閲微草堂筆記(395)人の真似
巻十三 人の真似
侍御の劉友韓が言うことには、彼が山東の友達の家に仮住まいをしていた時、隣の家の娘が狐に惑わされたという話を聞いた。
娘の父親は狐の痕跡からその巣穴を探り、百計を巡らせて、そこから子狐を一匹捕えた。
そして狐に対し、「お前が俺の娘と手を切るなら、俺もお前の子供を解放しよう」と約束した。
狐はこれを承諾した。そこで父親は子狐を解放したが、狐はまた娘の元へやって来た。
父親は約束を破ったことを罵ったが、狐はそれに答えて言った。
「人間には騙す者が多いというのに、我らを責めるのか。」
父親はひどくこれを恨み、娘を使って狐に酒を飲ませ、密かにその杯に砒素を盛った。
狐は毒にあたり、姿を変え、よろめきながら去って行った。
一晩が過ぎた後、家中の瓦が乱れ飛び、窓や扉がガタガタと揺れた。狐たちの群れが騒ぎ立て、命を奪いにやってきた。
父親はあらん限りの大声で事のあらましを叫んだ。すると、それを聞いた年長者らしき狐が言った。
「なんと嘆かわしいことだ!此奴らは人間は皆嘘つきだと見做し、その真似をしてしまっている。お天道様は、しっかりとその報いを返すものであり、よく人を騙す者は、結局最後には騙されることになるということを知らなかったのだ。主人の言い分は正しく、これを犯すことは良くない。お前たちは私に従って帰りなさい。」
言い終えると、辺りは静まり返った。
この老狐の見識は、若い狐たちにくらべはるかに勝っているといえる。