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「揺れる女」
今日は少し遅くなってしまったな。
友人と別れて終電で帰路についていた。
スマホで日課のYouTubeを観ながら周りに人がいない薄暗い道を歩いてたら、違和感を感じた。
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ちらっと前を観たらこちらを見つめて立ち尽くすロングコートの女。
顔は見えない。
ゆらゆら揺れながら首を傾げている。
何だか気色悪かったので、反対側の歩道に渡る。
そのまま私が歩きだすとその女も前を向いて歩き出した。
反対側に渡っちゃったけど、本当は今の道の先にあるコンビニに行きたかったんだよなあ。
しばらく女と並走しながら反対側にあるコンビニに向かう為、再度道を渡ることに。
その時またこちらを見て立ち尽くす女が横目に見えた。
悪寒がした。
その女の後ろを通ってコンビニに足早に入る。
幸いイヤホンで音楽を聞いてるので何も聞こえない。
こちらを向いて何か話しかけてるような気はしたけど聞こえない。
コンビニに入りきるまでこちらを見て立ち尽くしていた。
一体何だったんだろうか。
買い物をして外に出ると女は消えていた。
そのまま足早に家路につく。
家はオートロックだ。
共有玄関の鍵を開けて自分の部屋に向かう。
私の部屋は角部屋なので1番端だ。
L字型の廊下を曲がった先にある。
少し悪寒がした気がする。
気のせいだろう。
気持ち悪いものを見たからだな。
あの女もきっとただの酔っ払いだろう。
…街灯はあったのに、何故か顔だけ見えなかったけど。
早く部屋に入りたい。
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L字型の廊下を曲がって自分の玄関が見えるはずだった。
そこにはさっきの女が立っていた。
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「見えるの?」