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飛び立つ野鳥たちと目覚めた種子たち②〜五百淵と野鳥の森「小さな自然散歩」(福島県郡山市)

※サムネール画像は、8月に野鳥の森で撮影したメマツヨイグサです(Googleレンズ調べ)

少々時間が経過し過ぎて申し訳ない限りですが、1ヵ月前の9月17日(日)、五百淵と野鳥の森でおこなわれた「小さな自然散歩」のレポート②を投稿しますm(_ _)m

レポート①はコチラ↓

レポート①でも少し触れましたが、ニセアカシアの伐採によって日照を取り戻した野鳥の森には、これまで地中で眠っていた種子たちがいっせいに芽吹き、案内人さんによると「これまでは見られなかった植物」が繁茂する光景が広がっていました。

その様子をレポートする前に、今回出会った野鳥たちをもう少し紹介したいと思います。

夏から秋にかけての野鳥たち②

レポート①でもご紹介しましたが、9月は五百淵と野鳥の森の夏鳥と冬鳥が入れ替わる時期。

南から飛来し、一夏を過ごした夏鳥たちが飛び立ち、森に響くのは1年を通して元気なシジュウカラやコマドリ、カラスたちの鳴き声。そして、季節感ガン無視でさえずりまくるガビチョウのちょっと迷惑な声(;^_^)

水面ではカルガモが悠々と泳ぎ、アオサギとチュウサギが優雅に餌をついばみ(だけど、声はうるさい(;^_^)、カイツブリもヨシの群生地にむぐって(潜って)いるようでした。

9月の野鳥の森

旅立つ野鳥たちが群れをつくる理由

なぜ野鳥たちは群れで移動するのでしょうか。
案内人さんに尋ねたところ、「一つは天敵から身を守るため。もう一つは、餌を探しやすいから」というお答えが返ってきました。

天敵から身を守ること、餌を取ること。どちらも「生き抜く」ために欠かせない行為です。野鳥たちが群れをつくるのは、生き抜くためなのだと改めて感じました。

これは、案内人さんがお話されていたわけではなく、あくまでもわたしの推測ですが、「生き抜く」目的は、自分たちの「種(しゅ)」を残し、未来へ伝えること。そのためには、同じ種の仲間たちと協力する必要があるのでしょう。

繁殖期にはオスとメスがペア(つがい)となり、一緒に子育てをして、夏の終わりにペアを解消。自分で餌を取れるようになった子どもを残し、秋には仲間たちと「共同体」を形成し、旅立っていく。

すべての野鳥に当てはまる生態ではないと思いますが、野鳥たちの生き方はとてもフレキシブルだなと感じました。

①ウグイス色は「メジロ色」だった!

「チイチイ」という澄んだ鳴き声の持ち主は、ウグイスとよく間違えられるメジロ。見た目も大変かわいらしいです。ウグイス餅で知られる「ウグイス色」は、ウグイスではなくメジロの体の色なのだとか。確かに本物のウグイスは茶色ですね…。

野鳥関連のサイトで調べたところ、やぶの中にいてなかなか姿を見せないウグイスにくらべ、メジロは椿などの花の蜜が好きで、比較的観察しやすい鳥のようです。
舌が筆のようになっており、花蜜にさし込んで舌の先に含ませるようにして食べるのだとか。


②ドングリを貯食するカケスとヤマガラ

メジロとは対照的に、「ぎゃあ」といううるさい声はドングリが大好物のカケス(日本野鳥の会のHPでは「ジャーッ」となっていました。どちらにしても、少々耳障りなのは間違いありません (;^_^)

しわがれ声のカケスですが、体の色はきれい。羽の青がアクセントになっています。

カケスには秋に餌を地中などに埋め、冬に食べる「貯食」という習性があるそう。
「あきた森づくり活動サポートセンター」様のサイトによると、「喉袋に4個ほど呑み込み、クチバシに1個、計5個ほどを持って貯食する」そう。1回に運ぶ量がすごい。人間でいったら、保存食をつくったり、計画的に貯金したりするやりくり上手? 

カケスはドングリが大好物。またしても「あきた森づくり活動サポートセンター」様の記事によると、「運んだドングリは、1粒ずつ地上の枯葉をどけて地中浅く埋め、再び枯葉をかぶせる。多いときには1日300個、1シーズンで4,000個に達するという」とのこと。マメだなあ。

だけど、夢中になりすぎるのか、記憶力が悪いのか(;^_^)、地中に埋めたことを忘れてしまうことがあり、食べられなかったコナラが地中から芽吹くことがあるのだとか。コナラはカケスによって、自分の生息範囲を広げることができるのだそう。

6月からの「小さな自然散歩」では、こうした植物と野鳥の「もちつもたれつ」の共存・共栄・共生関係をたくさん学びました。われわれ人間も自然と共存・共生し、お互いに豊かになっていければいいのですが…。

