようだ。
ここで、本稿「相棒の闇」①~③を読んで、匿名投書(メール)をくれた「元アーム社員スタッフ」の内部告発を紹介しよう。
私のブログにメールが来るなど、真夏に雪が降るより珍しい。
内容を読むと、私が東映TVPの労働環境と草刈について記事にして告発したことに感謝してくれているのだから、苦手なSNSもやってみるものだ。
この元アーム社員は、私が本稿記事で一切開示していない「草刈」の実名を書いてきたので、間違いなく本物の被害当事者である。
まず、この内部通報の一部を紹介しよう。
元アーム社員スタッフ
「何より「草刈」さんからのモラハラ発言により、このままアームで仕事をするのは難しいと判断しました。
「草刈」さんに関しては新人教育として、私たちの"先生"的なポジションでした。ただ、どの作品に行っても「草刈」さんの新人だということでイジられたり変な扱いをされることも多かったです。
また、新人教育の担当と名乗っておきながら作品に配属された後は、たまに現場に顔出して文句を言いにくる(声出せ、俺が若い頃は〜)だけで、実際の業務に関しては、上司に教えてもらうことがほとんどでした。
また「草刈」さんが管理している新人の同期の中でも、休みが多い子がいたり、同じ給料なのに仕事量が違う子がいたりと、いろいろ納得いかないことが多かったです。
他にも、いろいろ思うことはありますが、なにより相棒も含め東映テレビプロの労働環境について発信してくれたこと本当に勇気がもらえました。
私自身、もう東映と関わりたくないと思っていますので、失礼ながら名前は伏せて連絡させていただきました。」
この元アーム社員スタッフは、草刈のモラハラが原因で、アームを辞めたと証言している。
私から見た草刈は「映画監督になれなかったコンプレックスを、新人スタッフ教育という”監督ゴッコ”で、夢破れた自我を保とうとしている、還暦を過ぎたクズ」でしかない。
私は2カ月ちょっとの間、草刈の「痛すぎる発言」をいくつも聞いたが、今回の内部告発メールをくれた元アーム社員スタッフが表現する「草刈像」は、私が見たそのままだ。
投書メールの中で特に興味深い点は「草刈の新人というだけで」撮影所内ではマイナス評価になっていたという証言だ。
これは私の想像と合致する。というのも、草刈が撮影所内で、若いスタッフたちに「兄貴風」を吹かせている滑稽さを、正規の東映本社の社員たちは不快に思っているであろう光景を、私自身が何度も目撃していたからだ。
「東映も知っていた」
さらに、この投書メールには、決定的な事実が書かれていた。
本稿での引用は、本人特定を避けるために、本人の許諾を得たうえで一部だけを公開したものだが、アーム問題については、東映TVPもじゅうぶん承知していたという事実が書かれていたのである。
これこそ、体験者でしか知り得ない、アームと東映TVPの間にある「相棒の闇」であり、私同様、投書の主はすでにアームと東映から去っている。
だが、私は東映TVPを去っても映画監督であり、「元映画監督」草刈と違って現役の映画監督である。
本稿冒頭で述べたが、私は、この東映東京撮影所から映画人としてのスタートを切った。
初日から数日の仕事は、松田優作監督・主演映画『ア・ホーマンス』の美術装飾応援助手だった。映画のラストシーン、路上で撃たれた石橋淩演じるヤクザが運び込まれる救急車を作った(白のバンに「東京消防庁」の文字を貼り付ける)のが、私の映画界での初仕事だった。
また、私の祖父は東映動画(現・東映アニメーション)の創立者で重役だった。だからといって、祖父の人脈が私のキャリアの助けになったことは一度もないが、私にとっての「映画」は、東映東京撮影所から始まった。
だから、本稿に述べている「相棒の闇」は、ただ単に「労基法をちゃんと守らなきゃダメですよー」という軽い話ではなく、映画・映像制作に大志を抱く若いスタッフたちを食いものにし続ける、大企業「東映グループ」内部の腐敗を告発しているのだ。
少なくとも、東映東京撮影所での慢性的スタッフ不足に対する「需給調整」という点では、東映TVPがアームの犯罪行為を黙認している疑いは極めて強いままなのである。
本稿冒頭で、『相棒 season22』前編(第1話)・後編(第2話)は、そのストーリーが、本稿内部告発「相棒の闇」とシンクロしていて皮肉だと述べた。
2話のクライマックス・シーン。水谷豊氏演じる杉下右京が、警視庁公安部部長・御法川(演・田中美央)を厳しく批判する。
杉下右京(水谷豊)
「上層部の一部は、あなたの意向に乗ったうえで黙認しているのでしょう。
私物化した権力が横行する社会こそ、テロが起きる要因となるものです」
これに激昂した公安部長は
「一(いち)警察官の君に、組織の何がわかる!」と怒鳴りつける。
すると右京は、こう一喝する
「ならば伺いましょう!
あなたに一市民の何がわかるというのですか!!」。
この一連のセリフは、私が持っている決定稿と呼ばれる印刷台本にはないから、撮影の際に改訂されたものだ。私は撮影現場に立ち会うパートではないから変更されたことは知らず、放送を見て感心した。
もちろん、本稿「相棒の闇」は、ドラマの第1回放送日に公開を始めたから、私の告発行動と、杉下右京のセリフが関係するはずもない。
しかし、この杉下右京のセリフは、私のなかで、こう意訳される。
「東映上層部の一部は、東映TVPの意向に乗ったうえで黙認しているのでしょう。私物化した権力が横行する撮影所こそ、日本の映画業界が腐敗する要因となるものです」
22年にわたって人気ドラマ『相棒』を作ってきた東映TVP、東映とテレビ朝日は、自分たちのドラマのセリフに反するような、組織内部の腐敗を黙って見ているだけなのだろうか?
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2023/10/27
『相棒』の闇 ⑤
速報!日本映画監督協会、「草刈」に事情聴取?
