格闘ゲームに逆転システムは必要か?

自己紹介

皆さん、こんにちは。格ゲーマーのGemniです。
ストVはあきら使い、ランクはプラチナ。気になった事をデータ化しては独りニヤニヤしているオタクです。

はじめに

スト6には逆転システムが無い!??

体験版が順次リリースされ、僕のTwitter格ゲー垢のTLもスト6の攻略情報で一杯になってきたが、そんなスト6情報の中に「スト6には逆転システムが無い」というテーマがあった。
かのウメハラもその存在にはネガティブ寄りの姿勢であることもあって、逆転システムの要否は度々議論になるテーマでもあるので今回はこの点について記事にしてみたい。

議論が迷宮入りする要因

お題について話し始める前にやっておきたい事がある。
ジャンルに限らず、SNSなどで度々議論が白熱し、しかも収束しない事が多いのはなぜか?それは大きく以下2つが要因だと思っている。

1.言葉の定義が曖昧、又は指し示す範囲が広すぎて人によって思い浮かべているモノが違うから
2.客観的事実に基づかない個々の感覚で議論をし出すから

例えば、同じ「鳥」というテーマで話していても「鷲」を思い浮かべて議論している人と「ペンギン」を思い浮かべている人では議論が噛み合わない。しかし、大抵の場合、相手のイメージを確認する事なく議論を進めるため、お互いに「こいつ何言ってんだ?」と思いながら平行線を辿る。議論が収束することは無い。

また、個々の感覚や印象論で議論を始めるのも迷宮への一歩だ。
例えばプロ野球選手Aについての評価についてある人は「俺が見てる時は良く打つし、Aは好打者だよ」とする一方、「昨日も一昨日も凡退と三振ばっかりだったぜ?Aはスタメンから早く外した方が良い」と評する。この様に各自の感覚論を前提に進める議論ほど生産性の無いものもない。
しかし、リーグの平均打率が0.26でAの打率は0.30だ。とすれば話は明確だ。
勿論、得点圏打率が〜とか出塁率が〜という話もあろうが、少なくとも各自の感覚で議論を進めるよりよっぽど深まった議論が可能になる。

「逆転システム」の定義づけ

まずは逆転システムとは何か?をここで定義したい。
「逆転」というからには「不利な状況」から巻き返して「勝利」に導けるシステムであること。さらに「不利な状況」はまだ抽象的なので、ここでは勝敗を決定づける最も重要なステータスである「”体力”のリードを奪われた状態」と定義しよう。

さらにもう一つ重要な要素を加えたい。それは「一方だけがその恩恵を受ける(可能性がある)こと」。
と、言うのも例えば体力が減れば減るほど受けるダメージを軽減するシステムである”根性値”のようなシステムは結局双方が必ず同等の恩恵を受けるので、逆転の要素にはなり得ない。

おさらいすると、この記事で言及する「逆転システム」とは、
・「体力リードを奪われた状態」で、
・一方だけがその恩恵を受ける可能性を持った
・勝利に導けるシステム
             のことである。

客観的事実の提示

もう一つの重要要素である客観的事実だが、ここではSFL2021のリーグ本節全168ゲーム510セット1288Rのデータを使用したい。
プロの本気が詰め込まれたデータなのでそのデータを用いることへの妥当性は問題ないだろう。
本当は直近のSFL2022のデータを使いたかったが、これらのデータはワタクシGeminiが一人で独自に収集したものであり、2022のデータは収集に力尽きたのもあって一通り揃っているのが2021であること。なお、このデータも入力の際に多少のデータ差異が発生している事を認識しているものの、恐らく議論の本質には支障をきたさないレベルであると考え、提示していることはご容赦願いたい。
あくまで、Gemini調べであることを断らせていただく。

スト5の逆転システム=Vトリガーについて

Vトリガーはどの程度影響力を持った逆転システムだったのか?

