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過去最高の業績を達成した中小製造業の成功法則:2社の共通点に学ぶ

1. イントロダクション

中小製造業にとって、業績の向上は常に目指すべき目標です。今回、弊社が支援した2社(A社とB社)が2024年3月期に過去最高の業績を達成しました。本記事では、その成功要因と共通点を探り、他の企業にも参考になるポイントを紹介します。


2. 過去最高業績までの道のり

A社は産業用金属機械部品メーカー、B社はプラスチックリサイクル事業を営む企業です。弊社との協力関係は2020年8月に始まりました。A社は従業員50名弱、B社は15~20名の小規模企業で、それぞれが特定の分野で独自の強みを持っています。

A社は2023年3月期に、B社は2022年3月期に過去最高の業績を達成していました。弊社の支援を受けながら、A社は製造プロセスの効率化、新規顧客の開拓、製品品質の向上などに注力しました。B社もリサイクルプロセスの最適化、新技術の導入、環境負荷の低減に取り組みました。

両社は、経営戦略の見直しや現場の効率化、人材育成などを通じて、持続的な成長を実現しました。これにより、A社とB社は2024年3月期に再び過去最高の業績を達成することができました。

3. 成功の共通点

製造原価の価格転嫁

A社とB社は共に、原材料費や製造原価の上昇に対して効果的な価格転嫁を実現しました。まず、A社は産業用金属機械部品の製造を行う中で、アルミ部品の材料価格が急騰するという厳しい状況に直面しました。この価格高騰は、製品の原価を押し上げ、一時的に利益を圧迫しました。しかし、A社は迅速に対応策を講じました。市場価格の詳細な調査を行い、材料費の上昇分を正確に把握しました。そして、このデータを基に、顧客との価格交渉を開始しました。A社は90%の顧客に対して材料価格の転嫁を成功させ、利益の確保に成功しました。

一方、B社はプラスチックリサイクル事業を営んでおり、原材料費はかかりませんが、電力費の上昇という問題に直面しました。リサイクルプロセスには大量の電力が必要であり、電力費の高騰は直接的なコスト増加につながりました。B社は過去の電力使用データを詳細に分析し、電力費の増加を正当化するための根拠を整えました。このデータを基に、顧客に対して電力費の上昇分を転嫁するための交渉を行い、全ての顧客との価格交渉に成功しました。

A社とB社に共通する点は、価格転嫁を成功させるために徹底的なデータ収集と分析を行ったことです。市場動向や過去のコストデータを基にした交渉は、顧客にとっても納得しやすく、信頼関係を維持する上で重要な役割を果たしました。両社は、価格転嫁を確実に進めることで、原材料費や製造原価の上昇に対応し、経営の安定化を図ることができました。このような取り組みが、A社とB社の過去最高業績達成に大きく貢献しました。

残存者利益の活用

A社とB社は、同業他社の廃業がもたらす市場シェアの増加を巧みに活用しました。これにより、生産分を補う形で注文を大幅に増加させ、業績を向上させました。

まず、A社は産業用金属機械部品メーカーとして、競争が激しい市場において他社との差別化を図ってきました。しかし、近年の経済環境の変動や経営難により、同業他社が相次いで廃業する事態が発生しました。A社はこれを好機と捉え、迅速に動きました。廃業した企業の顧客に対して、自社の製品とサービスの優位性をアピールし、新たな取引関係を築く努力をしました。その結果、A社は廃業した企業の顧客から多くの注文を獲得し、市場シェアを拡大しました。

一方、B社もプラスチックリサイクル業界で同様の状況に直面していました。リサイクル業界では特に、小規模な業者が経営難に陥り、廃業するケースが増えていました。B社はこれをチャンスと見て、廃業した業者の顧客に対してアプローチを開始しました。B社は環境に配慮したリサイクルプロセスと高品質なサービスを強調し、新規顧客を獲得することに成功しました。これにより、B社の注文量は大幅に増加し、事業の安定性と収益性を向上させることができました。

A社とB社は共に、同業他社の廃業という市場の変化を積極的に利用しました。両社は、新規顧客のニーズに迅速に応え、信頼関係を築くことで、他社の廃業によって生じた市場の空白を埋めました。このような戦略的なアプローチにより、A社とB社は市場シェアを拡大し、業績を向上させることができました。結果として、両社は過去最高の業績を達成することができたのです。