噂が飛び込んで来たので、当初の予定だった「相棒の闇」⑤の内容を第6回以降に先送りにして、本稿⑤を速報とする。
協同組合・日本映画監督協会(理事長・本木克英。以下「監督協会」)が、本稿の主要登場人物になっている「草刈」を事情聴取しようという話になっているらしい。
私と面識のある、某有名監督からの情報でわかったことだが、事実であれば、東映TVPや東映よりも動きが早い。さすが「映画監督」協会というべきか。
むろん、監督協会は警察ではないから、私の知人の監督がいう「事情聴取」とは大げさな言い方だろう。
基本、監督協会は「組合員の相互扶助」の理念にもとづいて、仲間を守る!という活動をしている結社だから、要するに「草刈から話を聞いて、必要なら味方になろう」という会議でも開くことになったのかもしれない(だが逆なら、草刈はピンチだ)。
この噂が事実なら、いまだ、草刈に事実確認さえしていないだろうと思われる、東映TVPを含む東映グループよりも、監督協会は俊敏に反応したということになる。このことは、私にとって非常に興味深い。
なぜなら、本稿告発の主旨のひとつが、「映画監督」を名乗る草刈への、私の怒りだからだ。私憤でもあるが、仮にも「映画監督」としての義憤である。
監督協会と崔洋一監督の想い出
監督協会の現在の理事のなかには、あの山田洋次監督を含めて、私の存在を知っている映画界での先輩監督や後輩監督が何人もいる(監督協会の会員数は487名・2022年7月現在)。
このなかで、私に一番よくしてくれて気が合った先輩監督は崔洋一氏だった。写真家出身の崔洋一のフレームが、私は崔さんと出会う前から大好きで、崔さんの映画は必ず劇場公開初日に観ていた。崔洋一の映画は、日本映画界の最高峰たる映像のひとつだが、日本映画史的に彼の評価は不当に足りないと私は思う(在日朝鮮韓国人だから?)。
私の劇場映画監督デビュー作『心臓抜き』(1992年)という一般的どころか業界でもほとんど知られていない映画がある。まったく売れなかったが、監督協会新人賞にノミネートされて、NHKでも放送され、当時で300万円の放送料は稼いだ自主映画だ。
その公開翌年の「中野武蔵野ホール」での再上映では、崔さんの方から「おまえ、なんで、おれをトークゲストに呼ばないんだ?」という言い方で、頼んでもいないのにトークショーの出演を立候補してくれて、タダで来てくれたうえに、その後の酒席も奢ってくれた(確か、いまでも私がよく行く新宿2丁目の伝説的バー「bura」だ)。
私の映画に「崔洋一」本人役で、本格的に出演してくれたこともある。崔さんとは長年の戦友だった成田裕介監督(『あぶない刑事』『ビーバップ・ハイスクール』が有名)も”崔洋一の助監督”役で一緒に出てくれた。
大先輩監督2人を役者として日活撮影所のセットに呼びつけて、なんと朝まで完全徹夜の撮影につき合わせてしまったのだが、私はなにも悪いとは思っていなかったし、崔さんも怒るどころか「まあ、おれも役者待たせるしな」とか言いながら、カジノのセットで成田さんと賭け事をしていたのを思い出す。
撮影が朝に終わって、用意しておいたギャラを崔さんと成田さんに渡そうとしたら、成田さんは「おまえからカネなんて受け取らねえ」と、すごくカッコよく固辞されたが、崔さんは、成田さんに「バカ、おまえ、こういうのは貰っとくんだよ」と言いながら満面の笑顔で、私から封筒を受け取った。
30年前の話だから、もうバラしていいと思うけど、実は崔さんとは最初からギャラ交渉が成立していて、私の言い値を崔さんが即答でOKしていたのだ。
このとき私が崔さんに渡した封筒には、あらかじめ合意していた現金30万円が入っていて、成田さんのは10万円だった。ごめんなさい、成田さん(でも、成田さんは1円も受け取らなかった。おれも見習います)。
崔さんと、私に個人的な交流があったことを知る人は少ない。まさか私が”死人に口なし”で、話を作っているのではない。
ただ単に、多くの人間が、”有名人”の話にしか反応しないからだ。崔洋一は誰でも知っているが「高橋玄」なんて誰も知らない。だから、その交流を誰も知らないのだ。
崔さんは、私によくしたって何の得もなかったのに、映画版『月はどっちに出ている。』(1994年)の受賞総なめ&大ヒット御礼宴会が、同作の撮影にも使われた明治記念館(神宮外苑)で開かれた際にも、この映画になんらの関係もなかった私を招待してくれた。
だから、その後、監督協会内部の権力争いで、崔さんが悪者になっていたという事情も知らない。私はその頃、日本にいなかったし、崔さんが悪いという話を聞く気もなかったからだ。
私の「映画監督」としての態度は、崔さんから影響を受けていると思う。振り返れば、私が劇場映画監督デビューする1992年の前から交流があった映画監督は、崔さんしかいない。
崔さんは、在日左翼だったが、私は民族派右翼だ。互いにそれを理解しつつ、崔さんは喧嘩屋で、私も空手二段の腕自慢だったのに、朝まで呑んでも「朝まで生テレビ!」みたいな場面は一度もなかった。
たまに「崔さんの助監督だったんですか?」と言われるが、仕事の関係はひとつもなかったし、1年に1度会うか会わないかでしかなかった。
いつ頃のことか忘れたけど、崔さんが、メディアだかネットで、反目(はんめ=敵方)に対してコメントを出したことがあった。
その啖呵は「おれを見かけることがあっても、半径10メール以内に近づかないようにな。なにが起きても責任取りかねるんで」というものだった。昔もいまも、こんな啖呵をマスコミで発言できた映画監督は、崔さん以外にいないだろう(いたら教えて)。
本稿告発をしている私の言葉として、崔さんの啖呵は、そのまま「元映画監督」草刈に送る。
崔洋一は、間違っても若い助監督に違法「誓約書」など書かせたことはない。草刈、てめえはなんだ?それで、よく恥ずかしげもなく「映画監督」を名乗って、監督協会で委員会などやっているな。
草刈に告ぐ。
おれは崔さんより気が短いから、どこかでおれを見かけても、半径20メートル以内に近づくなよ。なにが起きても責任取りかねるんで。
日本映画監督協会のみなさんへ
先述のように、監督協会には、事務局長の南場さんを含め、私を知っている先輩・後輩監督が、たぶん10人以上はいる。それにしても、南場さんという人は、謎のイケメンで、もちろん私よりも年長だから、たぶんもう60代後半だと思うけど、監督協会事務局長というより、歌舞伎町のホストクラブのオーナーみたいな「濃い」お顔立ちだったと記憶している。
ともあれ、監督協会が草刈から、本件告発にかかわる事情を聞いて、対応を検討されるというのであれば、監督協会ウェブサイトにも掲載されている、現理事長・本木克英氏の「理事長挨拶」と矛盾しない方針で臨まれるよう「元日本映画監督協会会員」にして、現職「映画監督」の私から、この旨を上申致します。
ただし、草刈は「ウソつき」なので、必要なら私も聴取に応じますよ。個人特定を忌避すべき被害者保護のため、このブログでは公開できない証拠も、私は保有しているので。
日本映画監督協会 理事長・本木克英(『空飛ぶタイヤ』『シャイロックの子供たち』など監督)
理事長挨拶 抜粋
「目下、映画・映像業界は大きな変革期を迎えています。すべての制作現場において、あらゆる暴力やハラスメントを排除していくのは当然のことであり、それを生み出してきた幾多の要因を真摯に検証し、具体的に改善していかなければなりません。2019年より映画製作者連盟や映職連など映画・映像諸団体が取り組む「映画制作現場の適正化」ガイドライン策定に私たちも参加してきましたが、この取り組みが実効性を持つよう今後も積極的に関わっていきます。当協会内においても、これまで許容されてきた価値観や意識の改革を図るべく、これらの問題に関する議論を重ねております。」
全文は以下を参照されたい。
https://www.dgj.or.jp/about/msg/
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2023/10/28
『相棒』の闇 ⑥
速報!その2 日本映画監督協会、墓穴を掘る?
人は、良いニュースを知ったら家族や友人、知人、ひいては世間に、やがては国際社会にまで広めたいものだ。
だが愚かな者は、人様に知られたくない話の拡散を防ぐためなら、一種のパニック、ヒステリーで、周囲の人間に「このことは、絶対言うなよ!」「あいつとは連絡を取らないでくれ」などと箝口令(かんこうれい)を敷いたりする。
これこそが組織防衛の名を借りた「強要」であることを、問題の「元映画監督」草刈(または私のアンチ)は、いまになっても理解できないようだ。
前回⑤で「速報」とした、日本映画監督協会による「草刈」の事情聴取の件で、私に連絡をくれた同協会に所属する某監督から、本日午前中に、以下のLINEメッセージが届いた。
某映画監督
「玄さんすみません、某協会メンバーから緘口令が出たので、今後玄さんと連絡を取るのを止めさせていただきます。
LINEはブロックしますが、気を悪くしないでくださいね。
あと、緘口令の件はくれぐれもブログには書かないようにお願いいたします。」
※緘口令(かんこうれい)=組織または特定の事象や秘密を他人に言うこと
を禁ずる命令。箝口令とも書く。私は後者の漢字を常用する。
あのさあ、某映画監督さん、こんなこと言われて、おれが黙っていると思ったんですか?