では、そのためにはどうすればいいのでしょうか。わたしにもできることはあるのでしょうか。


もう1種類。ドングリを好物とするのが、ヤマガラです。「スィー、スィー」とかわいらしい鳴き声。ヤマガラにも貯食の習性があるようです。

そのほか、昆虫ではコガネグモを見かけました(写真の写りが悪く、掲載を断念!)樹木の間に張られた大きな巣にかかった朝露が日差しを受けてキラキラと輝いていました。

「巣の中央にいる体の大きなほうがメス、すみにいる小さいほうがオスです」と案内人さん。オスはメスに餌を貢ぎ、メスがそれを食べている間に交尾するのだそう(;^_^)。昆虫の世界も興味深いです。

地中で眠っていた種子が目覚め、”野草植物園”状態に

土壌シードバンクの覚醒

何度かお伝えしていますが、「小さな自然散歩」の案内人を務める日本野鳥の会郡山支部では、ボランティアを募り、野鳥の森の植物から日照を奪っていたニセアカシアを伐採しました。

しかし、強靭な生命力を持つニセアカシアはメゲません。切り株や地中に残った根っこから芽を出し、夏には人間の膝ほどの高さに成長し、郡山市が植樹した山ザクラやコナラの苗を圧倒!

下の写真は8月に撮影したニセアカシア。膝丈ほどにスクスク成長。おそるべき生命力です!

見るだけならきれいです(;^_^

一時期は再び野鳥の森を征服するかと思われたニセアカシアですが、夏の間に思わぬことが起こりました。

8月にはアレチウリが樹木を覆い、ツヤツヤした鮮やかな実をつけたヨウシュヤマゴボウがニセアカシアのお株を奪う勢いで成長。

9月には、アメリカセンダングサやベニバナボロギクなど、これまで野鳥の森では見られなかった植物たちが繁茂しはじめ、案内人さんたちを驚かせました。参加者のお一人が、「まるで“野草植物園”ですねー」と感心されるほど、様々な野草が生い茂っていました。

「ニセアカシアを伐採したことによって、森の地面まで日差しが届くようになり、それまで地表や地中に眠っていた種子たちがいっせいに発芽したようです」と案内人さん。

こうした休眠していた種子たちが、日差しを受けて発芽するしくみを「シードバンク」と呼ぶそう。

今年の夏から秋にかけ、野鳥の森の地面で眠っていたシードバンクがいっせいに発芽し、ニセアカシアを駆逐した土地を“野草植物園”に変えてしまったようです。

アレチウリやクズ、ヨウシュヤマゴボウなどさまざまな蔓性植物が繁茂
ヨウシュヤマゴボウ(8月撮影)
ヨウシュヤマゴボウのツヤツヤした実(8月撮影)
ニセアカシアも埋もれ気味?

これまでの野鳥の森では見られなかった植物たち

下の写真の黄色い花は、これまで野鳥の森では見られなかったアメリカセンダングサ。

実には小さなトゲ状の突起があり、人間の衣類などに「ひっついて」移動します。人間か動物にくっついて運ばれてきた種子が地面に落ち、日当たりがよくなったことで芽吹いたのかもしれません。

そのほか、小さなレンガ色の花をつけるベニバナボロギク、黄色い花をつけるダンドボロギクなども見られました。

房状の花をつけるオオイヌタデ。高さ80センチほどにもなるそう。

こちらはたぶんイヌタデ(ハナタデかもしれません)。オオイヌタデより花が小さく、ちょっと地味め(;^_^)

下の写真に写るのは、ヌカビキという植物。この植物も以前は見られなかったそう。森の日照がよくなったことで、目覚めた種子の一つと思われます。

写真がイマイチでごめんなさいm(_ _)m

そのほか、日当たりがよくなったことで、日向を好むヌルデがイキイキとした姿を見せていました。

「ヌルデは強い光を好む陽樹で、典型的なパイオニア植物の一つです」と案内人さん。

「陽樹」とはシラカバ、アカマツ、クロマツ、ハンノキ、コナラなど、強い光を好み、乾燥に強い性質を持つ樹木のことで、ヌルデもその一つ。

対照的に光の少ない環境でも成長する樹木が「陰樹」。代表的なものに、スダジイやアラカシなどがあります。

また、パイオニア植物とは、荒地にコケやシダ類が侵入し、1年生植物、そして多年生植物の草原ができたあと、最初に森をつくる樹木のこと。その多くが日当たりを好む陽樹で、厳しい環境にも強いという性質を持っています。

おそらく野鳥の森の日当たりが回復したことで、ヌルデも勢いを取り戻したのでしょう。

↓パイオニア植物って何? もっと詳しく知りたい方はコチラがオススメ

以前も咲いていたかもしれない植物たち

以下の植物は「以前も野鳥の森に咲いていた」か「以前は咲いていなかったか」を確認しておりません。もしかしたら、以前も咲いていた可能性がございます。その点、ご了承いただけると幸いです。