管理会計の徹底

A社とB社は、管理会計の徹底を通じて経営状態を常に把握し、迅速な対策を講じることで業績を向上させました。

A社では、経営責任者である常務が管理会計を徹底的に実施しました。日々の経営データを細かく分析し、収益やコストの動向をリアルタイムで把握しました。例えば、原価の構成要素を詳細に分析し、減価償却費や人件費が粗利に与える影響を常にモニタリングしました。これにより、設備投資の適正化や労務費の管理を効果的に行い、収益性の向上に寄与しました。また、経営数字を基にした問題の早期発見と迅速な対応が可能となり、経営上のリスクを最小限に抑えることができました。

一方、B社では、社長自らが管理会計を担当し、同様に経営状態を綿密に監視していました。B社も原価や収益の詳細な分析を行い、経営数字に基づいた意思決定を行っていました。特に、電力費の上昇が収益に与える影響を分析し、そのデータを基に顧客と価格交渉を行いました。このような管理会計の実践により、B社は電力費の上昇分を全ての顧客に価格転嫁することに成功し、経営の安定を図ることができました。

両社とも、管理会計を通じて経営の透明性を高め、正確なデータに基づいた経営判断を行うことができました。この結果、A社とB社はそれぞれの事業環境に応じた柔軟な対応を可能とし、業績の向上に繋げることができました。管理会計の徹底は、経営の健全化とリスク管理の観点からも非常に重要であり、これが両社の成功に大きく貢献しました。

4. 具体的な支援内容

弊社の支援は、主に現場の人材育成に焦点を当てて行われました。A社では、次期幹部や現場リーダーに対する指導を通じて、組織の基盤を強化しました。具体的には、リーダーシップ研修や業務効率化のためのワークショップを実施し、リーダーたちが自らのチームを効果的に運営できるように支援しました。さらに、問題解決能力や意思決定スキルの向上を図り、現場で直面する課題に迅速かつ適切に対応できる力を養いました。

一方、B社では、次期幹部に対する指導を重点的に行いました。B社の次期幹部候補に対しては、戦略的思考や経営管理の基本を学ぶ機会を提供しました。特に、管理会計の重要性やその実践方法についての研修を行い、経営数字を正確に把握し、経営判断に活かすスキルを育成しました。また、リーダーシップ研修を通じて、組織全体のパフォーマンスを向上させるためのチームビルディングやコミュニケーション能力の強化にも力を入れました。

これらの支援を通じて、A社とB社はそれぞれの次期リーダーたちが強固なリーダーシップを発揮し、組織全体の成長を牽引する力を身につけました。結果として、現場の効率化や業績の向上に寄与し、両社が過去最高の業績を達成するための重要な基盤となりました。弊社の人材育成支援は、両社の持続的な成長を支える重要な要素となり、これからも企業の成長を支援するための取り組みを続けていきます。

5. 両社が大切にすること

A社とB社は、品質管理と納期遵守を何よりも重視しています。両社は、品質不良を発生させないこと、また発生した場合でも流出させないことを徹底しています。万が一、品質不良が顧客に届いた場合には、迅速かつ誠実に対応することで信頼関係を維持しています。

A社では、製造プロセスの各段階で厳密な品質チェックを行い、製品の品質を確保しています。これにより、大手グループから優良取引先として表彰されるまでになりました。また、納期の厳守も重要視しており、受注から納品までのスケジュールを細かく管理しています。どんな状況でも納期遅れを起こさないよう、全社一丸となって取り組んでいます。

B社も同様に、品質管理の徹底に力を入れています。リサイクルプロセスにおいては、厳格な品質基準を設け、それを遵守することで製品の信頼性を高めています。顧客からの高い評価を得ているのも、この取り組みの成果です。また、B社も納期の遵守を重要視しており、常に計画通りの納品を行うことで、顧客からの信頼を獲得しています。

両社は、営業部隊を持たない代わりに、品質と納期を守ることで得意先からの信頼を築き上げています。品質と納期の徹底が、顧客の満足度を高め、結果として新たなビジネスチャンスを引き寄せる要因となっています。このような取り組みが、A社とB社の過去最高業績達成に大きく寄与したのです。

6. 結論

A社とB社の成功事例は、多くの中小企業にとって非常に貴重な教訓となるでしょう。これらの事例は、徹底した品質管理、効果的な価格転嫁、管理会計の重要性、そして現場の人材育成が企業の成長にどれほど寄与するかを示しています。今後も弊社は、これらの知見を活かし、中小企業の成長と成功を支援していきます。これからも企業の課題解決と持続的な成長を共に目指し、確実な成果を上げるためのサポートを続けてまいります。

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