中学生でもわかる改憲①憲法9条
まずは,憲法9条の全文を見てみましょう.
9条1項では戦争放棄,9条2項では戦争放棄をするために戦力を保持しないと書かれています.
憲法9条の改憲論者は
・自衛隊違憲論を解消する
・憲法9条では国を守れない
・憲法9条は押しつけ
といった理由で憲法9条の改憲を求めているようですが,改憲の必要はあるのでしょうか.
自衛隊は憲法違反?
憲法9条第2項では戦力を持たないということが書かれています.しかし,自衛隊は実質的な戦力であるため,自衛隊は憲法違反であるという意見があります.これを「自衛隊違憲論」をいいます.自民党は改憲草案で,矛盾をなくすために憲法9条に自衛隊を明記するとしています.
自衛隊が軍隊ではない理由
「自衛隊違憲論」を紹介しましたが,自衛隊は違憲なのでしょうか.
国連憲章第五十一条で,自衛権(国家を守る権利)は国家の固有の権利として認められています.
そのため,政府は「自衛のための最小限度の実力を保持」して,「相手から武力攻撃を受けたとき初めて必要最小限の防衛力を行使する」という専守防衛の規定のもとで自衛隊を活用しています.
つまり,自衛権はどの国においても認められているため,専守防衛の規定のもとで自衛隊を活用することは違憲ではありません.自衛隊が軍隊ではないのは他国の軍隊と違って専守防衛の規定というものがあるからです.
そもそも,自衛隊が違憲であると司法が判断した場合,自衛隊は即刻解散になります.東アジアに平和が訪れた時,憲法9条の完全実施は世界平和に寄与しますがあくまでもこれは理想の話であって,現在の緊迫した東アジア情勢において自衛隊の解散を望む人は誰もいないでしょう.緊迫した東アジア情勢における「自衛隊違憲論」は改憲をするために自民党が持ち出した都合の良い言説なのです.
憲法9条で国を守れるの?
憲法9条では交戦権,つまり戦争をする権利を放棄しています.そのため,「憲法9条では日本を守れない」と言う人がいます.
9条改憲論者の多くはこの主張ですが,果たしてそれは正しいのでしょうか.
侵略戦争と自衛戦争
結論から言うと,「憲法9条では日本を守れない」というのは詭弁です.
戦争には侵略戦争と自衛戦争の2種類があります.他国の領土を侵略するのが侵略戦争で,自国の主権を維持するために国家を守ることが自衛戦争です.
憲法9条のもと,日本は侵略戦争を引き起こすことはできないですが,国家の固有の権利として自衛権が認められているため,自衛隊が合憲である限り他国に侵略された場合に国家を守ることはできます.
そのため,「憲法9条では日本を守れない」というのは詭弁なのです.
憲法9条はアメリカの押し付け?
戦後,第二次世界大戦の敗戦国である日本はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)によって占領されました.GHQの占領下において日本国憲法の草案が作られたため,日本国憲法の憲法9条で戦争を放棄するというのはGHQが日本を戦争のできない国にするために押し付けたという意見があります.当時のアメリカにとって日本は脅威であり,日本と再び戦争をすることを恐れていたために,GHQは憲法9条を日本に押し付けたのでしょうか.
日本国憲法は国民の圧倒的支持を受けた
憲法を制定するにあたって最初の作られた試案は,戦前の大日本帝国憲法とほとんど変わらない内容であったがゆえに,GHQが草案を作り,そのGHQ草案をもとに政府が草案を作りました.そのため,日本国憲法が押しつけと非難されることがあります.しかし,GHQのマッカーサー最高司令官は,新憲法が日本国民の意思によってできたものであるか確認するため,施行後1~2年以内に改正の国民投票を実施することを認めました.それにも関わらず,憲法改正への国民の強い支持がなく,国民投票が実施されることはありませんでした.
日本国憲法,特に憲法9条が押しつけであるならば,GHQが改正の国民投票を認めるはずがありません.また,国民が憲法改正を強く支持しなかったのも事実です.
憲法9条を改憲するとどうなるの?
憲法9条を改憲すると社会はどのように変化するのでしょうか.
改憲草案は改憲勢力の中で最大の勢力を持つ自民党の改憲草案が採用される可能性が高いので,自民党の改憲草案で憲法9条がどのように変わるのか見ていきましょう.自民党の改憲草案では憲法9条に国防軍の規定が追加されます.
まず,自衛隊が国防軍として定義されるため,日本の持つ軍事力が「自衛のための最小限度の実力」である必要がなくなります.
そのため,例えば(意に反する苦役が国益に反しない場合に限定されるため)戦前のように徴兵制を導入することが可能になり,日本で軍備拡大を行うことが可能になります.軍備拡大が行われば,自国が他国に軍事面で優位に立とうとする軍拡競争になり,東アジア情勢がより一層緊迫したものになります.
また,「国際的に協調して行われる活動」を行うことができるため,自国が攻撃されていなくとも自国と密接な関係にある外国が攻撃を受けた場合,その国を武力で防衛することが可能になり,他国の戦争に巻き込まれることに繋がります.
例えば,台湾有事が起きたとすると,日本が攻撃されていなくとも台湾を防衛することが可能になり,台湾有事に日本が巻き込まれることになります.
ほかにも,「国際的に強調して行われる活動」を行うことができるというのは,国連などの多国籍軍に日本の国防軍が参加し他国に軍事介入することもできるということを意味するため,予算における軍事費が増え,他国から報復を受けることにも繋がります.
このように,憲法9条を改正し自衛隊を国防軍と定義することは戦争につながりかねません.
改憲を目指す勢力,特に保守派は日中戦争や太平洋戦争を欧米列強からのアジア諸国の解放と肯定的に見ていますが,そのような考えのもと改憲が行われ,大軍拡が始まれば,日本が再び同じ過ちを繰り返すことになりかねません.それを防ぐには,過去に学び,反省し,憲法9条を守り抜くことが重要です.
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