私などは、逆に「書いてくれ」というメッセージだと思ったので、本稿「速報2」としたのである。
だって、私にLINEをくれた某監督氏は「箝口令」などといっているが、要するに問題の「草刈事情聴取」の話を、組織の外部の人間に話すなと脅かされたわけだからね。
そうなると、話のスジからいって「高橋に漏らすんじゃない」と言ったのは、草刈自身だと考えて無理はなかろう。
もちろん、こいつの告発がウザい!崔洋一監督の名前まで出しやがって!営業妨害だ!などと、単に私が嫌いな監督協会員が「高橋に情報を与えるな」と命じた可能性もあるが、いずれにせよ、監督協会側は、巨大な墓穴を掘り始めたことになる。
もしこの箝口令なり「高橋玄との通信禁止令」が、日本映画監督協会総意の決定だとしたら、問題は草刈だけに留まらない、日本映画監督協会の「社会的な死」を意味するほど重大な事態となろう。
ただ、同協会が昨日今日で総会を開いて、本件を議決することは時間的に不可能だし、当該LINEでも「某協会メンバー」から緘口令が出たとあるから、監督協会の公式決定ではなく、「草刈」または「アンチ高橋玄」個人による箝口令ということだろう。
LINEがブロックされたから、箝口令という名の脅迫を受けた某監督さんへの返信は既読にならない。だから、ここに返信を転載しておきますね(笑)
既読にならない私の返信
「箝口令は勝手だけど、協会は貴殿のLINEまで検閲するわけ??そうでないなら、個人的にブロックまでする意味がわからないが、気を悪くするどころか呆れ果てるだけだ(笑)」
ジャニーズ事件問題と同根の「カルト的集落社会」
本稿をここまで進めながら、私が常に「本質は同じだよなあ」と思っていたものが、世上を騒がせている「ジャニーズ事件」だ。
むろん、本件「相棒の闇」は、犯罪の規模として、ジャニーズ事件と比較できないと思うが、ものごとの「本質」というものは、結果的に起きた事象の大小ではない。チャップリンの映画『殺人狂時代』での名ゼリフ「1人殺せば殺人者だが、100万人殺せば英雄だ」は、殺人という行為の「本質」について述べたものだ。
本稿で私が告発する「相棒の闇」は、①で書いたとおり『相棒』という作品だけにかかわる話ではない。同ドラマを制作する、東映グループの1社「東映テレビ・プロダクション(東映TVP)」と、その現場に社員と派遣労働者を入れている人材派遣会社・株式会社アームの不法行為を暴くものだが、これらは撮影所のなかで起きている「出来事」に過ぎない。
だが、もっとも重要な点は、「なぜ、このような出来事が黙認され、それが続いているのか?」という原因の「本質」を告発することにある。
日本人的集落社会での同調圧力は、それが正(プラス)に働くときには驚異的な成果を生むが、負(マイナス)に機能したときには、恐ろしい悲劇をも招来する。カルト化だ。
大げさではなく、撮影所という場は、カルト的集落社会でもある。「選ばれた人間」しか立ち入ることが出来ないという時点で、多くのスタッフたちは、無意識で「優越感」を得る。ひどい場合だと、自意識で自分が「特別な存在」だと妄信するスタッフを生み出す。その典型にして最悪の事例が、本稿で糾弾する「草刈」だ。
そして、本稿で告発する、アームと東映TVPの「無契約」問題や、アームによる労働基準法違反と派遣業法違反、それら労基関連法のみならず、違法「誓約書」を新入社員スタッフに書かせるという、強要罪の疑いが強い草刈の問題(とにかく「良くないニュース」)は、その関係者全員が、示し合わせてもいないのに「押し黙って」なかったことにする、カルト化集落社会の異常性を顕現させた一例なのである。
これは本件に限らず、極めて日本型の現象だ。私は英語話者でもあるが、この傾向は、英語圏で英語で生活した人なら「日本の特殊性」として、多くの人々が共感することだと思う。日本語で作られた共同体と、英語で作られた共同体社会の違いだ。
かといって、私は日本人としての民族性を誇りにする「右翼側」だ。要するに、このような「押し黙る日本」は、戦後になって完成された社会なのである。歴史をみれば明らかなように、江戸時代などは、3000件を超えた百姓一揆を代表とする庶民の反乱が多かったし、いまでいうSNSの原点は「直訴」だといっても良いだろう(この話は長くなるから別稿に譲る)。
ジャニーズ事件問題も、被害当事者の声を、メディア大船団が押し黙ってスルーしたことで、英国BBC放送という「黒船」によって、世上に表出した。出来事の程度は違っても、問題の「本質」は本稿「相棒の闇」と同じである。
さて、SNS音痴の私がいままで知らなかったことだが、この「note」では月額500円で、みなさんからのコメントを受けられるというので、今回からコメント可とした。「相棒の闇」のおかげで、とんだ出費だ。
草刈本人もアンチも、映画監督協会で箝口令を敷くなどという、回りくどいことしてねえで、当ブログのコメントに文句を書き込めよ。
それから、東映グループやテレビ朝日、日本映画監督協会に明言しておくが、本件「相棒の闇」が解決されたときには、私は当該の本稿連載部分をすべて削除する用意がある。もとより、このブログは、こんな「映画界の恥」を述べるためにあるのではない。
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2023/10/31
『相棒』の闇 ⑦<とりあえずの最終回>
東映法務部と顧問弁護士
本稿①で述べたとおり、すでに私と東映法務部と東映顧問弁護士は、本件私が「相棒の闇」と表題した当該の問題について、1時間にわたる面談を終えている。その内容のすべては、私と東映側双方のICレコーダーに録音されている。その面談で、私が東映に訴えた要点は、本稿で述べた以下3点である。
①アームと草刈による、複数の不法行為の事実
※現在、改善していたと仮定しても「既遂犯」であり、時効が成立してい
ない以上、犯罪容疑者らが『相棒』制作にかかわっている事実
②故意の有無を問わず、東映TVPがアームの不法行為を幇助している事実
③当該事件の解決ならびにスタッフ労働環境の改善を臨む
これらの事実を立証する証拠も提出した。
私は法曹人ではないが、月に1回以上は法律事務所や裁判所での会議に出席して、裁判支援のボランティア活動を継続しており、普通の人よりも法的リテラシーを身につけている。そうした活動を、だいぶ長くやっている。
だから、本稿告発の端緒となった、違法「誓約書」を見たときに、これが法律のド素人たる草刈の作文であろうことは、一見してわかっていた。
アーム名義の違法「誓約書」 人事部長・草刈が作成した疑いが極めて強い
特に「9」は、労働基準法第16条「賠償予定の禁止」に違反している
もしもこれを書いたのが弁護士なら、除名(弁護士資格を失う)の懲戒処分だろう。
私は、一定の証拠を取集した後には、東映法務部と顧問弁護士との面談へと場面を切り替えた。ここまで事実が明白である以上、実行犯本人らとの話など時間の無駄になるだけだからだ。
こうして、東映グループ全体のガバナンスを統治する立場である法務部と顧問弁護士と私との三者面談は、2023年10月10日に行われた。
面談の最後に、東映顧問弁護士は、本件「相棒の闇」については事実確認をして対応し、その結果についても、私に対して「なんらの報告もしない、ということはない」と言明している。
