閲微草堂筆記(477)巫女の郝婆さん
巻四 巫女の郝婆さん
巫女の郝婆さんは村の女で、狡猾な者だった。私は幼い時、滄州の呂氏の姑の実家でこの人を見たことがある。
自分の身体には狐神が憑いているのだと自ら言って、人の吉凶を言い当て、また人の家の細かな内情を一つ一つ全て知っていた。そのため彼女のことを信じる者も多くいた。
実際のところは、郝が一味の者たちをあちこちに放ち、その者たちが家々の下女や婆やと通じ、代わりに隠し事の偵察をさせて、彼女の詐欺の材料に使っていたのだった。
かつて一人の妊婦がおり、生まれるのは男か女かを尋ね、郝は男であると答えた。しかし後に生まれてきたのは女だった。婦人は神の言葉に霊験がないのではないかと詰め寄った。
すると郝は瞠目して言った。
「汝は元は男を産むはずじゃった。しかし、某月某日、汝の実家から餅が二十贈られてきたが、汝はそのうち六を舅姑に納め、残りの十四を隠して自分で食ったじゃろう。冥府のお役人は汝の不孝を責め、生まれる子供を男から女へと変えたのじゃ。これでもまだ分からぬか!」
婦人は先にこのことを探られていたのを知らなかったため、驚き慌てふためいて、自らの非を認めた。
郝が言葉巧みに粉飾し騙す手管は、いずれもこのようであった。
ある日、郝が香を焚いて神を召喚していた時のことである。突如、彼女は居住まいを正して朗々とした声で語り始めた。
「我は真の狐神である。我らは人に混ざって暮らしてはいるが、実際は各々が自ら服気煉形の修行に努めている。それが何故このような田舎の老婆と付き合い、人の家の瑣事に干渉しようというのか。この老婆の謀(はかりごと)は実に巧みで、根も葉もないでたらめで人々の財を巻き上げ、狐神の名を騙っているのである。よって、今日は我が本当にこの身体に憑依し、その悪事を皆に知らしめることにしたのだ。」
そして、郝が今まで隠してきた悪事を細々とあげつらね、その一味の者の名もすべて列挙した。
言い終えるや、郝は夢から醒めたようにはっとなって、大慌てで逃げていった。
その後、郝がどのような最期を迎えたのかは知る由もない。