学生による殺人
今回は学生による殺人についてお話ししたいと思います。
繰り返される殺人
タイトルが衝撃的だったかもしれませんが、安心してください。
本当に人を殺しているわけではございません。
いや、殺してはいないのですが、殺しているのです。
どういうことか説明しますと、「忌引」による公欠を多用してくる学生ということです。
大学においては「公欠」というものが存在しない大学もありますので、忌引による欠席は公欠とはならない大学もあるのですが、確実に配慮すべき欠席とはなります。
そのため、単位認定に係る3分の1以上の欠席になりそうな場合に、「殺人」を起こす学生がいるのです。
それも、1回だけならまだしも、2回、3回と忌引を使ってくる学生がいます。
祖母、祖父、叔父、叔母、親戚を順番に殺していく殺人鬼となるわけです。
忌引を届ける場合、私が勤めている大学では保護者の署名と押印、その事由が起こった日程を記載する必要があるのですが、葬儀場や亡くなった事実を確認することまでは行いません。
普通はそれでも十分なのですが、殺人を平然とやってのける学生は、知り合いに保護者欄を埋めてもらい、それまた平然と忌引届を出してくるのです。
もちろん、本当に亡くなっていることもあるのかもしれませんが、半期中に3人がなくなることなど、「普通」ではありません。
しかし、それを確かめるすべはないため、教務課に届け出が受理された以上、配慮すべき欠席となってしまうわけです。
「逃げ方」だけ上手くなる学生
一般論ではありませんが、自分に苦難が降りかかった時、あらゆる手を使って「逃げ」ようとする学生が稀にいます。
課題が終わっていない、欠席がかさんでしまった、実技のテストが嫌だ、など、その理由は様々ですが、そんな時に「壁の乗り越え方」ではなく「逃げ方」を模索してしまうわけです。
ひどい学生では、事故を装って実際にケガをしてくるという学生もいました。
その時は本気で心配しましたが、後々他の学生から聞いた話によると、意図的にケガをしていたとのことでした。
その執念には恐怖さえ抱きました。
ただ、私の場合、評価基準に沿って淡々と評価を行いますので、ケガをした日の課題が出せなかったのであれば単位は出せないということで、その学生は落としました。
単位の取得ももちろんですが、ケガをして苦しむのであれば、課題を出すために苦しんでほしいと思いましたが、その学生にとっては、ケガをするほうが「楽」だったということなのでしょう。
そのような学生は、言わずもがな信頼が失墜していきますので、教員だけではなく、周りの友人からも距離を置かれるようになってきます。
最終的には孤立してしまい、退学してしまうこともしばしばあります。
このような学生に対しては「逃げられない状況」を作り出し、壁を乗り越える機会を与えるのですが、当然のように単位取得を諦めてきます。
つまり、自分にかかる苦難を逃れることよりも優先することはないということです。
こうなると、指導しようにも自分のストレスだけが溜まり、学生自身には何も響きません。
もっと熱を入れ、他の指導方法を考えなければならないのかもしれないのですが、相手は人格がほぼ形成された半分大人です。
その思考や行動を変えることは容易ではありません。
そのため、淡々と規則や基準に則り評価を下すしかなくなってしまうのです。
今回は殺人を行う学生について話をしてみました。
そこまでして逃げに走る学生は稀かもしれませんが、苦難に向き合えない学生がいるのは事実です。
「自分たちの頃は」という教員の常套句は使いたくはないのですが、もう少し根性論に基づいた意志の強さというものを磨いてほしいと願ってやみません。