ついでにいえば、週刊誌の取材を受けたことや、私自身でも本件を告発する可能性があるとの申し置きに対しても、顧問弁護士は「それはご自分の責任で自由にやって下さい」と発言している。
だから、私はこの「相棒の闇」を告発したのである。
とりあえずの最終回となる理由
東映法務部からの回答
本稿は、とりあえずは今回が最終回となる。
理由は、本件告発の概要はすでに述べたし、キリよく10月以内に本稿を終えたかったからだが、そう思いながら本稿を書いていた10月31日14時39分に、東映法務部からメール報告を頂いたことで、現時点での決着をみたからである。
まずは、東映法務部からのメール全文を公開する。
※「草刈」の実名は伏せる。
「高橋玄様
お世話になっております。
2023年10月10日の面談時にお伺いした事項について、当社顧問弁護士も交え、事実関係を確認の上、各対応を行いましたので、以下ご連絡申し上げます。
まず、株式会社アーム(以下「アーム」といいます。)が新入社員より提出を受けていた誓約書(以下「本誓約書」)は、2023年4月に作成され、同時点における在籍社員から提出を受けたものとのことでした。
本誓約書については、株式会社東映テレビ・プロダクション(以下「テレビプロ」といいます。)が2023年6月頃にその存在を認識し、その後直ちにアームに対して破棄するよう要請しており、アームは7月1日をもって利用を停止するとともに、同日をもって各誓約書を破棄していたとのことです。
もっとも、本誓約書の破棄について、本誓約書を提出した各アーム社員が正確に認識していなかった可能性があることから、テレビプロからアームに対し、改めて各社員に誓約書が破棄された旨を通知するよう求め、本誓約書を提出した全社員に「誓約書については無効となった」旨を電話にて伝えております。
また、「草刈」氏(※メール原文では実名)が、テレビプロ及びアーム双方の業務委託先となっている点については、草刈氏とテレビプロとの契約関係を解消することといたしました。
その他、テレビプロがアームの派遣社員と報酬の条件交渉を直接行っていた点についても、かかる運用を直ちに改善するよう指示及び申入れを行い、今後テレビプロはアームの派遣社員の賃金の決定に関与せず、アームが適切な就業条件通知を行うことといたしましたので、併せてご報告いたします。
当社は、今後も、映像制作業界の健全な発展のために、映像制作に関わる方の働く環境を整え、不適切と思われる事象については速やかに改善していく所存です。
よろしくお願いいたします。
東映株式会社
法務部」
私からいえば、東映法務部は、本件告発に対して誠実に取り組んでくれたと思う。だが若干、苦しい釈明も含まれる。違法「誓約書」は、アームが新入社員から「提出を受けていた」のではなく「書かせていた」のだから(第一、こんなものを社員から提出するわけがない)。
さらにいえば、東映TVP・山崎は、当該の「誓約書」を「2年前に廃止した」と、私に断言していた(録音がありますけど、東映法務部として必要であればお送りしますよ)。
まあ、それであっても、前稿までに述べたとおり、東映東京撮影所は、私が映画人としてのスタートを切った、思い出深い地だ。映画監督となってからも、この撮影所のスタジオでセットを組んで撮影したり、私の映画を東映本社の映画館(丸の内TOEI)で封切りしてもらったこともある。
私が東映に対して、本件内部告発を持ち込んだ10月10日から、わずか20日あまりで、こうした対応を見せてくれた東映法務部と、東映上層部には、素直に敬意を表したいと思う。
いちいち詳細を公開しないが、本稿に対しては、『相棒』ファンや映画業界人、有名俳優やプロデューサー、元アーム社員、そして東映社員の人々からも、応援のメッセージをいただいていた。
私のブログ本稿を通じて、「相棒の闇」という出来事が存在することを、社会的に告知する目的は果たし、上掲、東映法務部から報告もいただいたことで、「一応」の決着にはなるだろう。
本当の解決はこれからだ
しかし、東映法務部からのメールでは、「草刈」が東映TVPをクビになったと読める内容が記されてはいるものの、アームとの取引は続ける旨が述べられている。
つい最近になってわかったという(これは怪しいけどね)アームの不法業態に対して、すぐに全面的なアームとの取引中止とすることなどあり得ないことくらい、私にも理解できる(アームにも悪意なく働いている社員がいるし)。
ただ、東映グループには、本件問題の「本質」を見誤らないようにお願いしたいものだ。
一貫して述べていることだが、本稿は、アームと草刈による、刑法・民法上の不法行為の疑いについて告発したものだ。
アームと草刈は、刑訴法上では3年、民法上では10年が経たなければ時効が成立しない、事件の当事者であり続けているという話なのであって、今回の東映グループの対応によって、アームと草刈の犯罪行為の疑いが晴れたわけではない。
犯罪行為は「いまはやってないから」「反省したから」などという理由で、チャラになるものではない。それで済むなら警察は要らないし、あらゆる犯罪者も処罰されなくて良いことになる。
労働基準監督署と警察が、その気になればアーム社長・藤田氏と草刈を逮捕することだって、あり得る状態のままということである(まあ、労基署も警察も、面倒くさいから、その気にならないと思うけどね)。
捜査機関が動かない限り、知らんぷりをしておけば、誰も損をしないし、こんなちっぽけなブログの告発などは、やがて風化することに間違いはない。
だが、これが事件にならないことと「社会的信頼」は、まったくべつの話だということを、『相棒』関係各社は忘れない方が良いと思うね。
世界的映画監督の祖父から継いだ「誇り」
これは以前、当ブログに書いたはずだが、東映動画(現・東映アニメーション)創立者のひとりで、私の祖父である日本戦後初の長編カラーアニメーション『白蛇伝(はくじゃでん)』(1958年/東映動画作品)の監督・藪下泰司(やぶした たいじ)は、その世界的な功績に反して、妻と息子2人、娘1人(私の母親となる)と北新宿の借家住まいで、自分で東映を辞めたあとの晩年は貧しい暮らしだったという。
ある日、苦しい家計に不満を募らせた息子(私にとっては叔父)が、父に
「おやじ、カネと名誉のどっちが大事なんだ!」と聞いた。
すると藪下は「名誉だ」と即答したという。
私は、その映画監督の孫だ。藪下の息子や娘は全員、大企業に就職して、誰も映画界やアニメーション業界には行かなかった。名誉よりも「いい暮らし」を選んだからだろう。かれらの父親で「名誉」に生きた藪下は、最晩年は、専門学校(東京デザイナー学院、東京写真専門学校)の講師として、アニメーション制作を目指す人たちの教育・育成に専念した。
奇しくも、本年2023年は、藪下泰司生誕120年にあたる。
今回の内部告発に対して、東映法務部は一定の判断を示してくれた。
だが、概して権力的な影響力を持つ企業は、名もなき告発者に対して、呆れるほど同じ態度で、タカを括る。そして最後は、必ず社会的な制裁を受けることになる。
「天網恢恢(てんもうかいかい)疎にして漏らさず」という老子の言葉は、まさに現代の、全世界インターネット化社会にこそ正鵠を射る。
