NPO法人DGLの『「住民記録システム等標準化対応」研究会 概要編#1』レポート その3:自治体システム標準化対応(超概要編 第1回)
1. はじめに
前回の「第1回目DGLイベント『「住民記録システム等標準化対応」研究会 概要編#1』」での2部:令和2年9月に公開された「住民記録システムの標準化」1.0版について、話された内容のメモ書きと個人的な感想となります。(個人の理解となりますので、ご理解ください。)
2. 自治体システム標準化対応(超概要編 第1回)で話されたこと
※前提として、令和2年9月に公開された「住民記録システムの標準化」1.0版についての解説とその理解となるため、10月29日付け内閣官房IT総合戦略室・総務省行政経営支援室事務連携「地方公共団体の情報システムの標準化に関する検討について」の中で言及されている改訂については、含まれておりませんのでご留意ください。
(1)住民記録システム等標準仕様化とは?
総務省が開催する「自治体システム等標準化検討会(住民記録システム等標準化検討会)」の中で、標準仕様書の検討が行われました。
その目指す姿は、『複数のベンダーが広域クラウド(全国規模のクラウド上)で、システムのアプリケーションサービスを提供し、各自治体は、原則カスタマイズせず、法制度の対応負担なく業務を行える姿』が目指されています。
全国的なサービスとして、LGWAN等のクラウド上で、パッケージシステムを利用して、各自治体は仕様書に準拠していることが必須となります。
対象範囲は、機能要件、様式・帳票、データ、連携、非機能要件とし、その対象の自治体は、人口数百人の村役場から数百万人の政令市に至るまで、全自治体が対象となります。
(2)スケジュールについて
17業務に関連するシステムは、令和7年度までに実現することが決められていますが、住民記録システムについては、原則令和4年~令和7年で標準仕様書に準拠していると認定を受けたパッケージシステムへの移行が求められています。
※特例法で義務付けされる見込みで、令和3年度の通常国会へ提出予定
(3)住民記録システムの標準化で目指す姿
メリットとして挙げられていたことは、以下の4つでした。
①システムをカスタマイズせずに利用可能なこと、
このことで、ベンダーとの導入要件定義などを最小化することができる
②機能の発注や・システムの維持管理の負担を軽減できること
このことで、先行導入した自治体の検証結果などを信頼し、維持管理
負担を軽減できる
③制度改正対応への負担軽減ができること
このことで、他自治体で検討した成果物がそのまま自分の自治体に適用
できる。業務の兼任をしていたり、専任職員が少ない自治体にとって、業
務負担を軽減できる
④広域クラウド上でアプリケーションサービスを受けることができること
このことで、サーバ等のインフラコストは割り勘効果が期待できる。
法改正等の変更においても同様に割り勘効果を期待できる
それぞれを見ると、一見システム管理面のメリットにも見えるけれど、業務運用についても、他自治体の成功事例(運用)をそのまま、自分の自治体に組み込むことができるだろうから、市民課・住民課の現場職員にとってもメリットがあると理解しました。
(4)標準化での目標を実現するために必要な努力
ただし、標準化されたパッケージシステムを導入すれば、事足りるわけではなさそうです。というのも、新たな業務やサービスを開始するのではなく、「すでに実施している業務を標準化されたパッケージシステムに合わせていく」ことが求められるためです。
このため、標準化を実現するために必要となる努力にも言及されていました。
① 標準ではない業務の見直し
業務だけではなく、所管管区とか所管も見直す必要がある
② 帳票項目・様式・データ項目の統一
ベンダー変更・システム更改と同等の変更が求められる恐れが
あります。
③ カスタマイズ機能の削除
標準的に搭載する機能が定義されます。定義外の機能など、従来
カスタマイズされていた機能は、削除が求められます。機能を削除した
場合、標準的な機能に合わせて、運用の見直しが必要となる場合があり
ます。
④ オンプレミスではないクラウドの運用見直し
住記システムがオンプレミスの自治体も多いことから、運用の見直しが
必要となる場合があります。
(5)実装すべき機能と、カスタマイズ機能の削除の考え方
標準化後は、従来の住民記録システムとは異なり、「標準仕様書」において搭載機能が定義されることとなります。この「標準仕様書」から読み取れる機能は、3種に分類されるようです。
① 実装すべき機能:全ベンダーが提供する機能
② 実装しなくても良い機能:ベンダーごとに異なる機能
③ 実装しない機能:実装を禁止されている機能
また、標準仕様書の記載外の機能も、③実装しない機能に準ずることとされており、実装しない項目や標準仕様書に記載されていない項目は、機能として住民記録システムに搭載が禁止される見込みです。
さらに印鑑登録業務やマイナンバー管理業務など、、、住民基本台帳法以外の業務住民記録システムと連動した業務への対応方法も課題となります。
パネラーの方々は、住民記録システムと切り離されたサブシステムとするといった考え方があるのではないかといったコメントがなされていました。
3. 感想
住民記録システムが受ける影響をざっくりと理解することができました。
特に強く認識できたこととしては、住民記録システムの標準化は、単なるシステム改修では事足りず、業務が共通化されることから、日々の運用まで影響を受けることが想定されるといったことです。
当日も多くの質疑が出ていましたが、標準仕様書で定義される機能が、住民記録システムに搭載されるべき機能であり、以外の機能は搭載してはいけない機能と定義されることは、各自治体業務へ大きな影響を与えそうです。
もし現状の住民サービスおよび業務運用において、定義外の機能を利用している場合、標準化後、従来サービス・業務を廃止するのか、もしくは継続するのか?継続する場合はどのように実施するのか?の整理は、担当課だけでなく、場合によっては自治体全体での検討事項にもなりかねません。
そのために、パネルディスカッションにおいて現在着手できることとして、各自治体において誰が何を行っているかなどの現在の業務運用や、システム間の連携箇所やシステム環境など、現状の棚卸ができるのではないか、といった意見が出されていました。
殊更標準化に向けて「大変だ」と不安を覚える必要はなく、地道な業務の整理と再構築(BPR)の先に、標準化の目的『将来の国民及び住民が「便利になった」と感じてもらい、地方自治体の職員の業務の効率化を果たす』世界を迎えられるのだと感じました。