アメリカの医療保険を日本ベースで説明してみた。
さて、今回はアメリカの保険について語ろうと思う。
私は在米10年、年間平均30回以上医療機関にお世話になり、大手術、出産、経験している。
この記事では固い説明は抜きにしてなるべく予備知識のあまりない人向けに、可能な限りシンプルにまとめようと思っている。
アメリカに引っ越してきて加入する医療保険
まずほとんどの人がアメリカに来る前に仕事を見つけて、または駐在等で渡米する。そしてほとんどの方はその会社から自動的に保険が提供されるので、引っ越してきた段階であまり重要視されない場合が多い。
怪我や病気をしたタイミングで初めて、うちの保険って大丈夫?とか調べ始めるのではないかと思う。
それに使用する人、しない人もバラバラで保険会社やプランによっても対応や負担がバラバラすぎるので、情報に統一性がないのである。さらに州によっても変わるし、もっと言えば、毎年法律が変わる。
とっても不透明アメリカ医療となっている。
そして、日本人あるあるで、日本の健康保険をベースに考えているとチンプンカンプンである。
そんな不透明すぎる医療保険をこれまで、アメリカのドクターに数百回会った私が、ふわっと説明させていただく。
民間医療保険
アメリカにはいろいろな保険の種類があるが、私があったことのある在米日本人で民間医療保険以外を利用している人は見たことがないので、この民間医療保険に絞って話をさせていただく。
ちなみにカルフォルニアCoverd Californiaという州が提供している保険もあるが日本人利用者はあまりいないので、ここでは割愛する。
日本では国民健康保険という国が運営している保険制度が1つだけ存在する。
米国の民間医療保険は、民間保険会社が運営している保険制度で、
保険会社の数 x 保険のプラン だけ存在する。
例えば、米国の医療保険会社が100社あり、保険プランが各社20プランあるとしたら合計で2000種類の医療保険が存在することになる。
実際にはもっとあると思う。
そして、その保険によって適用できる対象もそれぞれ細かく決まっている。
・病院 (保険が適用される病院、されない病院)
・施設 (保険が適用される、またはされない、病室、救急、献血ラボ、医療機器、手術ラボ等。)
・ドクター(保険が適用されるドクター、されないドクター)
がそのプランごとにそれぞれ存在する。
ちなみに保険がきく病院だからといって、その中にある施設や、ドクターが保険対象になるとは限らない。
民間医療保険の選び方
アメリカの民間医療保険は会社が従業員とその家族に対して提供してくれている。なので、通常は民間保険会社を選べる権利は従業員にはない。その会社に属した瞬間、属する医療保険会社が確定するのである。日本も国民健康保険しかないので選べませんのでこの点は同じですね。
そして従業員が選べる可能性があるのが保険のプランである。これは会社が提供してくれれば選べるのである。このプランを選ぶことができない場合は、問答無用で入れる保険は確定することになる。
民間医療保険を従業員に提供することは法律(50名以上の会社)で決まっている。ただ、保険会社、およびプランは会社の一存で決まる。
上記に述べた通り、会社によっては、保険会社との契約で1プランしか用意できない。といった場合があったりする。毎年会社の人事と保険会社の営業とがこの辺の交渉を行っている。
毎年会社が交渉をするのは毎年保険制度が変わるためだ。
変わるといっても多くの場合はごく一部の変更になる場合が多いが、どこかのタイミングで人事が保険会社を変更したり、保険プランを変更することもある。そうなると従業員の我々が利用できる保険が大きく変わることがある。
そして人事が用意してくれた保険プランの中から、従業員は「保険を選ぶ」
ことができる。
保険のプランによっては、多くをカバーされたり、少ししかカバー(カバーというのは保険会社が払ってくれるお金の額のこと)されないことがあったりする。
もちろんこのプラン選びは重要なのだが、使ったことがない人からすると違いがよくわからないことが多い。プランについては後ほど記載する。
保険料
日本では税金の一部として社会保険料がいわゆる保険料である。
会社が50%、個人負担が50%負担している。
アメリカも通常は会社提供の保険においては一定額会社が負担する。
アメリカのKaiser Family Foundationによると2023年は平均して単身の場合83%が会社負担、家族付帯で保険を入れる場合は73%を会社負担してくれるようだ。
保険料の金額まとめるとこうなる。(2023年 Kaiserの平均)
・個人
保険料合計:$8,241
会社負担:$6,840
個人負担:$1,401
・家族付帯
保険料合計:$24,351
会社負担:$18,214
個人負担:$6,575
これはKaiserの平均であり、一般的にKaiserは安めといういう評判なので一般の保険会社はもうちょっと高いと思う。
ちなみに、しれっと日本の健康保険のお金も記載しておこうと思う。私が在住しているカルフォルニアの収入の中央値はの収入は91000ドルなので円換算、年収1300万円で換算すると
保険料合計:1,395,384円
会社負担:652,692円
個人負担:652,692円
となっている。単身だったら保険料はアメリカ方が断然安くみえるね。
何は友われ、こう思うと会社はかなりの金額をあなたの保険のために費やしていると思うだろう。だが、会社負担は置いておいて問題は個人負担である。
