三版になって変わったところ
最初に
『アルカロイドは理想世界の幻想を見せるか』一巻の初版分を携え、初めてイベントに出展した2020年から早四年。二版を挟み、このたび三版を刷る運びとなりました。本作をお手に取ってくださった皆様、本当にありがとうございました。
二版を増刷する際には主に誤字の修正を行いましたが、三版ではセリフも結構変わっていますので、ぜひ皆様にもビフォーアフターをお楽しみいただければと思います。
※一巻のネタバレを含みますので、未読の方はご注意くださいませ。
ここが変わった
【二章】黄泉坂辿のアレ
初っ端からコレで申し訳ございません。
このシーン、どんな言葉を使うか結構迷いました。
初稿は死後硬直メインで描写していましたが、一応このシーンは黄泉坂目線なので、彼の救済であり作中の光である黄泉坂辿から生命と共に唯一無二の輝きが失われたところを描いた方がいいかなと……
黄泉坂辿の美点というか、彼の存在がぎゅっと凝縮されているところはおそらくその真っ直ぐな眼差しだと作者は思います。
でも、黄泉坂が目を細めて見つめていた光はきっとこんなもんじゃないと思うので、それをちゃんと描写できるよう私はもっと強くなりたい。力が欲しい……
【四章】およばれする早乙女と黄泉坂
早乙女が「こうならいいのにな」と思っていることをちょっぴり前面に出した結果、こうなりました。あざとく、そして健気な早乙女のことが作者は大好きです。
早乙女は、たとえそれが黄泉坂辿という叶いっこない光の存在を内包していたとしても、自分が誰よりも黄泉坂の人間らしいところを知っていると思っているのでしょう。後方腕組み理解者面をしたい早乙女ですが、黄泉坂が人間じみているのは黄泉坂辿あってのことなので、後方で腕を組みながら血が滲むほど唇を噛み締めているんだろうな。そういうところが好き。
【四章】お茶目な鎖々戸新太郎 その①
「うん、そうだな」(0.2秒)
三巻まで鎖々戸新太郎という化物美男を書いてきて、最初からわかっていたことではありますが、彼、あんまり考えていないな……?
たまにしっとりと思案に耽っているような、とても深いことを考えて喋っているような、あたかもそんなふうに見える瞬間もありますが、多分そう見えてるだけです。正直「うん……」のままでも含みがあっていいような気もしますが、おそらくこのシーンで鎖々戸新太郎は何かを即決したのでしょう。
「名前が新太郎ですから。新しく、自由であることが期待されているんですよ」
いいと思います。ついでに弟君について何かコメントください。
【四章】お茶目な鎖々戸新太郎 その②
黄泉坂(鎖々戸の嘘に気付いた・・・)
早乙女(鎖々戸の嘘に気付いた・・・)(※某ゲームのパロ)
でも、鎖々戸はきっと「かわいげ」も「演技力」もカンストしているので、最初から彼が疑われている状態でないと吊るのは難しいのではないでしょうか。多分、かわいげが底をついている黄泉坂の方が先に脱落すると思う。
【五章】黄泉坂と鎖々戸
鎖々戸「ほんとうに、ほんとうに残念です、先生。貴方のことは、好きだったのに――」から繋がるシーン。
<Before>では「化物のくせに人間のふりをするな(意訳)」と鎖々戸の在り方に対する不快感を表に出していましたが、<After>では「人間の気持ちがわからないくせに人間の言葉使うな(意訳)」と心鬼という生き物の内面にフォーカスした皮肉っぽくなりました。
同じ「好き」という言葉でも、黄泉坂にとっては重みが違うのだろうなぁ……
「いくら人の真似事をしようと、私も貴様も、生まれついた本性以上の存在には成り得ない……気取られないよう封じていただけで、私は最初から『憎悪』でしかなかった」
黄泉坂の思想が出ている。
とにかく黄泉坂は人間みたいに振る舞う鎖々戸がきらい。
ちなみに、鎖々戸が三発も喰らっているのは完全に油断していたせいです。
黄泉坂に嫌われているだなんて、彼は微塵も思っていませんでした。
【六章】八重垣夫妻
軽微な変更なので迷いましたが、殺伐として終わるのもどうかと思いちょっぴり言及させていただきます。
黄泉坂辿の妻で、清司と修司のマッマは「み鳥」さんといいます。
名前にちなんで、黄泉坂辿は彼女に千鳥柄とか鴛鴦柄の着物を贈っていたのではないでしょうか。黄泉坂辿の贈り物のセンスは愛が感じられるものだといいな。兄には自分とお揃いの万年筆とか、あげてないかな……
さいごに
大きな変更点は以上になります。
私自身、よく長編に挑戦していたりしますが、最初からキャラクターの解像度100%な訳では決してなく、最初に方向性等大まかな枠組みを決めて、以降は実際に書きながら、対話を重ねながら理解を深めています。
そのため、数年付き合ったキャラの新たな一面を今になって発見する、なんてことが往々にしてあります。水くせぇな!
五章の黄泉坂と鎖々戸が今回の変更点の中では最たる例で、黄泉坂はずっと自分の内側に目を向けている=めちゃくちゃ内省的ということが二巻、三巻を経てようやく掴めた次第であります。初稿の時点では、もうちょっと憎しみを外に向けているといいますか、外:内=50:50くらいの空気感で解釈していたものが、やり取りを重ねるうちに外:内=20:80くらいでは……?と、彼の彼自身に対する憎しみの存在を知ってしまった。どうすればいいんだ私は。
とりあえず、四巻を書きますね。ここ二年くらい事あるごとに四巻四巻と鳴いていますが、そろそろ他の種類の鳴き声も口にしたいものです。
一巻につきましては、9月8日に予定されている文学フリマ大阪にて頒布いたします。
BOOTHでも取り扱っておりますので、興味のある方はぜひ覗いてみてください。
作品への感想、質問等も募集しております。
私自身、人の言葉で感想を述べることがあまり得意ではないため、呻きや叫び等でも全くもって構いません。とても励みになります。
ちなみに、あちこちで言っている気もしますが、本作を書いた記憶はあるけど書いていた時の記憶がない二次創作人格の私はアルバートと小夜鳴鳥が好きです。五色くんのことも大好きですが彼について述べようとすると記憶と言葉を失って「からあげ食べたい……」くらいしか言えなくなります。何故でしょうか。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。
〜BIG LOVE〜 仲原鬱間
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