つくづく現在はSNS時代だ。SNSが不得手な私の告発によって、過去にアームと草刈の被害者となった人までがメールをくれたことで、私のひとり相撲ではなかったことも証明された。
アームと実行犯・草刈は、東映本社に対して、いかに私がトラブルメーカーだったかというような作り話をして、だから本件告発は事実無根だと釈明したかもしれない(日本映画監督協会に対しても)。だが、それは論点のすり替えでしかない。
前述のとおり、本稿告発は、アーム=草刈が不法行為に及んだという事実、その時効は成立していないという事実に言及しているもので、仮に私が悪人だろうが善人だろうが、草刈らの犯行の事実は動かないのである。
そのうえで、現時点では、東映グループは今後もアームとのスタッフ人材需給の取引関係を続けるという方針なのだから、「ブラック」な業態の温床は残されたままというべきだろう。
東映グループには「東映キャリア・ワン」という人材派遣会社もあるというのに、どうしてもアームと縁が切れない、特別な理由でもあるのだろうか?(その理由も私はとっくに知ってるけどね)。
私が捨てた報酬
さて、半年続く今回の『相棒 season 22』の制作を2カ月で降板した私の月額報酬を、最終回で明らかにすると本稿①で述べていたので、触れておく。
東映社内の細かな報酬規程を公開しても一般読者には用がないだろうから、私が今回の『相棒』で2カ月働いた報酬の総額をいっておく。私は7月、8月の合計で124万円(税込)の報酬を得た。
助監督チーフ・クラスの月額報酬の相場70万円から10万円下げた金額の提示だが、各月ごとに増額するという約束だったから、『相棒 22』に最後まで参加していたら、その半年間で、およそ400万円前後の収入になっていたことになる。一般的な会社員からすれば、じゅうぶんに高額だろう。
しかも私の場合は、出席が必要な会議以外は、毎日撮影所に通勤することもなく、自分で勝手に自由なシフトを組んで、在宅メインの仕事をしたから、安い労働賃金が当たり前のような日本の現状からいえば好待遇だ。
だが、私たち個人事業主としてのスタッフの仕事は、雇用が継続される保証がない。東映TVPも、あくまで月契約だ。
ひと月の報酬額だけをみれば、好待遇だと思われるかもしれないが、それが1年で1度だけの給料だったということも珍しくないのが、この業界だ。
それでも『相棒』の話を受けたのは、本稿①で述べた「テキストアート・ディレクター(TAD)」という、東映TVP・山崎が提案した、業界初の新たな試みに価値があると思ったからだ。
もしも私が、収入の為に思考を停止させて、自分が食うために若者を騙し、脅して働かせながら、先輩映画人ヅラをして兄貴風を吹かせているだけのクズ野郎の風下に立つことが出来たなら、好待遇の『相棒』を、こんな理由で辞めることはなかっただろう。
実際に、私に支払われた報酬原資も、東映TVP=東映グループからの制作費であり、アームは単なる「振り込み係」だ。アームと草刈が、クズ野郎でも、そんなことはスルーして高い月給の為に仕事を続ければ良い。それが普通だろう。
でも、おれって普通が出来ないんだよねえ(笑)。前述した「映画監督の血統」だけの話ではなく、ただでさえ気が短いのに、脳梗塞後遺症でさらに神経が鋭敏になっていて、カネの為にクズの世界に耐えることが出来ない。それにアームは、私を現場に入れることで派遣手数料を取っている。
不法派遣業者の食い扶持のために使われるほど、私はボンクラではない。我慢していたら、私の方が逮捕されるような事件(草刈にケガをさせるような)が起きるかもしれないから、自分から離れたのである。
このことは、本稿記事に匿名で告発メールをくれた元アーム社員スタッフの「何より草刈さんからのモラハラ発言により、このままアームで仕事をするのは難しいと判断しました。」との証言と一致する。草刈の悪性の高さは客観的な事実だといっていいだろう。
東映法務部は「東映TVPと草刈との契約関係を解消」したというが、草刈が、あくまでもアームには残り、今後もべつのかたちで東映撮影所で就業するのであれば、不法行為やパワハラの火種は消えていないことになる。
「組長」あっての映画界
「組長不在」のテレビドラマ界
それよりも、私にとって今回の『相棒』で、数十年ぶりにテレビドラマにかかわって改めて痛感したことがある。それは「仕切るやつがいない」ということだ。
私は劇場映画監督デビューから現在まで、基本はインディペンデント(独立)映画製作者だ。億を超える製作費も、毎回、自分ひとりの名でハンコを押して借りたり、投資して貰ったりして映画を作る。それで、いまだに投資が利益を生まなかったり、返せていない借金だってある。いろいろあるが自己責任がすべてで、人のせいにしたことはない。
映画史をみても、映画監督は映画製作者であることが当然でもある。だから「自分の映画」を撮れるのだ。
要するに、意思決定の最終責任者は映画監督で、プロデューサーがいる場合でも、せいぜい2人の「トップ」が誰なのかが明確にわかっている。なにか問題があれば、すべてはそれらトップの責任だ。
ヤクザにたとえれば、映画監督は「組長」ともいえる。だから、映画の撮影隊は「○○組」と名乗る。私も長い間、それでやってきた。
ところがテレビドラマは、まるきり違う。
映画の習慣をそのまま頂いて「○○組」などというものの、それはカッコだけのことで、実際にはすべての落とし前をつけるべき「組長」がいないのだ。
『相棒』の「監督」ちゃんたちは、演技がどうだとか、小道具や衣装の注文は出来ても、予算に口は出せないし、キャスティングにすら手を出せない。仲の良い無名の役者を端役で起用しようとしても、それさえ簡単にいかないのがテレビドラマの世界だ。
そのうえ、東映は大株主でもあるテレビ朝日には逆らえないし、そのテレビ朝日だって、提供スポンサーには頭が上がらない。
こうなると、本件「相棒の闇」のような問題が発覚しても、いったい誰の責任でこんなことになっているのだ?という問題さえ、誰も解けないし、解決する気もないまま、テレビドラマという商品(作品ではない)を製造する作業だけが黙々と続けられるのだ。
私は、そんな馬鹿馬鹿しいことに余生を使いたくない。大病を患った3年半前から特にそう思っている。たった独りでも、映画人としての誇りを忘れないオッサンがいてもいいだろう。ひとことで、私は、まったくテレビドラマには向かないというだけの話ではある。
さて、これで「相棒の闇」を「とりあえずの最終回」とする。
ただし、私にとっての本件は「解決した」とは言い難い現状にあると思料するので、東映グループとテレビ朝日に向けて述べた、本稿一連の削除については、まだ待たなければならない。
本件について、新たな動きがあれば、不特定多数の読者諸氏に、当ブログでお知らせする。
最後に、現在放送中の『相棒 season 22』の提供スポンサーを記載しておく。当該の企業各位にも、本件「相棒の闇」を考えて頂きたい。
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『相棒』の闇 とりあえず以上
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『相棒』の闇⑧
東映、宝塚式「なかった」戦略で開き直る?