スト6での逆転システムについて語る前にまずはスト5の振り返りが必要だろう。
スト5の逆転システムといって想像されるのは、そう「Vトリガー(=以下、VT)」だ。
VT発動条件であるVゲージを貯めるにはいくつかの条件があるが、最も大きい要素が「自身の体力が削られた時」だ。

2本トリガーと3本トリガーの対戦時など細かい状況を言い出すとキリがないが、基本的には「体力リードを奪われた側」が先にVゲージが溜まり、「VTを発動する権利を得る」というのが最も起こりやすい状況なので、この記事における逆転システムの定義の一つ目を満たすことになる。

VTの恩恵を一方だけが得られるケースはどの程度あったのか?

しかし、先にVTを引いたものの、それでは試合を決めきれず、相手にVTを引かれて決着。なんて光景はこれまで散々見てきた人も多いだろう。
結局ラウンドを通じてお互いに引き合う様な展開が大層を占める様ならばもはやそれは「一方だけがその恩恵を受ける」システムとは言い難い。

そこで、SFL2021では実際どの程度のRで「一方だけがVTの恩恵を受けたか=一方だけがVTを(多く)引いたか」を確認しよう。

対戦相手に対して一方的にVTを発動させたorVTを多く発動させたラウンドは全体の丁度4分の1に当たる25%だった。因みに、①が発生している場合、対戦相手目線では一方的にVTを発動されている試合になる為、①青部分と③赤部分は必ずミラーのデータになる。

一方で、お互いにVT発動回数に差が出ないラウンドが50%ちょうどだったと言うのは完全に偶然。n=1288*2もあってこんなキリの良いデータある???と驚きを隠せなかったのは他ならぬ僕自身だが、スト5において、

VT発動恩恵に差が出るラウンドとVT発動恩恵に差がないラウンドは50:50

という結果を確認する事ができた。
ラウンドの半分くらいは一方だけが恩恵を得られるシステムという以上、VTは充分逆転システムの要素を含んでいると考えて良いだろう。

VTはどの程度、勝利に導けるシステムだったのか?

最後に、VTは「勝利に導ける」システムだったかどうか?という点を検証しておきたい。VTはその殆どが火力が上がったり、強制的に自分のターンを作る攻撃的仕様なので一々確認する必要もない!という方もいるだろうが、その影響力を客観的に捉えることはとても重要なのでお付き合いいただきたい。

VTを一方的に多く発動した場合にはその恩恵を受けて、そのラウンドの勝率が上がるはずだ。という訳で、VT使用回数1以上のRにおけるVT発動側の勝率をグラフにしたのが上の結果だ。

これを見て、アレ?一方的にVT発動してるのに勝率50%割ってるじゃん。。。もしかしてVTっていまいち勝敗に影響してないの?と思ったあなたは一旦冷静になってほしい。

例えば、柔道の試合で相手に”技あり”を取られた状態、という条件からの勝率が50%だったとしたらそれはとんでもなく逆転力を秘めた選手と言えないだろうか?

Vゲージが溜まるほどの体力リードされた側がVゲージを使わない世界線での勝率が本来どれ程のものかは神のみぞ知る世界なので言及しようもないが、少なくとも「体力リードを取られた不利な側」が勝率をイーブンに巻き返す位の逆転力をVTが持っている事は間違いなさそうだ。

なお、この勝率約50%弱というのはかなり興味深い結果で、万が一VT発動回数が勝ってる側の勝率(=グラフ青側)が50%を超えてくる様だと、序盤は体力リードを取られた方が得、という序盤の攻防が殆ど無価値のとんでもないゲーム性になってしまうのでVTの調整は逆転システムとしてはかなりギリギリのラインだったと言えるかもしれない。

補足:3本トリガーと2本トリガー

若干蛇足ながら、3本VT(以下、VT3)と2本(以下、VT2)の違いについても触れておこう。
一般論として、VT3は発動条件が厳しくなるものの、VT2より強力に設計されていることが多い。その性能差はどの程度勝敗に影響しているかも検証しておこう。

VT3使用者とVT2使用者VTの対戦においてお互いに一回ずつ発動させたRを抽出した時、VT3使用者の勝率を表したのが上のグラフ。
VTの性能差が勝敗に影響しているだろう事が確認できる。

