閲微草堂筆記(393)見えない相手
巻九 見えない相手
母方の従兄弟である姚介然公が語った。
怨みを抱いて死んだ幽鬼が復讐するという話は、典籍に記載されているものは一つにとどまらず、また伝え聞くものも一つにとどまらない。
癸未の年の五月、塩山の耿家庵から崔莊へと帰る道すがら、私は直に幽鬼の復讐というものを目にした。
その人は年の頃は五十ほどで、草笠をかぶり、苧衫を着ていた。一匹の驢馬に荷物を乗せていて、それを河岸の柳の樹の下に繋ぎ、その樹に寄りかかって座っていた。
私もまた、馬を繋ぎ、そこでしばし休憩することにした。
するとその人が突然ぱっと飛び起きて、何やら抗うような手振りをしながら言った。
「俺はお前の命を奪った。俺はただその償いをするまでだ。何でこのように殴られなくてはならんのだ!」
しばらく経つと、その言葉はだんだんとあやふやになっていき、何を言っているのか聞き取れなくなった。
すると、その者はたちまち身を躍らせて河へ飛び込み、あっという間に波濤の狭間へと沈んでいった。
同じく様子を見ていた者たちは十人あまりいたが、皆合掌して念仏を唱えた。
一体どのような宿怨かは分からないが、命を奪い、命を償うというのはその人自身が言っていたことである。