またしても事態を急変させるメールが飛び込んできたから、不本意ながら「最終回」を終えたはずの「相棒の闇」続報を公開する。
「相棒の闇」のおかげで、このブログ読者が一気に1万人を突破して、毎日ページビューの数が増えてもいるから、読者諸氏のご期待に応えて、という意味合いもある。
さて、「相棒の闇」では、このドラマを制作している東映テレビ・プロダクション(以下「東映TVP」)と、同社にスタッフを派遣している謎の人材派遣会・アームの両社から報酬を得て、違法な手段で人材を調達していた「元映画監督・草刈」の不法行為、犯罪容疑を、証拠に基づいて告発してきた。
本稿を公開する以前の2023年10月10日に、私は東映法務部ならびに東映顧問弁護士と面談して、ここでいう「相棒の闇」問題を、東映グループとして調査、対処するよう求めた。
これに対して東映は、10月31日にメールで下記のとおり、私に連絡してきた。当初は、私も評価した東映からの報告である。
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高橋玄様
お世話になっております。
2023年10月10日の面談時にお伺いした事項について、当社顧問弁護士も交え、事実関係を確認の上、各対応を行いましたので、以下ご連絡申し上げます。
まず、株式会社アーム(以下「アーム」といいます。)が新入社員より提出を受けていた誓約書(以下「本誓約書」)は、2023年4月に作成され、同時点における在籍社員から提出を受けたものとのことでした。
本誓約書については、株式会社東映テレビ・プロダクション(以下「テレビプロ」といいます。)が2023年6月頃にその存在を認識し、その後直ちにアームに対して破棄するよう要請しており、アームは7月1日をもって利用を停止するとともに、同日をもって各誓約書を破棄していたとのことです。
もっとも、本誓約書の破棄について、本誓約書を提出した各アーム社員が正確に認識していなかった可能性があることから、テレビプロからアームに対し、改めて各社員に誓約書が破棄された旨を通知するよう求め、本誓約書を提出した全社員に「誓約書については無効となった」旨を電話にて伝えております。
また、「草刈氏」(原文では実名)が、テレビプロ及びアーム双方の業務委託先となっている点については、草刈氏とテレビプロとの契約関係を解消することといたしました。
(後略)
東映株式会社
法務部
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上掲の東映法務部の回答では、「誓約書」は存在し、これを行使していたアーム人事部長「草刈」と東映TVPとの業務契約も解消することとした旨を述べている。
そこで私は11月2日、東映法務部に、追加の質問を投げてみた。
内容は、「2023年6月頃にその存在を認識」したはずの「誓約書」について、東映のライン・プロデューサ―山崎は、私よりも先に、当該の誓約書が使われた(スタッフらに書かせた)ことを承知していたと私に証言しているので、今回の、東映法務部の調査結果報告と矛盾するのではないか?という点についてだ。
ところが東映は、驚くべき再回答を寄越したのである。
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高橋様
お世話になっております。
ご質問について、ご回答申し上げます。
本誓約書に関しましては、貴殿がご提示された「誓約書」ではありますが、それ以前のものも含めて行使された事実はなかったと認定しております。
なお、その他、調査過程で得られた各人の具体的な説明を含め、かかる事実認定に至った調査の詳細については一切ご回答いたしかねます。
また、テレビプロと「草刈」氏の契約関係については、業務委託関係にあったものですが、先日のメールでお伝えしたとおり、当該業務委託関係は終了することとなり、その後、テレビプロと高畑氏の間で契約を締結する予定はありません。
なお、個別の契約関係について、これ以上のご回答はいたしかねますのでご了承ください。
東映といたしましても、テレビプロとも連携の上、今後も映像制作に関わる方にとって適切な環境を構築できるよう努める考えであります。
よろしくお願いいたします。
東映株式会社
法務部
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ちなみに、このメールは、私が「公開するものではありません」と付言しての質問に対する回答であるが、後述するように、東映が明らかに嘘をついて逃げる(もしくは事実を隠蔽する)戦術をとったので、私も前言を撤回して、このメール通信を公開する。
最初の調査結果報告では「誓約書を破棄した」経緯が述べられていた。それが再回答では「貴殿がご提示された「誓約書」ではありますが、それ以前のものも含めて行使された事実はなかったと認定しております。」というのだ。
「行使された事実はなかった」というのは、「アームと草刈は誓約書を作ったには作ったけど、それを実際にスタッフらに書かせたことはない」という意味である。
しかし、その前の東映法務部の回答では「本誓約書を提出した全社員に「誓約書については無効となった」旨を電話にて伝えております。」といっている。
「行使された事実がない誓約書」を、どうやってアーム社員スタッフが「提出」し、その後「無効になった」と全社員に告知する必要がどこにあるというのだ?
だいたい、行使されなかったのなら、アームと草刈は何も不法行為、犯罪を行っていないことになるから、東映が草刈との契約を解消する理由もない。急に草刈が「辞めます」と言ったとでも?
ニューヨーク州弁護士登場!(笑)
しかし、これはあくまで東映法務部からの回答だ。「法務部」というのは基本的には一般社員であって弁護士ではない。最近ではインハウス・ローヤー(In-house lawyer)と呼ばれる企業内弁護士が法務部にいることも多いが、東映は外部の弁護士事務所と顧問契約をしている。
法務部社員は法律家ではないから、報告する内容を間違ったのかもしれないと思った私は、念のため、10月10日に面談した東映顧問弁護士・丸住憲司(まるすみ けんじ)氏にも確認の質問メールを送った。
すると、丸住弁護士から11月14日付メールで下記の回答があった。
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高橋様
お世話になっております。
ご質問の点についてですが、調査の結果、本誓約書が行使された事実は認定されませんでした。
なお、調査過程の詳細については一切ご回答いたしかねます。
その他、東映法務部より貴殿に対して既に回答がなされているものと認識しておりますが、当該回答に加えてのご回答はいたしかねますのでご了承ください。
東映としても、映像制作に関わる方にとってより良い環境を構築できるよう努める旨、お伺いしております。
以上、よろしくお願い申し上げます。
丸住
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弁護士・ニューヨーク州弁護士 丸住 憲司
〒106-6123 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー23階
TMI総合法律事務所
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さすが、いま流行りの「ニューヨーク州弁護士」が売りの辣腕弁護士よろしく、「簡潔にすっとぼける」という弁論テクニックの基本を心得ている回答だ。
しかも「調査過程の詳細については一切ご回答いたしかねます」「当該回答に加えてのご回答はいたしかねます」と、押し売りお断り系弁護も忘れていない。
ただし、東映法務部名義の最初の回答が、もしも丸住弁護士の起案だとしたら、彼は弁護士として優秀とは言い難い。
むしろ「誓約書が行使された事実」を前提として法務部名義で回答したメールと、その次の回答による自家撞着(じかどうちゃく=自分の言行が前と後で違うこと)を指摘されて、この際「前にも後にも誓約書が行使された事実はなかった」と開き直るしか打つ手がなくなったことを、自ら露呈したも同然の回答だとしか思えないからだ。
「山崎」の証言音声データを公開
では、東映TVP製作部長代理でライン・プロデューサ―の山崎は、私にどう証言したか、ここにその衝撃の音声データの反訳(音声の文字起こし)を抜粋して公開しよう。
録取の日時は、2023年8月23日13時から、場所は東映東京撮影所 製作本部2階会議室での、私と山崎だけの面談である。
私「これ、おかしいんじゃねえの?っていう誓約書を見せられた人がいる。 労働誓約書」
山崎「・・・・」
私「1年以内に辞めたら違約金とかね、完璧にアウトですよ」
山崎「あれね、それを僕もね、先日はじめて知って、即刻藤田さん(アーム社長)に言って無効にさせました。とりあえず」
私「なるほど」
山崎「無効にして、本人たちに無効にしたとハッキリ伝えよう、ということ
で。それは藤田さんは、やったはずなんです。ただ本人たちがどこまで理解しているかわからないですけど、ただこれは問題ですよねって当然思っている。ほとんどの人が。で、その話が入って来て・・・」
私「それはどっから入ってきたんですか?」
山崎「それは本人です」
私「本人?」
山崎「本人。要はその誓約書のサインをさせられた本人が、誓約書自体は写