この個人負担の金額はアメリカではBeforeTaxで支払いができる。
つまり、日本的に言うと、この金額は給料の個人の「手取り」から支払うのではなく、「額面」から支払うことができるのである。
収入によってTaxは変わるが、上記金額を手取り換算するとざっとTax分の15-30%引きで保険料が支払えると思ってくれればよい気がする。
そしてアメリカにある日系企業は全般的にグレードの高いプランを用意してくれている場合が多い。その分保険料も上がるのだが、個人負担率も一般のアメリカ会社よりは低めに設定されている場合が多い。グレードについては後ほど説明したい。
大手の会社になると保険プランも多く用意してくれたりすることが多いが、そのなかに個人負担率0%の保険プランもあったりする。保険プランのグレードを上げると上げた分、個人で支払ってね!というプラン形態だ。もちろん、とてもよい福利厚生を提供している会社に限る。
このように様々な保険の料金形態がある。私の身の回りには個人負担保険料0でよい保険に加入している人もいれば、月$2000近く保険料の支払いをしている人もいる。
これは私の経験上の話だが、一般的の日系企業における保険はグレードの高い保険で自己負担金額は大体個人で年間$1000-$2000くらい、家族で$2000-$6000くらいを自己負担しているように思う。
保険プラン
さて、保険プランだが、ここからはもう少し具体的な話になってきてしまう。
全部話すと大変なので、かなり絞って話す。
PPOとHMO
まず、大きく分けて保険のPPOプランとHMOプランがある。どちらがよいということはないのだが、日本の国民健康保険に近い保険はPPOプランである。
簡単に説明すると
PPOの特徴
基本的にどの病院にも行ける。どのドクターにもアポとって会える。ただ、Network内(保険プランが認めている医療機関)であればカバー率が高く、そうでないとカバー率が低い。
HMOの特徴
事前に取り決めたプライマリドクター(1人)のみに会いに行ける。
そのドクターの紹介状があればどのドクターでも会える。
ただ、Network内(保険プランが認めている医療機関)であればカバーするが、そうでないとカバーはされない。
どっちのプランでもちゃんと知っておけばカバーされるのでどちらが良い悪いということはない。ただ、私の経験上、良い病院はPPOしか受け付けていないことがある。HMOは医療機関を制限している分、保険料が安いというメ
リットがある。
もしこの2つが自己負担が同額で、選べるのであればPPOがよいが、被保険者が若く、病院にはめったに行かないし、保険料を抑えたい。ということで
あればHMOがよいと思う。
プランのグレード
一般的に保険にはグレードがある。一般的に多いのは
Bronze, Silver, Gold, Platinumの4つである、保険会社によっていろいろとプランが用意されているので一概には言えないが、一般的にはこれくらいあると思ってもらえたらよいと思う。
一般的に
Bronze
カバー率は約6割
Deductible(自己負担金額)は高め
保険料は安い
Silver
カバー率は約7割
Deductible(自己負担金額)は普通
保険料は普通
Gold
カバー率は約8割
Deductible(自己負担金額)は低め
保険料は高め
Platinum
カバー率は約9割
Deductible(自己負担金額)はかなり低め
保険料はかなり高い
となっているが、多くの日系企業はGoldまたはPlatinumを提供していることが多い。Silverもたまに見るがBronzeは見たことはない。
注意してもらいたいのが、いくら良い保険プランに加入していても、行った病院やドクターがその保険を適用できなかったら、このプランの意味はほとんどなさず、高額な医療費が請求される可能性がある。
Deductible
Deductibleという謎の言葉ここで出てきたのだが、この言葉に私は何年も悩まされた。なかなか理解ができなかったのを覚えている。
つまり私流に一言で表すと、
Deductible=この金額を医療機関に直接払わないと保険会社は保険適用してあげないよ額
です。
日本は
医療機関かかった瞬間、いきなり7割お国が支払ってくれる。
であるが、アメリカは
医療機関かかった瞬間は、Dedactibleを払いきったら、保険会社がお金払ってあげる。
である。
Dedactableの支払いはもちろん個人のポケットマネーである。この支払はAfter Taxで支払になる。つまり、完全な「手取り」マネーを使って払わなければならない。このDedactibleは1年ごとにリセットされる。
つまり、毎年この金額は支払わなければならない。ということである。ただ、医療機関に行かなければ、支払う必要はもちろんない。
とても重要なポイントである。
保険プランについて超ざっくり記載した。もっと他にもいろいろな話したいことがあるのだが、量が多すぎで書ききれません。今度また以下のテーマで書こうと思います。
・日本とアメリカの保険料の違い
・アメリカ医療レベル、よい病院とそうでない病院について
・実はアメリカの医療費は安い。
その他もろもろあります。
一旦ここまで。
聞きたいことや詳しく知りたいことがあったらまた教えてください。
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