ただし、これを見てVT3の方が優秀だと結論づけるのは早計だ。
と、言うのもVT3は発動までに時間がかかるという条件だけでなく、発動後はVゲージが空になることで終盤にCA削りに対して無防備な時間が増える事などから発動タイミングに大きな制約がかかる。
その結果、気軽に発動できるVT2との間に発動率に差ができることも事実で、気軽に発動できるが相対的に弱めのVT2と強力だが発動が難しいVT3と棲み分けは明確に設計されていた訳だ。

スト5Vトリガー総括

最終的には個人的感想になって申し訳ないが、スト5のVTは逆転システムとしてはかなり強い部類だったと思う。
根拠としては、体力リードをとられている不利な状況から勝率50%のイーブンまで盛り返せる要素だった、という点だろうか。

では、それを踏まえて格闘ゲームに逆転システムは必要かどうか?
スト6に逆転システムが無いことは肯定的に捉えるべきかどうか?について考えていきたい。

なぜスト5には強力な逆転システムが実装されたのか?

そもそも何故、逆転システムなるものが存在するのか?

先ず最も最初に思い浮かぶ理由は、①序盤の不利で諦めるざるを得ない様な展開を救済すること。即ち、負けてる側の捨てゲーを極力減らすこと
格ゲーに限らず、多くの格闘技や1v1コンタクトスポーツで、実力が拮抗している場合には先に仕掛ける方が不利とされている。
この様な特性を持った競技において一旦大幅なリードを持った場合、とにかく防御に徹してタイムオーバーまで逃げ切るというのは常套手段でもある。
柔道やボクシングでもよく見られる光景だが、何より絵面は悪い。
そもそもストリートファイターはガードが後ろレバー入力なので、間合いを詰めて前に出る行動はガードを解くリスク行動だし、加えてスト5はガードシステムも豊富なのでガードが強いゲームとも言えそう。

そこで、リードした側が撃ち合いを拒否しガード一辺倒になる状況を無くすためにそのガードを崩す苛烈な攻撃として設計されたのがVTシステムと推察できる。

もう一つの理由は②序盤から積極的に仕掛ける動機付けを行うこと。
ガードの強いゲーム性においては序盤のリードが重要になることは前述した通りだが、だとすると序盤のアクションはお互いに慎重になる。それが試合を決定づけかねないからだ。
すると、何が起きるか?そう。序盤からめちゃくちゃ慎重に間合い管理をしてお見合いするようなジリジリした展開が続く。これまた絵面が悪い。というか一種のスピード感ある爽快さを求めて格闘ゲームをプレーしてるのに求めているゲーム体験を得られない。それなら最初からじっくりと腰を据えて将棋をさした方がいい。

ただし、仮に序盤リスク行動を取った結果、失敗しリードを奪われたとしても逆転システムによる保険が残されてているとしたら、積極的にアクションしやすくなる。この心理的余裕も逆転システムの要素としては大きいと思う。

スト6に逆転システムは必要か否か?

以上の考察を踏まえた上でスト6に逆転システムは必要かどうか?

結論としては、今のところ「必要ない」と思う。

実は今のところスト6はβテストも体験版も未プレーなので、他の方々の感想などからの推測に過ぎないが、スト6は攻撃側が有利なゲーム性の様だ。

つまり、序盤から積極的なアクションを誘導する必要も、リードした側が防御に徹するのを阻害する必要性もあまり無い。

防御行動が強いスト5にはあえて必要だった動機付けが、攻めを促し続ける事が根本にあるスト6のゲーム性には必要なさそうだ。

但し、多くのスポーツでそうだったように、基本的には防御と攻撃それぞれの技術の向上は防御側が伸びていくことが多い。
おそらく、スト6でも攻撃的技術は早めに頭打ちになり、防御行動のテクニックが伸びていく未来は想像に固く無いので、1年、2年と経った頃には攻撃的システムが逆転システムの要素含みで実装される可能性は否定できない。

と、若干の予言を残してこの記事を終えたい。

ここまでこの記事にお付き合い頂いた皆様に感謝とスト6の明るい未来に祈りを込めて。

以上、格ゲーマーGeminiでした。


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