しもくれなかったんですけど、こっそり写メりました、と」
私「ああ」
山崎「で、その写メを持って僕のところに来たんです。で、すぐ藤田さんに
言って。これあなたの名前でこんなことやってるけど、まずいんじゃないの、いくらなんでもっていう話をして。そしたら正直、そのときも、恐ろしいことに草刈さん(会話では実名)の名前が出ました」
私「ほお!(心でガッツポーズ)」
山崎「で、藤田社長自体は、この条文がヤバイから消すというふうに言った
ら、草刈さんが、いや、こういう縛りがないとやつらすぐやめちゃうからって言って、無理くり残させたと。で、あの藤田社長は、あの、このことに関しては、気にするなって、しょうがないから口頭で、みんなには一応、言ったには言ったんだけどねって。でもまあ実際、こういうサインしちゃってるからっていうことで、そんな流れがありました。あれは僕も本当に飛び上がるほど驚きました。とんでもないですよ、本当に」
笑かすんじゃねえよ。とんでもないのは、お前も一緒だろ、山崎よ。もちろん、この会話の内容も、告発の証拠として司法警察官にわたっている。
東映社員の山崎が、ハッキリと「その誓約書にサインさせられた本人が」と証言している。「誓約書が行使された事実は認定されなかった」などという、東映法務部の調査結果報告が、まるきりの虚偽であることは明白ではないか。
東映法務部や弁護士は、この音声データを聞いていないから、まさか山崎が私に事実を話したと知らなかったか、事後に山崎の口を封じて「錯誤していただけで、よく思い出してみたら誓約書が行使された事実はなかった」ということにしたのか、そのいずれかだろう。
山崎、この件でお前が東映をクビにされたら、おれが雇ってやることも検討するから連絡して来いよ(大企業じゃないから給料は安いけどな)。
宝塚歌劇団の調査報告にみる、大企業の基礎疾患
さてこうなると、『相棒』の制作舞台裏に隠された不法行為、犯罪容疑を告発するにあたって「東映は敵ではない」との認識でいた、私の考えも改めなければならないようだ。
本稿シリーズで前述したように、世界のどこをみても、企業による不都合の隠蔽は、特に大企業の基礎疾患とさえいえる。
「不都合はなかったことにする」という、あからさまな開き直り経営戦略を、大企業である東映グループも踏襲しているということなのだろう。
奇しくも先日、タカラジェンヌ飛び降り事件の調査結果で「いじめ、過重労働、パワハラはなかった」と報告した宝塚歌劇団と、まったく同じ態度ではないか。
宝塚歌劇団「捏造と隠蔽」 週刊文春だけが知る全内幕《真相追及第7弾》タカラジェンヌ飛び降り事件【先出し全文】
https://news.yahoo.co.jp/articles/c0a7a0eed88e17e332ba2bf25fabd2dfb4d2c384
ご存じの人も多いと思うが、宝塚歌劇団は、劇団四季や青年座といった独立した劇団ではなく、阪急電鉄の歌劇事業部が運営する、いわば大企業内の一部署だ。劇団員は入団6年目までは、阪急電鉄の正社員である(その後は芸能人契約に更改するようだ)。
つまり、タカラジェンヌ飛び降り事件は、阪急電鉄グループの闇でもある。被害者女性の、死線を彷徨い、最後は闇に呑まれてしまった苦悩の痛ましさを想像するだけで、私は満身の怒りを覚える。だが、若き女性社員を犠牲にしながら、宝塚歌劇団は公然と「すっとぼけてみせた」のである。
映画会社「東宝」の名は、「東京宝塚」が元々の語源で、広くいえば現在でも同族会社だ。もしかしたら東映も「宝塚が自殺者を出しても、すっとぼけてるんだから、ウチの労基法違反なんて軽い、軽い!この手でいこう!」と考えたのかもしれない。そうだとしたら、東映は、もはや人道さえ捨てた映画会社で、それが『相棒』という正義の物語をでっち上げていることになろう。
本件ブログで告発した「誓約書」を、後になって「使われた事実がなかった」などという、デタラメな回答に変えた東映の態度は、まさに宝塚歌劇団と同質だ。
企業としての体面を、虚飾の能書きを並べて取り繕いながら、やっていることは、事実上の隠蔽工作ではないか。
東映グループとその弁護士は、目の前にアームと草刈の被害者が出てきて「嘘つき!」と言われたらどう答えるのだろう。
「草刈」はどこにいる?
もちろん、本稿告発で問われるのは東映の法的な責任ではない。当該の問題はあくまでも実行行為者であるアームと、その人事部長・草刈に係る法的責任についてだ。アーム名義の「誓約書」だけをみれば、東映の帰責事由は辛うじてないといえるだろう。
「辛うじて」というのは、草刈はアームの人事部長であると同時に、東映TVP「マネージャー」の名刺を持ち、誓約書を実際に書かせたのも草刈だからだ。私が告発した事件に対して、東映も無関係ではない。一定の道義的、社会的な責任があるはずだ。
こういうときの防御のために、大企業では、草刈のような現場の就労者を業務委託契約に留める。「雇用契約」にすると使用者責任も生じるから、使い捨てにできる伏線としてだ。
だから東映は、草刈との「契約関係を解消することとした」のである。しかし「解消済み」とは言っていない。
「解消することとした」ものの、その契約解消期限が示されたわけでもないし、今後、東映TVPが草刈と業務委託契約を結ぶ「予定がない」だけで、
出入り禁止にしたと言っているわけではない。
少なくとも、アームが草刈を雇用し続けることはアームの勝手で、東映が介入することではない。だから、東映との業務委託契約がなくなったとしても、草刈自身は建前を変えて、撮影所とかかわる仕事を得ることは可能だし、東映の回答から想像すれば、おそらくそうなるのだろう。
事実、現時点でも草刈は東映東京撮影所内を歩ているのだ。東映さん、私の耳目がもう撮影所まで届いていないと思うなら、ベテラン映画監督をナメ過ぎだよ(笑)。
『相棒』の名誉を傷つける『相棒』制作会社
本稿「相棒の闇」の最初に述べたことだが、人気ドラマ『相棒』シリーズは、警察という絶対的な権力の内部で、孤高の正義を貫く主人公・杉下右京警部の活躍が、多くのファンを獲得し、22年間続く長寿番組になった。
その制作現場に隠された違法行為が、東映グループ組織ぐるみで隠蔽されているとしたら、『相棒』を作っている映画会社が、自ら『相棒』の名誉を毀損するようなものだ。
杉下右京警部なら、英国式紅茶を淹れながら「おやおや、それは本末転倒というものではないでしょうかねえ」というかもしれない(私の脚本なら、もっとマシなセリフにするけどね)。
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以上が、旧 note での記事だ。
では、本件のその後がどうなったのかを述べる。
なぜ述べるのかといえば、冒頭に記した、私にメッセージとチップをくれた読者の方への回答として、また、『相棒』も現在放送中のシーズン23で、いよいよ最終回となる節目に、この国民的人気テレビドラマが、明確な不法行為に基づいて製作されていた事実を、本件当事者にして映画監督の私の手で記録しておくべきだと考えたからだ。
東映顧問弁護士の、人をなめるにもほどがあるメールの最終回答は、私を本気にさせた。
2023年(令和5年)12月26日、私は本件「相棒の闇」事件を、労働基準法違反として、東映東京撮影所を管轄する池袋労働基準監督署に刑事告発し、その告発状は証拠と共に正式に受理されたのである。
経験がある人ならわかると思うが、捜査機関への刑事告発は、弁護人が付いている場合でさえ、そう簡単には受理されない。というか、ほぼ不受理とされる。被害当事者による「告訴」と違い、「告発」は緊急性の程度が低いと判断されるからでもある。
しかし、本件「相棒の闇」は、被害当事者でなくても告発が可能な「非親告罪」である。なにより、本事件では違法誓約書やプロデューサーらの証言を録取した音声など物的証拠が揃った告発だった。
ただ、告発状というのは独特の「書き方」がある。私は池袋労働基準監督署の担当捜査官から直接指導を受けながら、告発状を作成し、2023年末ぎりぎりに告発状が受理されたのである。
この際の当局の動きについては詳述を控えるが、通常では考えられない誠実な対応で私の告発状は受理された。つまり、私の告発を受理した担当捜査官は、司法警察員としての正義を抱いて職務をまっとうする、ものすごく貴重な人物だったのだ。
警察にしても労働基準監督署にしても、告発状を正式に受理した場合は、捜査する義務が生じる(だから受理しないのが普通なのだ。仕事が増えて面倒くさいから)。
こうして、本件「相棒の闇」の捜査も着手された。被疑者は、私の記事に登場する元映画監督の「草刈」と、アームの不法労働契約を知りながら黙認していた『相棒』制作会社の東映テレビ・プロダクション代表取締役の2名である。
さて、今回の「相棒の闇」記事復旧のきっかけとなった、私にチップをくれた読者の方は、本件事件を「労働争議」と認識されていたようだが、実際には「東映撮影所を舞台にした刑事犯罪の告発」だったのである。
このことは捜査に支障をきたすので、公表を差し控えるよう当局からも要望があり、私もこれまで水面下で捜査が進んでいることを明かさなかった。
しかし、新年となった2025年、令和6年度末まで2か月余となった現在、すでに捜査はほぼ終了しているはずの時期に、前述の読者の方から「続報」を気にかけて頂いていることも知ったので、ここに後日談を公開することにしたのである。
「草刈」は被疑事実を隠したまま大学講師もやっていた!
