NPO法人DGLの『「住民記録システム等標準化対応」研究会 概要編#1』レポート その2:トータルデザインの方向性
1. はじめに
前回の「第1回目DGLイベント『「住民記録システム等標準化対応」研究会 概要編#1』」での1部:トータルデザインの方向性について、話された内容のメモ書きと個人的な感想となります。(個人の理解となりますので、ご理解ください。)
2. トータルデザインの方向性で話されたこと
(1)17業務の標準化は、何が目的?
「有権者がデジタル化で日本が良くなったと思ってもらうこと」とされています。
具体的に語られたイメージとしては、
『自治体業務システムとしては、外字がなくなりデータ項目が整理をされ
ます。複数のシステムにまたがる場合も、ワンストップサービスに必要
な情報連携が整備されています。
それは、地方自治体の内部連携だけではなく、団体間をまたぎ、さらに
は民間サービスとも連携できていて、今よりも便利になっている』
ことと説明がなされていました。
(2)目指す姿を実現するSTEP
①1ステップ(令和4年:2022年までに速やかに着手すべき取り組み)
・共通SaaSを構築し、突発事務に対応ができるようにすること。
・標準化に則り、標準化すること。各自治体の事例を横展開すること。
②2ステップ(令和7年:2025年に向けた取り組み)
・業務共通化・データ移行の進捗に応じて段階的に共同システムへ移行
・全国的なクラウドベースとし、API連携できる公共サービス
メッシュを整理する
・民間タッチポイントとして、多くの住民が日々使っているアプリ
との連携を整備する
(3)スケジュールは?
トータルデザインの事業のスコープは、自治体標準化とシステム統一に向けた検討は5年とし、令和7年(2025年)までにやりきることが指示されているそうです。
トータルデザインとしては、令和12年(2030年)までかかる想定をしていたが、菅総理大臣から強い要望として5年と提示されており、17業務の標準化についても同様の動きになってくる想定とのことです。。
(4)こうした考え方のベースにあるのが、令和2年4月から実施された特別定額給付金の対応
給付金は方針が決まってから2週間で構築し、約3か月で配りきった形となっています。従来の対応より早いが、諸外国(ドイツ、韓国など)と比較して時間を要してしまったり、オンライン申請を可能としていたが、地方自治体の住記システムと連携ができていなかったので、全項目申請者の手入力となり、入力誤りによる不整合などが発生していました。
この根本として、地方自治体ごとに住基システムが異なっており、銀行との連携においても、銀行はカナ氏名で、住基は漢字氏名で突合がしづらいなどといった連携が難しい状況になっていたそうです。
こうした課題を踏まえて改めてトータルデザインを実現する上での課題を整理すると、以下の課題が見えてきます。
・住基ネット・情報提供NWシステムともに世帯等の関係属性を
連携できない
・事前記入型の申請に未対応になっている
・出生届から一貫したカナ氏名が公証されていない
・団体ごとに住記システムが異なるため、文字情報等が異なる
民間との連携も実現したいが、いきなりは難しいので、(2)にあるようなステップに分けて実現をすることが想定されていました。
3. 感想
トータルデザインで目指されている「有権者がデジタル化で日本が良くなったと思ってもらうこと」は、目のまえの課題に向かっていると、忘れられてしまいがち。自治体職員も、システム開発メーカーも、この視点を忘れてしまうと、業界から淘汰されていってしまうかもしれない、との思いを抱きました。
トータルデザインについて、講演を聞いてもまだ理解が浅い点がありますが、上流の考え方の一つとして理解が進むと、今後の17業務の標準化への波及や、影響の背景も理解ができることから、今後も引き続き理解を深めたいと思います。