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閲微草堂筆記(378)道士の会話
巻七 道士の会話
とある游士が萬柳堂を借りて住んでいた。
夏の日には、簾(すだれ)を掛け、榧(カヤ)の木の机を出してきて、そこに古い硯を七、八、古器や銅器、磁器を十ばかり、古書や画巻をさらに十ほど、筆牀(筆かけ)に水注(水差し)、杯や茶碗、紙扇や棕拂(ほこり払い)の類を並べたが、それらはいずれも精緻を極めていた。また壁に掛けられている書画もすべて名士の手によるものだった。
香を焚いて座すと、琴の音色が鏗然として響き、人はまるで神仙と同じ眺めを見ているかのような心地になったという。
しかし貴人の乗るような馬車でなければ、その堂まではたどり着くことはできなかった。
ある日のこと、二人の道士が連れ立って遊覧しており、たまたまこの萬柳堂の近くを通りすぎた。道士たちは歩きながら言った。
「先輩に杜甫を見た者がいるけれど、姿形はその辺の村のじいさんと変わらなかったそうだよ。儂も昔、汴京(北宋時代の首都)にいた頃、黄山谷や蘇東坡を見たことがあるが、どちらも貧乏な読書人といったような風体だったなぁ。近頃の名士がずいぶんと物持ちなのとはえらい違いだよ。」
この時、朱導江が同じ道を歩いており、この会話を聞いて怪しく思い、こっそりと道士たちの後について行った。
馬や車の通りが多い場所に出ると、土埃が辺り一面に舞っていて、一瞬のうちに姿は見えなくなってしまった。
幽鬼であったか、仙人であったかはついに分からずじまいであった。