ところが話はこれで終わらない。
「相棒の闇」事件被疑者「草刈」について、追跡調査を続けていた私は、呆れた事実を発見することになったのだ。
なんと「草刈」は、本稿記事で私に告発された後にも、某私立大学の映像制作特別講師として、学生たちを指導していたのである。タチの悪いことに、「草刈」を特別講師に起用した、同大学の教授も、日本映画監督協会で「草刈」と同じ広報委員を務めている「元映画監督」だったのである。いい加減にしとけよ、てめえらは。
要は、映画監督として成功どころか生計を立てられず、食い扶持に困った「元映画監督」同士が傷の舐めあいで、なにも知らない映像業界志望の若い学生を相手に、いけしゃあしゃあと講義を垂れていたのである。
私は、当の大学教授に宛てて、以下の質問メールを送った。
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○〇大学 〇〇学科
〇〇 先生
はじめまして。突然のメールで失礼致します。
私は映画監督・高橋玄と申します。恐縮ながら私の来歴はウィキペディアをご参照頂ければ幸いです。
扨、昨年2023年12月12日に御校で開講されました、貴学科特別講義の講師として「草刈先生(テレビドラマ・映画監督)」が紹介されていることを、現在になってネットで知りました。
そこで、差し支えなければ「草刈」氏が御校講師として起用された経緯・背景事情をご教示頂くことは可能でしょうか?
「草刈」氏は、昨年、東映/テレビ朝日制作のテレビドラマ『相棒』に関して新人の女性助監督に不法契約を強要した疑いで、池袋労働基準監督署に刑事告発されており、その告発状は昨年12月26日に司法警察に正式に受理され、現在も捜査中です。当該事件の告発人は私であり、被告発人が「草刈」氏となります。
事件の概要や捜査の進行状況は私から詳述できませんが、労働基準監督署は、令和6年度内に本件事件を送検することを告発人である私に連絡しています。
また、御校ウェブサイトの「草刈」氏のプロフィールにも記載がございます東映テレビ・プロダクションは、本件事件を理由として「草刈」氏との契約を解除しています。
このような立場にある「草刈」氏が、告発受理直前とはいえ、メディアの有識者であるかのように、「先生」との紹介を受け、御校講師を務めたことに私は不可解な印象を強く抱きました。
以上の理由から、現在捜査中の刑事事件の被告発人である「草刈」氏が御校特別講師に起用されるに至った経緯をご教示頂きたく、本メールをお送りさせて頂きました。
念のために申し上げますが、本メールは、〇〇先生おひとりにお送りするもので、不特定多数に対して「草刈」氏の個人情報を伝播する企図にございません。
本件につきまして、〇〇先生からのご回答が差し支えるようでしたら、、私から特に再度の質問は致しませんが、学校法人〇〇大学と〇〇先生に於かれましては、今後の特別講師選考のご参考にして頂ければとの想いから、また次世代の映像業界人を目指す学生さん方のためにも、慎重を期す人選をお願いする主旨から本件情報提供をさせて頂きました。
失礼致します。
映画監督
GEN TAKAHASHI (高橋玄)
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すると、当の大学教授から私に、以下の返信があった。
「映画監督 高橋玄 様
メールを拝読しました。
「草刈」氏の労働基準法違反については知りませんでした。
内部情報に関わることなのでこれ以上はお答えできませんが、授業運営の参考にさせていただきたいと思います。
メールに記載されたこれ以上の質問事項については、プライバシーや個人情報保護の観点からお答えできません。
貴意に添えず恐縮ですが、今後はメールに返信することはいたしません。
どうかご了承下さい。
高橋玄監督の益々のご活躍を期待しております。」
簡潔にいえば「草刈氏が刑事告発されていたことは知らなかった」「今後、一切の返信はしません」というもので、早い話が逃げたのである。
「相棒の闇」は起訴されるか?
私の予見をいえば、池袋労働基準監督署の努力が実って本事件が送検されても、検察は起訴しないだろう。
司法の世界にも「相棒の闇」と同質の、「権力意識の闇」が及んでいるからだ。
東映の顧問弁護士法人が、六本木ヒルズにある「TMI総合法律事務所」であることは述べたが、同弁護士法人は、山ほどの「ヤメ検」「ヤメ判」を抱え込んでいる、超絶的なまでに権力的な弁護士事務所なのである。
「ヤメ検」とは、理由を問わず検事を辞職した者のことで、「ヤメ判」とは元裁判官の弁護士という意味だ。
日本では、弁護士・検事・裁判官は「法曹三者」といって、同じ司法試験、司法修習を経た「同窓生」だ。
そうした背景もあって、公務員としての定年がある検事や裁判官は、その後「お仲間」の弁護士事務所に拾われるというケースが多い。「法曹三者」のうち、弁護士だけは民間人で定年退官がないからだ。東映法律顧問のTMI総合法律事務所も、ウェブサイトで所属弁護士の略歴をざっと見ただけで「ヤメ検」「ヤメ判」弁護士がずらりと並んでいる。その方が弁護士事務所としては、なにかと有利な立ち回りが可能になるからだろう。
刑事訴訟でも、司法官(検事・裁判官)と弁護士の間には、有形無形の「取引」が当然のようにある世界が「法曹三者」業界だ。基本的に「権力者側を勝たせる」のが日本の司法機関だから、東映とテレビ朝日という大企業を舞台にした、軽微な労働基準法違反などは、検察が不起訴処分とするはずだ。
そんなことは、警察批判映画『ポチの告白』や司法批判映画『ゼウスの法廷』を撮ってきた私は百も承知で、本件、私の刑事告発が、法的な勝利につながるとは考えていない。
ただし、この事件について記録を残しておく社会的、公益的な意義はあるはずだ。
既述のとおり、本件告発記事に対しては業界内部からも、匿名の被害者の方からも、メールで賛同の声が少なからず寄せられた。ついでに言えば『相棒』レギュラー監督によるセクハラ被害を内部告発する匿名メールまで届いている。どれだけ「黒い」んだよ、テレビドラマ『相棒』は。
結果、私がひとりで暴れただけではなかったのだから、じゅうぶんに公益性がある告発だったはずである。
何度も述べたことだが、国民的人気を誇るテレビドラマ『相棒』は「腐敗した警察組織の中で、孤高の正義を貫く刑事・杉下右京(水谷豊)」の活躍を描く、勧善懲悪の刑事ドラマだ。
だがそのドラマの制作舞台裏では、私が刑事告発した不法行為が存在していた事実を多くの人たちに知っておいて欲しい。
私がなぜテレビドラマを嫌い、映画だけを創るのかという理由も、ここにある。テレビドラマは、提供スポンサーは大企業、放送局も大企業、ドラマ自体を制作する映画会社も大企業という布陣で作る「製品」にすぎない。
つまりは、すべてがカネという利益のために権力側が寄り集まって、権力側に不都合な事実があれば、全員でウソをつき、なにもなかったかのような素振りのまま、カネになることだけを追求する世界が『相棒』のようなテレビドラマだからだ。
他方、純然たる映画は、すべて反権力の立場から創造される。
テレビのように、事実上、総務省傘下の企業が放送するドラマと違い、映画は権力の極北にある。そこに立つことができない者たちに「映画」は創造できない。
こうした私の能書きを、本件「相棒の闇」にかかわるスタッフや大企業の弁護士らが目にしたところで、鼻で笑っているだけだろう。それだけの人生でしかない連中だ。
私は無名であっても貧困層に身を置いても「映画」を創り続ける。
最後に付言するが、私は本件不法行為の存在を『相棒』主演俳優・水谷豊氏の事務所「トライサム」宛てにもメールで通知していた。『相棒』関係業界にいる人間であれば、誰もが「水谷さんの一言で動く世界です」というからだ。
だが、水谷豊氏の事務所からは、なんらの返答も得られなかった。
「君子、危うきに近寄らず」ということだろうか。
以上で、私の内部告発「相棒の闇」を終了する。