記述研究所のテキスト 12
基礎編
一級建築士製図試験における「計画の要点等」について、当研究所では建築計画、構造、設備、環境負荷低減の4分野に分類しています。
記述試験が本格的に出題されるようになった平成21年度からの過去問傾向を分析し、効率的な学習方法を考えていきます。
今回は「環境負荷低減」です。この分野の知識は図面にも影響する重要な分野です。
近年の設問では、テンプレートを暗記するだけでは対応できなくなってきています。基礎的な知識を十分に理解し、引き出しを多くすることで自分のプランをしっかり説明できるようにしましょう。
出題傾向
過去の出題傾向から見ていきます。全記述問題のうち環境負荷低減に関する設問だけを抽出して、この出題傾向をつかみます。
設問に(図)とある場合には、補足図の要求があった場合です。
必ず記入することを求められる(図:必須)と補足してもよいとされる(図:任意)に分かれます。
令和5年 図書館
令和4年 事務所ビル
令和3年 集合住宅
令和2年 高齢者介護施設
令和元年 美術館の分館 10/13
令和元年 美術館の分館 12/8
平成30年 スポーツ施設
平成29年 小規模なリゾートホテル
平成28年 子供・子育て支援センター
平成27年 市街地に建つサ高住
平成26年 温浴施設のある道の駅
平成26年 温浴施設のある道の駅 沖縄
平成25年 大学のセミナーハウス
平成24年 地域図書館
平成23年 介護老人保健施設
平成22年 小都市に建つ美術館
平成21年 貸事務所ビル
傾向分析
この分野の出題は、いかに省エネルギーな建築物を実現するかが問われます。
過去の例文を覚えるだけで解答できた問題は少なく、設備や省エネの幅広い知識が必要です。
近年はイラストを必須として、深い知識や今まで出題されていないことが問われています。
類似課題テーマでの共通点
令和5年の図書館に対し、平成24年の地域図書館は同じ「図書館」を扱っているので参考になります。
令和5年は、平成24年に比べて省エネルギーに関する深い知識が問われています。
基本的なことをしっかり理解していれば対応できるため、設備を含めて基礎を大事にしましょう。
また、令和4年の事務所ビルに対しては、平成21年の貸事務所ビルが同じ「事務所ビル」であるため、参考になります。
令和4年は、平成21年に比べて細かな区分けでの省エネ対策を問われています。これも基礎を十分理解できていれば対応可能なので、設備を含めて基礎固めをしましょう。
過去問のうち、類似課題テーマは最も参考となる設問ですので、課題発表後には早めに確認しましょう。
環境負荷低減分野は過去問中心の勉強をしつつ、基礎事項をしっかりと理解することを目指しましょう。
環境負荷低減とは
環境負荷低減は、建物で消費される様々なエネルギーを低減させることです。建物で使われるエネルギーの主なものは以下のとおりで、これらを様々な手法を用いて減らすようにします。
各エネルギーを減らす手法としては、パッシブデザインとアクティブデザインがあります。
1.空調エネルギー削減
空調エネルギーを削減する方法を示します。
パッシブデザイン
外皮断熱性能の向上
緑化により日射を遮り、建物躯体の断熱性が向上することで、冷房負荷を軽減できます。屋上や壁面を緑化します。
外断熱や高気密サッシを採用することで建築物の断熱性を向上させます。空調エネルギーを抑えることができます。
日射遮蔽性能の向上
Low-E(Low-Emissivity:低放射率)ガラスとは、特殊な金属膜を表面にコーティングしたガラスを組み合わせた複層ガラスです。日射の熱を抑え、断熱性も高いので一年を通して空調負荷を軽減させることができます。
冬場の暖かさ重視と夏場の暑さ対策の目的により、特殊金属膜をコーティングしたガラスの位置が異なる2タイプがあります。
開口部にルーバーを設置し、直射日光を遮ります。まぶしさを調整するとともに、夏場の室温上昇を防ぎ、空調負荷を低減します。南面は水平ルーバー、東西面は垂直ルーバーを設置して日照を調整します。