閲微草堂筆記(396)関帝の加護
巻二十 関帝の加護
ウルムチから昌吉(サンジ。現在の新疆ウイグル自治区に位置する)に至ると、南の境界には天山があり、登ることのできる道もない。北の境界には葦湖があり、水面は天空を繋がっていて岸もない。泥沼はその深さが一丈(3メートル以上)であり、入った者は必ずその頭頂が沈んで見えなくなる。
ある時、戦いに敗れた賊がいたが、西に戻って昌吉に一時退避するのかと思いきや、南北へと入り乱れて逃げて行き、ことごとくこの逃げ場の無い地へと入っていった。恐れ慌てるあまり、冷静さを失い血迷ったかと思われた。
後に、捕虜を捕らえてこの時の様子を尋ねると、皆口を揃えて言った。
「戦に敗けて逃げる時、俺らは本当は西の方に行きたかったんだ。するとたちまち、雲の中に関帝(関羽)が馬を停めて立っているのが見えて、西の退路は断たれちまった。だから仕方なく別の方向へ逸れて、隠れてやり過ごそうとするしかなかったんだよ!」
神の御威光とは、二万里外の地においても及ぶものなのだ。国家の福祚(幸い、しあわせ)とはまた、天のご加護を二万里外の地においても受けることができるのだ。
針鼠の針や蟷螂の斧で反乱を起こして一体どうしようというのか。