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社会と組織と自分。この3つを繋ぎなおすために、大人はときどき「自分」に目を向ける。

文:GEMSTONE 今尾江美子

今年5月に、働く大人のためのオンラインプログラム「EMERGE」を始めた。コーチングと、メンタリングと、進路相談と、ケーススタディと、グループワークと、内省と行動と。それらをぎゅっと詰めた全6回、3ヵ月。いまは、その中間地点にいる。

プログラム企画時に想定していた参加者(いわゆるペルソナ)は、こんな感じだった。

・入社5年目くらい
・仕事の要領はわかってきたけれど、自分を活かしきれていない、入社当時に描いていたイメージと違う、と感じている。
・もっと世界とつながったり、社会とつながったり、そんなことがしたかったはず。
・このままでよいのか、この先を考え直したほうがよいのか?そもそも自分がやりたいこと、やれることって?と日々モヤモヤ。
・留学、転職、独立、、。いくつかの選択肢が浮かびながら消えていく。

けれど、実際に参加してくれた人たちは、ちょっと違った。大手企業で「天職だ」と思いながら伸び伸びと仕事をしている人、一流コンサルティング会社を飛び出してMBA留学を志している人、組織に頼らず個人事業を立ち上げて自ら仕事を取っている人、子育てと仕事を両立しながらさらに海外の課外活動にも飛び込む人、ベンチャー経営を支えながら新しい一手を打とうとしている人。みんなキラキラ見えて、「いろいろ上手くいっている」ように見える

そんな5人が、なぜわざわざここへ?と考えながら、前半戦を共にして思ったこと。それは、大人はときどき「社会」と「組織」と「自分」の繋ぎなおしが必要ということ。そして、そのために「自分」に目を向けることが必要で、それは一人ではなかなか難しい、ということだった。

ちなみに、ここで「自分」とは、価値観や、ありたい姿や、個性など、英語だと「Being」と言われたりするものを指している。

社会と組織と自分

コメント 2020-07-01 145610

「働く」ということを、社会と組織と自分、の三層構造で考えてみる。発端は、「自分」という一人の人間。その周りに何人もの人がいる。多くは何らかの組織に属しているので「組織」としているが、所属がなければ、仕事仲間やクライアント、活動分野や事業領域、協会などに置き換えられる。そして、その先に「社会」がある。世界、といってもいい。「自分」が集まって「組織」となり、その活動が「社会」に何らかの影響を与える。そうやって、一人一人の働きが、未来をつくっていく。

なぜ、この3つの繋ぎなおしが必要になるのか?その原因を、2つだけ挙げてみたい。

(1)組織の中で自分が消えていく
日本人の場合、なんだか「自分」というものがわからないまま、時期が来て就職する。そこで「〇〇会社の××」として生きていく。自分の言動は、自分のものなのか組織のものなのか、境界があいまいになっていく。あるいは、そのうち徐々に「自分」の輪郭がわかってくると、「自分の考えとは違う」「自分がやりたいことではない」という自分と組織とのズレが生まれ、それを抱えたまま組織に合わせて走り続ける。自分と組織のつなぎがズレれば、その先の社会ともズレてくる。

(2)「社会的○○」から入る
社会起業、社会的企業、社会的事業・・。これらは「働く」を通じて、社会課題を解決したり、世の中に正のインパクトを生もうというもの。それを掲げる人も組織も増えてきた。それ自体は望ましいことだし、増えるほど世の中は良くなっていくはず。ただここで、「社会」(に良いこと)ばかりに目が向いて「自分」が置き去りになると、「組織」(周り)を動かすほどの力にならないし、続きもしない。結果として、「社会」に良い影響を及ぼすことにもならない。

これらはあくまで例(でも、よくある例)で、自分と組織と社会とのつなぎ直しが必要になる理由はいろいろある。けれど、それは「自分」が疎外されてきたことによるものが多いと感じる。

「自分」に目を向ける。そこから組織と社会を考える。

だからEMERGEでは、「世界」とか「社会的事業」というキーワードを挙げながらも、「自分」に目を向ける時間が圧倒的に多い。(そう設計した、というよりも、参加者と対話しながら作ってきたらそうなった)

それも、一人で自分のことを考えるだけではなく、ファシリテーターであるGEMSTONEメンバーはもちろん、参加者みんなが、一人一人のことを考える。頭の中で考えるだけではなく、対話しながら、行動しながら、自分との再発見を重ねていく。みな「日常の中では、そんな時間も機会も環境もない」という。だからここに集まっている。

「自分」に目を向けて、ここでもう一度その輪郭を確かめる。そして、組織とつなぎ直し、その先の社会と繋ぎなおす。その変化は、中盤でもう現れ始めている。

「自分」の過去や持ちものは変えられない。けれど、自分と組織とのつなぎは変えられる。それは組織を移ることかもしれないし、組織をまたぐことかもしれないし、組織を離れることかもしれないし、組織に働きかけることかもしれない。自分と組織とのつなぎが変われば、自分の「未来」は変わる。それは、その先にある社会の未来を変えることでもある。

これから後半戦。「自分」と出会いなおし、組織・社会との繋ぎなおしが始まっている参加者に、ここからさらに、予想もしない変化がEMERGE(出現)する。そんな予感に満ちている。


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