もくげ地蔵さんとムクゲ
初夏から初秋にかけて咲く、ムクゲ(木槿)。
長期間咲くけれど、一輪一輪は 朝開き 夕にしぼむ「一日花」です。
早朝の涼しい時間に2㎞ほど足を延ばします。
ここは京都鞍馬口の西林寺、通称「もくげ地蔵さん」。
この地に乱れ咲く「ムクゲ」の草むらから、地蔵尊が現れたと伝わります。
それに因み、地域では「もくげ」地蔵さんと呼ばれています。
おそらく「木槿」からの派生ではないかと思います。
アオイ科フヨウ属のムクゲには一重と八重があります。
ここに咲くのは一重ですが、いろいろな表情を見せてくれています。
朝開き夕方しぼむ、一日だけの花の命。
これらの一輪は、今日だけの姿です。
その はかなさゆえに、「一期一会」を尊ぶ茶道で好まれてきました。
「それがしも 其の日暮らしぞ 花木槿」
一茶も、自分の生活感と重ね合わせて、ムクゲに語りかけたようです。
しかし、6月~10月まで長期にわたり次々と咲き継ぐのですから、はかなさと裏腹に、しなやかな強さを感じます。
しかも手入れをせずとも、毎年毎年咲き誇ります。
命のはかなさと永続性の両方を象徴しているかのようです。
韓国では、生命力や繁栄の象徴として ムクゲを国花としています。
また、花や種子などは漢方薬として、樹皮や根皮は和紙の接着剤として、若葉は食用として活用されています。その身まるごと、全部ですね。
人の心に映し出される「あり方」だけでなく、実用的な恩恵も与えてくれていると知りました。
暑さを忘れさせてくれる爽やかな花を思い出して、毎年会いに行きます。
昨年ご住職が庫裏まで上げてくださり、お寺の歴史を話してくださいました。
民家の間にひっそり佇むこの小堂に、驚くような深い歴史があったこと、面白い伝説があったことはまた別の機会に。
読んでくださり、ありがとうございました。