下の写真は、赤と白の小さな花をつけるミズヒキ。こちらもオオイヌタデ、イヌタデと同じタデ科の植物。

こちらは在来種のアザミの一種、野原アザミ。

「よく似た花に野アザミがあります。違いは、野原アザミは、花の付け根の苞(ほ)と呼ばれる部分に粘り気がないこと。一方、野アザミの苞には粘り気があり、触るとベタベタします」と案内人さん。

開花期にも違いがあり、野アザミが春から夏にかけて、野原アザミは夏から秋にかけて花を咲かせます。

8月、9月は野アザミと野原アザミの開花がかぶる時期。見分けがつかない場合は、苞に触れるとどちらのアザミか分かるそう。

今回見つけたのは、夏から秋に咲く野原アザミ

猛暑で夏バテ気味の樹木たち

9月中旬でしたが、夏のような暑さで、参加者もみんな水分補給をしながら観察を続けました。

案内人さんによると、バテ気味なのは人間だけではないそう。
「植物たちも暑さで水分が足りず、バテ気味です。今年の紅葉は早いと思いますよ。これだけ暑いと、植物たちは水分の蒸発を防ぐため、夏のうちに葉を落としてしまうんです」

今年の猛暑は植物にも大きな影響を与えていたようです。地球の温暖化は、植物たちはどんな影響を与えるのでしょうか。

落葉が早まると、植物が光合成により酸素をつくりだす期間がこれまでより短くなってしまう? そうなると、いっそう温暖化が進行してしまう? 

植物たちの活動が変わると、野鳥や動物たちの活動も変わるでしょう。

今、地球で起こっている“変化”は、わたしたち人間だけでなく、生態系全体に影響を及ぼすものなのかも…。

カワラダケはニセアカシアを駆除できるか?

ヨウシュヤマゴボウやアレチウリが跋扈し、シードバンクによってこれまで見られなかった植物たちが姿をあらわした野鳥の森。

また、駆除したニセアカシアも切り株や根から発芽し、郡山市が植えたコナラと山ザクラの苗木を圧倒してしまいました。野鳥の森は、これからどう変化していくのでしょうか。

案内人さんは、ニセアカシアが再び勢いを増し、ほかの植物を駆逐することを不安視しています。

「ニセアカシア伐採後、6月中に一度草刈りをしましたが、1回ではニセアカシアの成長に追いつきませんでした。6月中に2回、草刈りをすれば違っていたかもしれません」

しかし、草刈りのボランティア募集には、一つネックがあるそうです。

ニセアカシアの別名は「ハリエンジュ」。その名の通り、葉の付け根に鋭いトゲを備えています。

「夏を過ぎると、そのトゲが硬さを増し、ボランティアで刈ってくださる方に怪我をさせてしまう可能性があるんです」

また、ニセアカシアには、「伐採後の使い道がない」というネックもあるとか。

「当初は紙の原料にできないかと考えていたのですが、ニセアカシアの幹はすぐに硬くなってしまい、使い物になりませんでした。硬過ぎて遊歩道に敷くチップにもならないし、薪にもならないんですよ。そうなると、もう産業廃棄物にするしかありません」と案内人さんは表情を曇らせます。

それでも来年は、6月下旬から7月上旬、8月下旬から9月上旬にかけ、成長しつつあるニセアカシアを駆除し、下草を刈る予定だそう。

「ニセアカシア伐採後は今年と同じく、中通りの雑木林でよく見られるコナラと山ザクラの苗木を植樹します。今年の苗木は少し小さく、ニセアカシアや野草に追いやられてしまったので、来年はもっと大きくて丈夫な苗木を植えてもらえるよう、郡山市にお願いする予定です」

また今後は、ニセアカシアの伐採が森の野鳥たちに与えた影響についても検証したいそう。すでに、これまで生息していなかったキジバトの声が聞かれるようになったということです。

一ヵ月後、半年後、1年後の野鳥の森には、どんな植物が見られ、どんな野鳥の声が聞かれるのでしょうか。ニセアカシアの伐採が森に与える変化を楽しみに観察したいと思います。

ニセアカシアが生い茂る森。見る分には、涼しげで美しい。
白い花が咲く時期には甘い香りが漂うことでしょう。

下はキノコの菌を植菌したニセアカシア。葉っぱに隠れて見づらいかと思いますが、中央に切り株が見えるでしょうか。内部には案内人の熊谷さんがカワラダケという種類のキノコを植菌。キノコの菌により内部からニセアカシアを腐食させる実験をおこなっているそうです。
切り株の周囲では、ニセアカシアが芽を出していますが、同じ時期に芽を出したものとくらべると、成長が鈍いことがわかってきました。

野鳥の森の一角に積まれた伐採したニセアカシア。
硬過ぎて使い道がなく、産業廃棄物にするしかないそう。

この日出会った野鳥たち

カルガモ
ハシボソガラス
ハシブトガラス
土鳩(外来種)
カイツブリ
アオサギ
ダイサギ
ヒヨドリ
シジュウカラ
メジロ
ガビチョウ(外来種)
コゲラ
カケス
ヤマガラ
キジバト
スズメ
ハクセキレイ

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まひろ@自然の循環の中で生きる
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