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閲微草堂筆記(467)四色の冊子

巻十 四色の冊子
 ウルムチの提督である巴彥弼公が言うことには、昔、烏什の征伐に従った時、夢の中でどこかの山にたどり着いた。
 そこには六、七の陣営が張ってあったが、兵卒の姿は見えず、数十人が出入りしていたが、どうやら文官のようだった。

 試しに陣営へと行って様子を窺っていたところ、亡き護軍統領の某公に遇った。(某の名は五文字ほどだったが、巴彥弼公が巻き舌で早くその名を言ったため、今はもう思い出すことができない。)
 巴彥弼公は握手を交わして互いの苦節を労い、そして問うた。

「貴公はこの世を去って久しうございます。今こちらで何をなさっているのですか?」

「私は生前、愚直にお役目を務めていたので、冥府の官吏の職を得ることになったのだ。今は軍に随行して戦没者を名簿に記している。」

 見れば、机の上には何冊かの名簿が置いてあって、黄色、紅色、紫色、黒色の数種があった。

「これは旗(八旗。清代の軍事行政組織。旗の色によって八つに分かれている。)によって分けているのですか?」

 某公は微笑みながら言った。

「ならばどうして紫旗や黒旗があるというのかね?(古くには黒旗があったが、黒色は暗い場所では判別が難しく、よって藍旗に改められたのだが、この某公はたまたまこれを知らなかったのだろう。)これは優劣によって序列をつけているのだよ。」

「序列とはどのように決まるのですか?」

「報国の志をもって国に尽くし、発奮してその身を顧みなかった者は黄色の名簿に登録する。軍の命令を遵守し、死してなお屈することのない者は紅い色の名簿に登録する。大勢について走り回り、右往左往して死んだ者は紫の名簿に登録する。あたふたと逃げ回って活路を求めるも望みはなく、屍を踏んでぐちゃぐちゃにし、追撃されて頭を落とされ腹を割かれて死んだ者は黒色の名簿に登録するのだ。」

「しかし同時に命を受けて、血まみれになり屍となって横たわっているというのに、どうやって少しの間違いもなく、一つ一つ分けることができるというのでしょう?」

「これは冥府の官吏だけが見分けることができるのだ。大抵の人は亡くなってもまだ魂が身体にあり、その精気は生きているようである。黄色の名簿に載せるにふさわしい者はその精気が烈火の如くぼうぼうと燃え盛っている。紅色の名簿に載せるにふさわしい者はその精気が狼煙のように真っすぐ上へとのぼっており、風でも揺らすことはできない。紫色の名簿に載せるにふさわしい者は、その精気が雲から漏れ出す雷光のようで、何度も往来して煌めいている。この三つのうち、最も上の者は神となり、最も下の者でも善い世界へと戻ることができるのだ。黒色の名簿に載せるにふさわしい者は、その精気が縮こまってぼろぼろで、火の消えた後の冷えた灰のようである。朝廷において忠義を褒めたたえる時は、この黒の名簿の者たちも押し並べて栄誉を与えられるが、冥府においては普通の幽鬼と同程度に見られ、歯牙にもかけられない。」

 巴彥弼公は耳をそばだてて傾聴していたが、悄然として神妙な面持ちになった。そして次に自分の将来について尋ねようとしたところ、忽ち、大砲の音が響いて、そこではっと目覚めた。

 その後、巴彥弼公は常々この話を部下に語り、こう述べたという。

「私はな、陣に臨む度、いつもこの言葉を思い出すのだ。敵の刃を前にこの身を差し出す時、それは鴻毛のごとく軽く感じるのだ。」

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